第19話 メルバ大迷宮第1階層

 第1階層に降り立つ。

 辺り一面広い草原。

 遠くには森林や岩山が見える。


 そして、まっすぐに続く一本道――通称、大通り。

 第2階層へと続く道だ。


 メルバ大迷宮が冒険者に人気な理由のひとつは、階層ごとに出現するモンスターが決まっていることだ。

 どんなモンスターが出現するか分からない地上と比べ、安全に狩りが出来るのだ。


 第1階層はデビューしたてのFランク冒険者向けの階層。

 大通りから離れるにつれて、出現モンスターは強くなっていくが、奥地に踏み込まなければまず安全だ。


 第1階層に降り立った冒険者たちは二手に分かれる。


 ひとつは第2階層へ向かう冒険者たち。

 彼らは速いペースで大通りを進んでいく。

 大通り付近にはモンスターが出現しないので、下層を目指す冒険者たちは第1階層の雑魚モンスターには目もくれず、まっすぐに第2階層を目指すのだ。


 もうひとつはこの階層でモンスター狩りをする冒険者たち。

 彼らは大通りを離れ、草原へ、そして、その奥の森へと向かっていく。


 スキル購入で強くなった俺も、まずはここ第1階層でその実力を確認することにした。

 ちなみに、俺が購入したスキルは――。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


【購入スキル】


〈強化系〉

 【身体強化LV1】(NEW!)


〈探索系〉

 【気配察知LV1】(NEW!)


〈隠系〉

 【気配遮断LV1】(NEW!)


〈魔法制御系〉

 【魔力操作LV1】(NEW!)


〈物理戦闘系〉

 【短剣術LV1】(NEW!)


〈魔法系〉

 【火魔法LV1】(NEW!)、【回復魔法LV1】(NEW!)


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 最初の4つは基礎スキル。

 汎用性が高く、どんな戦闘スタイルでもまずはこれが絶対必要、とエムピーに言われた。

 【身体強化】は身体能力全般を高めるスキル。

 【魔力操作】は魔法の発動時間を短くしたり、魔法の威力を高めたりするスキル。

 【気配察知】と【気配遮断】はその名の通りだ。

 これらは購入するのにひとつ5,000MPが必要だった。


 残りの3つ【短剣術】、【火魔法】、【回復魔法】は、俺の戦闘スタイルに合わせて選んだスキル。

 どれもひとつ1,000MPだ。


 このスキル構成からも分かると思うが、基本遠距離から火魔法で攻撃し、近づかれたら短剣で対応するというスタイルだ。

 短剣はこれまでも使っていたので、それなりに慣れている。

 そして、ダメージを受けたら自分で回復できる。


 ソロで戦うには、バランスの良いスキル構成だ。

 普通だったら、このスキル構成はあり得ない。

 物理戦闘職が魔法を覚えることはないし、魔法職が武器スキルを覚えることもない。

 《無限の魔蔵庫》があってこそ、不可能が可能になるのだ。


 このスキル構成なら、第1階層のモンスター相手に苦戦することはないだろう。

 俺は適当な場所で大通りを外れ、草原に足を踏み入れる。


 大通り沿いの草原に出るのは最弱モンスターのスライムだ。

 スライムはこちらから攻撃を仕掛けない限り、何もしてこないし、攻撃手段は体当たりのみ。

 新人が最初に相手にするのが、このスライムだ。


 朝早い時間にもかかわらず、草原では冒険者になりたての若者たちがスライム相手に戦っている。

 そんな彼らを横目に、俺は草原を通り抜ける。


 いくら戦闘スキルを持っていなかった俺でも、五年間も冒険者をやってきたのだ。

 さすがに、今さらスライムごときを相手にする必要はない。

 もう少し強いモンスターを求め、俺は草原を越えた場所にある森に入って行った。

 森といっても、木々の間隔はまばら。

 その上、ところどころ開けているので、場所を選べば木々に邪魔されず戦うことも出来る。

 敵を誘導して戦う訓練には持って来い。

 初心者はこの森で連携を身につけるのだ。


 俺は森へ踏み入って行く――。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

 オールラウンダーなスキル構成になりました。


 次回――『ゴブリン狩り』


 安定のゴブリン登場です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る