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「いらっしゃいませ」

店の前で黒スーツの男が出迎える

「お客様は初めてでらっしゃいますね。うちの店『ウィンド』は紹介制になっております」

紹介制であることは知っていた

なので事前に翔が手引きしてくれている

「松木さんの紹介できたシンだ」

「松木様のご紹介ですね。存じております。では中へどうぞ、ご案内します」

翔の根回しで、シンのグループには松木と言う知り合いの社長から紹介してもらった

そして菊池達には、あまり評判の良くない成り上がりの社長を脅し紹介させてあった


シン達が席に着くとキャストの綺麗な女が4人着く

「はじめまして。ユメでーす」

「ああ。よろしく。俺はシンだ」

シンについたのはユメと言うギャルっぽい女だった

あまり興味がないのか軽くあしらう

「ってかシンさんカッコイイですよね?絶対モテますよね。背も高いし...」

すごい褒めてくれるのは悪い気はしないがあまり話しを聞いていなかった

1時間ほど呑んで、一条に目配せする

それを見て、連絡を入れる一条


携帯が鳴ってメッセージを見る菊地

「よし!社長から合図が来た。お前ら行くぞ」

「一応、役職一緒なんだからリーダー面するなよ菊地?」

そうイラつくのはNo.2の深谷だ

この2人は仲が悪い

「社長の前では、普通なのに毎回喧嘩しないでくださいよ!なあ兄貴」

2人より年下の飯島兄弟は毎回なだめる役になっている

「ああそうだな弟。2人とも言い合ってる場合じゃないです。行きましょう」

時間がかかると社長に迷惑がかかるため2人は大人しく店に向かう


「いらっしゃいませ。当店は紹介せ...『根岸社長の紹介できた』」

黒服の言葉を遮るように言い放つ菊地

「失礼しました。根岸様のご紹介ですね」

深々と頭を下げ、店の扉を開けた

「では中へどうぞ」

4人を中へ促し扉をを閉めた後、インカムをいれた

「クソ根岸の紹介の客が来ました。あいつと同じで態度がデカイです」

周りに聞こえないように暴言を吐く

その受け手は

「マジかよ。アイツ呑み方汚ねえし、キャストにセクハラするし最悪なんだよな。その客も同じかよ。一応、店長に伝えとくかな」

「そうしてください。態度もでかいが体も大きくてなんか半グレっぽく見えますね」

そんなやり取りが裏であったとは誰も知らないが、計画通りであった

菊地、深谷、飯島兄弟が席に着く

「失礼致します。初めてのご来店ありがとうございます。気になる女の子が居なければ適当に何人かつけて回させていただきますが、宜しいでしょうか?」

黒服の説明に深谷が答える

「ああ。それでいいよ。気に入ったのが居たら指名するわ」

そうして4人は酒を呑み始めた

話す声は大きく

女の子にベタベタ触る

店員には粗暴な態度

1時間しか経っていないのに黒服に2度注意される

そして3度目で

「失礼します。お客様、先程も言いましたが、ここの店はそう言う店ではありません。女の子には触れないでいただけませんか?」


ガン!


急に菊地が灰皿を投げる

黒服の顔横をギリギリで通り抜け、後ろの壁に当たった

「さっきからうるせえんだよ!いいじゃねえか金払ってんだからよ!」

そう菊地が言い放つと飯島弟ものる

「てめぇコラ!気分良く呑んでんのに邪魔すんじゃねえぞ!すっこんでろ!」

そう言い、黒服の胸ぐらをつかむ

「す、すいません。失礼しました。た...た...ただ本当にやめてもらわないと女の子も嫌がってますし...」

そう震え声で言いながら他の黒服に助けを求めるように目配せする

それを受け取る別の黒服が、走って店長に伝えに行き

すぐさまセキュリティが割り込んできた

「お客さん、うちの店員から手を離してもらえませんか?」

とリーダーぽい男が丁寧な言葉で喋る

8人ほどの堅いの良いおとこ達が菊地達のテーブルを囲んだ

先ほどとは別の1人が前に出て

「ちょっとちょっとお兄さん達。なにやってくれちゃってんの?

いるんだよねーたまにさ…。お兄さん達みたいに喧嘩が少し強くて調子乗っちゃうやつ。酒が入っているからって、完全になめてるでしょ?」

そう言って、黒服の襟を掴んでいる飯島弟の腕を掴んだ

それを見て、弟は菊地の方をチラッとみる

「やれ」

口には出さないが、そう合図される

弟は自分の腕を掴んできた男の人差し指を、無言でへし折る

ボキィ!

鈍い音と共に

「うあぁぁガガぁぁ」

一瞬何をされたか戸惑ったが痛みで把握する

相手が膝をついたのをみて、テーブルの上から氷が入ったアイスペール(氷を入れとく容器)を取り、頭に振り落とす


ガン!!


大きな衝撃の後、ゆっくり倒れ失神した…


「「「きゃぁぁぁー!」」」

それを見ていた女の子達が悲鳴を上げ、裏へ逃げていく

セキュリティのケツモチ達は真面目な顔になり、喧嘩が始まった

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