第23話 ゴブリン狩り:リザルト(上)

 なんなくゴブリン・コロニーを撃破した俺は、その後も立て続けにコロニーを壊滅していった。

 ファイアボールを連発するだけの単純作業。

 正直、肩透かしな一日だった。


 そして、夕方になりダンジョンから引き上げる。

 ギルドに寄って魔石とドロップアイテムを売却し、宿屋へ戻った。

 晩飯を簡単に済ませると、早々と部屋に引き上げる。


「本日の結果発表です〜。わ〜、ぱちぱち〜」


 俺より嬉しそうな顔のエムピーに急かされ、財布代わりの小袋から取り出した硬貨をベッドの上に並べる。

 もう少しマシな宿屋だったら、部屋に小机が備え付けられているのだが、この安宿にそんな贅沢なものは置いてない。

 あるのはベッドだけ、寝るためだけの部屋なのだ。

 粗末なベッドの上に硬貨を積み上げていく。


 今日の討伐成績は――。


 コロニー21箇所。

 ゴブリン1,341体

 ゴブリン・リーダー21体。


 ドロップアイテムは――。


 ゴブリン魔石が1個100ゴルで、計134,100ゴル。

 ゴブリン・リーダーの魔石が1個500ゴルで、計10,500ゴル。

 コロニーを壊滅させると手に入るゴブリン・シードが1個2,000ゴルで計42,000ゴル。


 総計は186,600ゴル!


 一般市民の平均月収15万ゴルを上回る金額を、たったの一日で稼ぎ出したのだ。

 『断空の剣』全体での一日の稼ぎには少し及ばないが、一人での稼ぎとしては遥かに超えている。

 一日でこんなに稼いだのは初めてだ。

 スキル連発が、いかに反則か分かる結果だった。


 ちなみに、ゴブリン・シードは【テイム】スキルによって二体のゴブリンを産み出すアイテムで、テイマーが利用するものだ。

 シードの中でも下級に位置するが、初級テイマーにはそれなりの需要があり、なかなかの値がつくドロップ品だ。


「あらためて数字にすると凄いね……」

「これが魔力運用の本領です〜!!」


 自分の手柄のようにVサインを掲げるエムピーだが、本当にその通りだ。


「ああ、エムピーのおかげだよ。ありがとう」

「えへへへ〜」


 銀髪をなでてやると、四枚の羽をふるふるさせて喜んだ。


「これだけしてもらったんだから、なにかお礼しないとな」


 資金に余裕が出来たので、エムピーにもなにか買ってやりたい。

 イカ焼きも喜んでいたし、今度はたこ焼きでもあげようかな?


「なにか欲しい物ある? お金は気にせず、欲しいものがあったら言ってよ」

「でしたら……」


 エムピーは遠慮がちに口を開く。


「マスターの魔力を分けて欲しいです〜」

「えっ、魔力? それは構わないけど……」

「魔力はギフト妖精にとって、なによりのご馳走なんです〜」

「えっ、そうだったの? イカ焼きより?」

「うぅ〜、イカ焼きも捨てがたいですが……。マスターの魔力とは比べ物にならないです〜」


 出会ってから二週間の付き合いだが、初耳だ。

 散々お世話になっていながら、俺は今まで一度もエムピーに魔力を与えたことがない。

 そもそも、どうやって与えればいいのかすら知らない。


 とんだ恩知らずもあったものだと少し恥じ入る。

 自分のことしか考える余裕がなかったんだな……と反省した。


「遠慮せずにもっと早く言ってくれても良かったのに」

「いえいえ、マスターの強化が最優先でしたから〜。今まではそんな贅沢を言える余裕がなかったんですよ〜」

「ということは、今は余裕が出来たってこと?」

「はいっ! マスターの努力が実り、あの寄生虫どもに対抗できる目処が立ちました!」


 寄生虫――元パーティーメンバーのガイたちのことだ。

 酷い言い様だが、実際、五年間も俺の魔力に寄生してきたのは事実だ。


 エムピーが一番心配していたのは、逆恨みしたヤツらが報復してくることだ。

 そのために、ヤツらがやって来ても返り討ちできるように――それを第一目標として魔力運用をしてくれたのだ。


 そして、ようやく、その目処が立った――ということだろう。

 ギフトがあっても俺一人じゃ、まったく使いこなせなかった。

 この結果は、ひとえにエムピーの功績だ。


「俺の努力じゃなくて、エムピーが上手く運用してくれたからだよ。本当にありがとう」

「嬉しいです〜。運用実績を褒められるのが一番嬉しいんです〜」


 興奮したのか、俺の周りをクルクルと回り出す。


「俺からの感謝の気持ちだよ。俺の魔力でよければ、好きなだけどうぞ」


 俺がそう言うとエムピーはぱあっと満開の笑顔を咲かせる。

 この笑顔のためなら、いくら魔力を払っても構わない――そう思わせる笑顔だった。




   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


 ふわっとですが、1ゴル=1円と思っていただければ。


 対抗手段……ある意味反則なヤツです。


 次回――『ゴブリン戦リザルト(下)』


 イチャイチャは続くよ、どこまでも。

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