第21話 ゴブリン・コロニー
――その後もゴブリンを狩りまくった。
ファイアボールは一撃でゴブリンを葬り、【短剣術】でもゴブリンを圧倒した。
今までも短剣でゴブリンを仕留めることは可能だったが、短剣を振るう速度も、与えるダメージも今までとは桁違いだった。
これがスキルの力だ。
今まで俺が欲していたスキルの力だ。
ようやく、俺はそれを手に入れた。
エムピーには、感謝してもしきれないな。
俺はどんどんと森の奥へ進んで行く――。
森の浅いところではゴブリンは単体で現れるが、森を進むにつれ、ゴブリンは群れるようになる。
俺は森深くまで入り込み、相手取る数を増やしていく。
森の中では他の冒険者パーティーも戦っているが、不用意に近づくのはマナー違反だ。
【気配察知】で彼らと出会わないようにして、ゴブリンとの戦闘を繰り返した。
そして――十体相手でも問題なく倒せることが確認できた。
「うん、まったく問題ないね」
「マスター、かっこいいです〜」
エムピーが称賛の視線を向けてくる。
褒められるのなんて久々すぎて、こそばゆい思いだ。
「じゃあ、いよいよ、挑戦しようか」
「わくわくです〜」
幾度ものゴブリン戦をこなし、成功する確信を得た俺は、いよいよ今日の目的に挑む。
リスクは大きくなるが、今の俺なら問題ないだろう。
目指す場所は――ゴブリン・コロニー。
森を徘徊しているゴブリンは多くても十体程度の群れだ。
しかし、森の深いところにはゴブリン・コロニーと呼ばれるゴブリンの住処がいくつも存在する。
開けた場所におんぼろの木小屋が立ち並び、そこには数十体、下手をすると、百体を超えるゴブリンが生息している。
それがゴブリン・コロニーだ。
第1階層に出現するのは、基本的にFランクパーティーでもどうにかなる相手ばかりだ。
だけど、ゴブリン・コロニーだけは別物。
Eランクパーティーでも、舐めてかかれば全滅しかねない。
そんな危険な対象だが、
コロニーを求めて、森の奥深くへと進んで行く――。
「お〜、いるいる」
「うわ〜、くさい〜〜〜」
【気配察知】によると、全部で93体。
コロニーとしてはかなり大きな方だ。
小汚いゴブリンの臭気。
俺は慣れているからどうという事はないが、エムピーは鼻を押さえ、不快そうに顔をしかめている。
「じゃあ、さっさと殲滅しちゃおう」
「お願いします〜」
20メートルほどにまで接近しているが、まだ気づかれてない。
コロニーの中心にいる、ひときわ大きな個体――群れを率いるゴブリン・リーダーだ。
まずは、こいつから。
「――ファイアボール」
リーダーに向かって火球を放つ。
吸い込まれるようにして飛んで行った火球はリーダーに命中し――その命を奪った。
リーダーはゴブリンより一段階強いが、それでも一撃だ。
想定通りだが、その呆気なさに戸惑いを覚える。
一方、襲撃に気がついたゴブリンどもはこちらに向き直り、一斉に駆け寄って来る。
ゴブリンの知性は低い。
そして、攻撃的だ。
味方が襲われたら、どんな強い相手でも、逃げ出さずに攻撃して来る。
大声で喚き散らしながら向かって来る百体近くのゴブリンども。
波のように寄せるヤツらは、慣れていないと逃げ出したくなるほどの威圧感。
だが、五年間、幾度となく修羅場を乗り越えてきた俺にとっては、ぬるま湯同然。
冷静に火球を放った――。
同一スキルは通常、連続して使用できない。
スキル使用によって減少した魔力に身体が適応するのに時間がかかる――という理由らしい。
そのため、スキル使用後しばらくは、同じスキルが使えないのだ。
その時間をリキャストタイムと呼ぶが、一般的に強力なスキルほどその時間は長くなる。
初級魔法であるファイアボールのリキャストタイムは短いが、それでも十数秒間は使用不能だ。
しかし、俺の場合は話が別。
【魔力出納】があるからだ!
このスキルは俺と魔蔵庫の間で魔力の出し入れを可能にする。
ひとつ目のメリットは、俺の魔力を魔蔵庫に貯蓄できること。
高いスキルを買うには数日間、俺の魔力を貯めなきゃならないが、それが出来るのはこのスキルのおかげだ。
そして、ふたつ目のメリットは、魔力を消費すると同時に魔蔵庫から魔力を補給可能――その結果、魔力を一定に保てるのだ。
ゆえに、リキャストタイムなしで、魔法を連発できる。
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
「――ファイアボール」
近づくゴブリンどもを片っ端から燃やしていけばいいッ――。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『断空の剣4:発覚』
元パーティー視点です。
今話と同じ日の出来事です。
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