ひだまりの花
高山小石
ひだまりの花
病を
一日の大半を座敷に座って過ごす綾子は、以前より気配に敏感になった。
足音がしなくても、声が聞こえなくても、そばに誰が来たかわかる。
今、開け
天気が良いから、庭の手入れをしているのかもしれない。
声をかけようか。
そう思うのに、言葉を飲み込んでしまう。
用もなく話しかけると実生が叱られるのだ。
綾子は畳に座ったまま、優しい気配に身をゆだねていた。
庭師の実生は、広い庭をゆっくりと歩いていた。
先日おこなった
庭木に目をやっていても、わかった。
お嬢様がいらっしゃる。
枝越しに座敷を
鳥の声を聞いているのか、目を閉じて、穏やかに微笑んでいる。
花のような人だといつも思う。
自分なら、松の緑を見られなくなっただけでも気が狂いそうなのに。
高い声を上げてまた一羽、小鳥が庭に入ってきた。
この庭は綾子のための庭だ。
自分にできることはこれくらいしかない。
ひだまりの中の花から、実生はそっと目を離した。
ひだまりの花 高山小石 @takayama_koishi
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