第25話「不幸体質の俺、彼女ができる!?」
──ズズズ、ズー。
──ズズ、ズー、ズズズズ。
「
「
「だろう! 今日は、腹いっぱい食ってってくれ!」
俺とラフィーとリアン。
今日の夕飯は三人でラーメンを食べている。
ここは『ラーメン・
「いやぁ、
「本当にあんたたちは! 反省しなさいよ!」
「「面目ない」」
『
気絶する二人を、俺たち三人で送り届けたのだ。
酔い潰れて寝ていた二人をたまたま発見したことになっている。
「カラアゲも食べるか?」
「食べたいわ!」
「ギョーザも」
「はいよ!」
「お前ら、遠慮ってものがないのか?」
「いいじゃない。食べさせてくれるって言うんだから。本当に美味しいわね、ラーメン」
「そうだろう?」
ちなみに、今日は俺もバイトが休みなので一緒になってラーメンを食べている。
「で、よ」
ラフィーが箸を置いた。
そして。
「【
ラフィーがつぶやくと、俺たち三人だけの空間が出来上がった。
外からは楽しくラーメンを食べる三人が見えているだけで、こちらの話は聞こえなくなる。
「どう?」
これはリアンへの問いかけ。
「『魔力』の
「じゃあ、大将も息子さんも安全ってことか?」
「ああ。また狙われるかもしれないけど、それは対応していこう」
「わかった」
今日は、それを確認しに来たのだ。
ちなみに、以前『
「……結局、あの『
「まず、ユーキのことは殺すつもりだったと思うわ」
「それは、そうだと思う」
俺に対しては明らかに殺すための作戦が練られていていた。
俺の大切な存在である大将を『
「リアンも、可能であれば殺すつもりだったでしょうね」
「ですね」
「じゃあ、ラフィーは?」
「たぶん、私のことは殺すつもりがなかった。私に何かを仕掛けたのか……」
「ラフィーさんについて、何かを調べたのか」
つまり。
目的は定かではないが、次の一手のための何かをした、ということだ。
「あの『
「そうね」
「つまり、次も何か仕掛けてくるってことだよな?」
「でしょうね」
「この前だってギリギリだったのに、大丈夫なのか?」
「それは大丈夫よ。私の【
「段違いに強くなってる」
「そうだけど……」
「ユーキは不安?」
「そりゃあ、そうだろ。そもそも『
「そうだけど」
ラフィーが、ニヤリと笑った。
「私はね、何が起こっても私たち三人なら大丈夫だろうって。そう思ってるわよ」
同じく、リアンもニヤリと笑った。
「……それについては、俺も同意」
俺が言うと、二人の表情がコロッと変わった。
悪そうな笑みから、嬉しそうな笑みに。
「でしょ?」
「だろ?」
……いつも、そういう感じで笑えばいいのにな。
「とりあえず、今夜も訓練ね」
「だな」
『
「ありがとうございましたーっ! また来てくれよー!」
大将の笑顔に見送られて、俺たちは『ラーメン・
「……じゃあ、俺はここで」
「「は?」」
俺のセリフに、二人分の低い声が返ってきた。
こわ。
「1時間後に、公園集合でいいだろ?」
「家に帰らないの?」
「……ちょっと用事あるから」
「用事って?」
ラフィーが俺の顔を覗き込む。
「だから、その
「そんな顔してる?」
「してる」
「三つ子の魂百までとは、まさにこのことですね」
リアンがうんうん頷いている。
……よし。話は
「じゃ、また後でな」
「おい」
「逃げるな」
無理かー。
二人が俺の両腕を掴んで引き止める。
「どこ行くのよ」
「用事ってなんだよ」
しつこい。
こいつら、しつこい!
<デートやって、素直に言えばええやん>
(
<なんで? ちゃんと話しとかんと、後から揉めへんか?>
(タイミングってものがあるんだよ)
<それは、今でもええんとちゃうか?>
(心の準備!)
<こらあかん。ただのヘタレの優柔不断や>
(やめろ!)
<ラフィー
(やめろってば!)
俺が(無言で)『
あ。
<タイミング、向こうから来よったなあ>
顔は見えないけど、『
間違いない。
こいつ、面白がってやがる!
「ユウくん!」
「井野口さん?」
ラフィーとリアンが首を傾げる。
そうだろう。
こんな時間に制服姿の井野口が、こんな場所に来るなんて。
「どうしたの?」
「ユウくんと約束してるから!」
「「え?」」
二人の声に、今度は井野口が首を傾げた。
「ユウくん、二人に話してないの?」
「……今、言おうと思ってたところ」
「なあに? 二人して内緒話?」
「ううん。内緒じゃないよ」
内緒じゃないよと言いながらも、顔を赤くしてモジモジする井野口。
(かわいい)
って、そうじゃねえ!
完全に言い出すタイミングを逃していた、あれを。
二人に言わなければ。
「私たちお付き合いすることになったの」
「「は?」」
──時間を遡ること、6時間前。
俺は、午後の授業をサボって保健室で寝ていた。
昨夜の戦いのことがあって、めちゃくちゃ疲れていたからだ。
【
なんだか、めちゃくちゃ疲れていたのだ。
「ユウくん、大丈夫?」
それを心配して、5限の後に保健室に来てくれたのが井野口だ。
俺のかばんも持ってきてくれた。
「先生が無理するなって。早退する?」
バイトと学業で疲れが溜まっていると思われたんだろう。
ふだん真面目にやってるからな。俺は。
「いや、大丈夫。病気ってわけでもないし」
「そっか」
「帰りはラフィーとリアンと約束もあるし」
「約束?」
「ラーメン行くことになってるんだ」
「……そっか」
モジモジ。
井野口が、落ち着きなく両手の指を動かしていた。
「あのさ、昨夜のことなんだけど」
あの後、気絶した井野口を家に送り届けた。
おばさんには夕飯を食べながら話をしてたら疲れて寝てしまった、と説明したわけだ。
「昨夜のことって?」
「え? ぬいぐるみが、襲ってきて……」
「なんだよ、夢の話か?」
おれが笑ったのを見て、井野口が驚いている。
そう。
俺たちは、井野口に対しては『あれは夢だった』で押し通すことに決めていた。
多少、無理な感じもしないことはないが。
幸い、井野口は早い段階で気絶している。
ちなみに、アパートは俺の【セーブ】で元通りに戻っている。
無機物にも【セーブ】と『ロード』が対応できるのかを実験するために、以前に【セーブ】したことがあったからだ。
そのデータを元に『ロード』したら、見事大成功したというわけだ。
俺の幸運は『
が、これは仕方がない。
「そっか、夢かぁ!」
井野口が、安心したように息を吐いた。
「怖い夢でも見たのか?」
「うん。……でも、大丈夫だったよ? ユウくんが、守ってくれたから」
──キュン。
俺の心臓が止まった。
あぶない。死んでしまうところだった。
「あのね、ユウくん」
「なに?」
「この前言ってた、好きな人って、誰?」
井野口が、ギュッと目を
顔が真っ赤で、今にも湯気が出そうな様子だ。
(勇気、出してくれたんだよな)
だったら、俺も。
「井野口……じゃなくて。チカちゃんのことだよ」
言った!
ついに、言えた!
「ホントに?」
「ホント」
井野口の目がまんまるに見開いて、次いでふにゃりと緩んだ。
目の端に、少しだけ涙が滲んでいる。
「嬉しい」
ということは、つまり。
「私も、ユウくんのこと好き」
モジモジ。
両思いだって、お互いに確認できたのに。
俺たちは、ただただモジモジすることしかできなかった。
「私たち、両思いだね」
「うん」
「付き合う、ってことでいいんだよね?」
「そう、だな」
「……それじゃあ、デートしよ」
「デート?」
「うん。ラーメンの後でいいから」
「あんまり時間ないけど」
「それでもいいよ。……ちょっとだけでも、会いたいから」
可愛い。
俺の好きな子、もとい。……俺の
ものすごく可愛いんだ!!!!
好きな子に思いを告げて、お付き合いする。
普通の男子高校生にとっては普通のことなんだ。この
(こんなのだめだ、やめるんだ! 浮かれるんじゃない!)
腹の奥で誰かが叫んでいる。
(この馬鹿! 魔王退治があるだろうが!)
聞こえるのに、聞こえない。
俺には関係のない話だ。
(ラフィーのことはどうするんだ!)
誰かの叫びは、青黒い何かに蓋をされたみたいにやがて聞こえなくなった。
俺は、浮かれていた──。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
次回からは新章が始まります。
ご期待ください!!
ここまで呼んで面白かったなあと思っていただけましたなら!
★評価を、どうぞよろしくお願いいたします!!!!
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