第22話 断空の剣4:発覚
――レントを追放してから二週間後。
ガイたち『断空の剣』は窮地に追い込まれていた。
連日にわたる魔力回復ポーションの大量消費により、蓄えていた資金はどんどん減っていった。
遂にはレント追放時の10分の1を切るまでになり、方針転換せざるを得なかった。
魔力回復ポーション購入をやめ、スキルを使わずに戦う道を選ぶしかなかった。
――Aランクに最も近いBランク。
その評価はスキルあってこそだ。
今までスキルに頼りっぱなしだった彼ら。
スキルを使えくなった今、戦力はCランク並み――もしくは、それ以下だった。
Bランク依頼は当然失敗。
昨日、屈辱に耐えながら受けたCランク依頼も失敗する有様。
『断空の剣』発足以来の大失態であった。
今日も彼らは急き立てられるようにして、早朝から行動を始める。
金銭的余裕のない彼らは、今までのように深酒することもできず、少しでも長い時間モンスターを狩らねばならず疲労困憊。
宿に帰れば倒れ込むように眠りにつき、朝も早くから重い身体を引きずって狩りに向かわねばならなかった。
当然、メンバー間の雰囲気は最悪。
両手に花と浮かれていたガイは、今や針のむしろだった。
「ガイっ、アンタがアイツを追い出したから、こんなことになったのよッ! どう責任とってくれるのッ!」
「ホントですー。どうにかして下さいー」
自分たちも追放に賛同していたことも忘れて、二人は言い出しっぺであるガイを責め立てる。
ガイへの薄っぺらな愛情など、すでに擦り切れていた。
「うっせえッ! 黙れ、ビッチ! レントから俺に乗り換えたくせに、偉そうに俺を責めるんじゃねえッ! この尻軽女ッ!」
「なッ! なによっ! あのゴミクズよりマシだと思ってたから、おだててあげただけよっ! 調子に乗らないでッ!」
ミサは元から打算で乗り換えただけ。
この状況で役に立たないガイに、すでに見切りをつけていた。
そして、エルも同様に――。
「ガイさんにはがっかりですー。早くなんとかして下さいー」
エルはガイの男らしい牽引力に惚れていた。
今まで自信満々に導いてくれたガイ。
だが、この事態に解決策も見つけられず、二人に八つ当たりするばかり。
そんなガイの見苦しい姿に、エルはすっかり幻滅していた。
見苦しい口喧嘩をしながら、三人は冒険者ギルドを訪れた。
毎朝、冒険前にギルドでレントの行き先を確認する。
それが最近の日課だ。
「おいっ、レントはまだ見つからねえのかっ!」
「はあ、調べますので、少しお待ちください」
怒りに任せ、カウンターを殴りつけながら、ガイは受付嬢に詰め寄る。
すっかり慣れきった受付嬢は、淡々と職務を遂行する。
呆れた気持ちを隠しながら。
「レントさんの拠点変更が確認できました。レントさんの新拠点は迷宮都市メルバです」
「クソッ、そんな遠くかよッ!」
「でも、見つかってよかったじゃない。これで、あのクズをとっちめられるわッ!」
「お仕置きですー」
それからガイたちは急いで荷物をまとめ、残り少ない資金をはたいてメルバ行きの高速馬車に乗り込んだ。
レントが使用した普通の馬車だとメルバまで二週間。
高速馬車だとその半分だ。
ガイたちがレントと出会うのは一週間後のことだった――。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
すでに崩壊寸前……。
次回――『ゴブリン狩り:リザルト(上)』
こっちは順調です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます