第20話 ゴブリン狩り

 森へ踏み入って行く――。


 この森に出現するモンスターは一種類のみ。

 スライムよりは強いが、それでも雑魚モンスターであることには変わりがない。

 スライムと違い、群れで襲ってくるという特性があるが、大勢に囲まれない限り、それほど危険はない。

 そして、【気配遮断LV1】と【気配察知LV1】があるので、強襲される恐れはまずない。


 しばらく森を歩き進めると――さっそく【気配察知】に一体のモンスターがひっかかった。


 薄汚い子鬼――ゴブリンだ。


 ゴブリンはキョロキョロと辺りを見回し、クンクンと臭いをかぎ、獲物を探している。

 だが、【気配遮断】している俺のことは、10メートルほどに近寄っても気付く様子はない。


 その背中に俺は魔法を放つ。


「――ファイアボール」


 前方に突き出した左の手のひらから、直径30センチほどの火球が飛び出し――命中したゴブリンは燃え上がる。


 ――ギャアアア。


 品のない叫び声とともに、ゴブリンは絶命した。


「余裕でした〜」

「まあ、ゴブリンだしね」


 ゴブリンは下から数えて何番目という程度だ。

 スキル無しだった俺でも、余裕で倒せる相手。

 やる前からこうなることは予想できた。


 だが、自分の魔法で倒したという結果に、俺は打ち震えるほどの感動を覚えた。


 戦える!

 俺でも戦えるんだ!

 スキルを購入して、どこまでも強くなれるんだ!


 ファイアボールは【火魔法LV1】で覚える魔法だ。

 消費MPは2。

 駆け出し冒険者の魔力量でも、4,5発は撃つことができる。


 駆け出しだと一発で倒せるかどうかというダメージしか与えられないが、俺のファイアボールは【魔力操作】のおかげで、サイズも大きくなり、ダメージも底上げされている。

 ゴブリン相手なら、余裕を持って一撃で倒せる。


 そして、俺の最大MPは六千以上。

 自然回復もあるので、際限なしに撃てる。

 この調子なら、複数のゴブリンを同時に相手にしても、まったく問題なさそうだ。


 ゴブリンの死体はすぐに消え去り、その後に小さな魔石が落ちる。

 ダンジョン内のモンスターは、死ぬと魔石やドロップアイテムを残して死体は消滅する。

 理由は知られていない。

 ダンジョンが吸収して、新たなモンスターを産み出す養分としているのだろう――というのが一般見解だ。


「これが魔石ですか〜。初めて見ました〜」


 透明に透き通ったゴブリンの魔石。

 小指の爪半分ほどのごく小さな魔石だ。

 魔石としては最低ランク。

 それでも、エムピーは目を輝かせている。

 俺も初めてモンスターを倒し、魔石を見たときは感動したなあ。


 魔石には魔力が閉じ込められており、ポーションや魔道具などの素材として様々な用途に使われる。

 冒険者の収入の大部分がこの魔石だ。

 ゴブリンの魔石だとパン一個買える程度だが、強大なモンスターの魔石だと豪邸を建てれるほどだとか――その価値は天井知らずだ。


 『断空の剣』にいた頃なら、無視するようなクズ魔石。

 だが、今の俺はお金に余裕がないので、ちゃんと回収しておく。


「よし、次のゴブリンを探すぞ」

「さがすぞ〜!」



   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

 まあ、ゴブリンだし……。


 次回――『ゴブリン・コロニー』


 無双開始!

 【魔力出納】の本領が明らかに!

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