第15話 凄腕の魔獣狩りは、
ミハ……、ミファ……、ミヒャエル?
なんか言いにくいな。そのミヒャエルさんって、どなたなんでしょ?
「昨日尋ねた『炎の剣亭』の
さりげなく教えてくれる、親切なマティアスくん。
「その『炎の剣亭』って店の名前は俺がつけたのさ」
どこか得意気に語るルドルフさん。
あのヒゲのおっちゃん、いえ騎士様の名前は、ミヒャエルさんというのか。
では、ミヒャエルさんの正体はなんなのだろう。
お食事処との兼業騎士とか? そんなんアリか?
「今は、専業料理人ですね。年に何回かだけ、王室の行事に名誉騎士として参加をお願いしているのです」
「うむ、もともとは、俺と同期の騎士団の一員だったんだ。まあ年齢は、あいつの方が幾つか上だったが」
名誉騎士。そして専業料理人。分かるような、分からないような。謎は深まるばかりでございます。
「ミヒャエルさんは、成人前から地元では有名な、腕利き冒険者だったらしいですね」
「そうだな。だから入ったばかりの頃、俺はあいつに対して
ええっ、騎士団長のルドルフさんが、あのおっちゃんにコンプレックスを?!
「俺は貴族のボンボン。あいつは既に名うての冒険者。同期とはいえ俺は見習い。あいつは即、近衛騎士部隊に配属だ」
ルドルフさんは、ミハ……、ミファ……、ミヒャエルさん……、やっぱり言いにくいな。おっちゃんでのままでいいか。
ルドルフさんは、おっちゃんとの想い出を語り始めた。ふふっ、言いやすい。やっぱり、おっちゃんの方がしっくりくるね。
騎士団に入団して最初の何年かは、なにをやってもルドルフさんは、おっちゃんに敵わない。
何しろおっちゃんは、十代前半から冒険者活動をしていた叩き上げ。名家の出であっても、ルドルフさんには経験が足りない。
しかし、おっちゃんは、そんなヤサグレたルドルフさんをバカにすることもなく、あれやこれやと面倒を見てくれたのだという。
何年か経つと、おっちゃんは実績を積み、順調に出世を果たし、近衛騎士の中でも花形の王族直属の護衛騎士に取り立てられる。
ルドルフさんも、優秀な血筋や名家の恵まれた環境に慢心することなく努力を重ねて、若手ナンバー1との呼び声も高まることとなった。
今や、騎士団を率いる団長のルドルフさんにも下積みの時代はあったんだねぇ。
ある時、この国のあちこちで例年に比べ魔獣が大量に発生する事案が起こり、その被害報告が相次ぐという事態になった。
地方では冒険者たちによる駆除が間に合わず、被害件数もうなぎ上り。民間人からの苦情も殺到したらしい。
王都周辺でも、本部からの度重なる名うての冒険者たちの出動にも関わらず、魔獣の被害は拡大する一方。
この事態を重く見た国王は騎士団組織を再編、腕利きによる魔獣狩りの専門部隊を設け、その小隊を各地に派遣することとした。
魔獣だって? この世界には魔獣がいるのかい?
「ええ、おります。瘴気に冒された獣とでも言いますか。中には魔法らしきものを使う個体までいるのです」
「そうそう、口から火の玉を吐き出す大型爬虫類なんかは特に討伐するのが厄介なんだ」
なにその、特撮映画に出て来るような怪物は。でも身の丈百メートル超え! みたいなヤツが出なくて良かった。
それこそ最新鋭の武器を備えた軍隊を、丸ごと召喚したって太刀打ちできないよ。
そんなものが出ちゃったら、この世界が破滅するところだった。
それほど巨大ではなくとも魔獣は侮れない。特に賢い長に率いられた群れは、軍隊さながらの攻撃力をもって我々に襲い掛かるというのだ。
しかしながら、全国各地に送られた騎士による魔獣狩り部隊の活躍は目覚ましく、冒険者たちとの連携もあり、事態は収束に向かうかに見えた。
だがそこへ突如現れたのが、突然変異したとしか考えられない強力な個体である。数はそれほど多くはないものの、一匹一匹が特殊な能力を持っていたのだ。
そして中でも一段と凶悪だったのは、『街道沿いの悪夢』と名付けられた、隣国とを結ぶ街道沿いに現れた特殊個体であった。その巨体と火の玉を駆使して、送られた討伐部隊を
ひえーっ、どうするんだ、騎士様?!
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