第11話「大聖女の聖剣授与!いやいや、この聖剣ヤバいって!」
──その夜。
俺たち三人は、いつもの公園に来ている。
今日もラフィーの【
さっそく特訓を開始するのかと思えば、ラフィーが
「試してみたいことがあるの」
いつも強気で周りを振り回しまくる、性悪聖女らしくないセリフだ。
「私は、けっこうたくさんのスキルを持っているんだけど」
俺が知っているだけで【
他にもあるってことか。
「このスキルだけは、今までちゃんと使えた試しがないの」
「どんなスキルなんだよ」
「【
聞きなれない言葉だ。
「【
「剣を?」
「そう。リアンの『
そろそろ、俺もファンタジー用語には慣れてきたぞ。
今のは、ちゃんとわかった。
「ラフィーも【
「そう。……でも、これまで何度も試したけどうまくいかなかったの」
「なんで?」
「わからない。どうしても、剣を
ラフィーが、腕組みをして難しい顔をする。
「おそらく、私の剣を受けとる資格を持ったヒトがいなかったのよ」
「受けとる、資格?」
「『大聖女』たる私の願いを叶える『光の勇者』に、私は出会えていなかった」
新しいファンタジー用語、っていうか
『光の勇者』か。
確かに、『大聖女』と共に『魔王』を倒すなら、それくらいの称号はあってもいいよな。
うん。
だけど……。
「……この流れは良くない」
【
「何が?」
「俺は嫌だからな」
「なんでよ!」
「俺は『光の勇者』なんてガラじゃないよ! だいたい、普通の高校生なんだぞ!」
「……もう気づいてるでしょ? 自分が普通の高校生じゃないってこと」
「……」
「普通の高校生は【
「……」
「ふつうのヒトが、『幸運:27』で死なないはずがない」
何も、言い返せない。
「あんたは、かつて『魔王』を封印した『
そうらしい。
「そして、『幸運』……つまり、『神』に依存しない何者かの『加護』を受けている、特別なヒト。それがあんたよ」
認めたくないが、事実だ。
全ての現実が、これを裏付けている。
「それに……。今朝、私はあんたを
「……そうだけど、それが何の関係があるんだよ」
嫌なことを思い出させるなよ。
一緒に
「なに赤くなってんのよ!」
「仕方ないだろ!」
「とにかく、この私が! 殴ったのよ!?」
「は? だから、どういうことだよ!」
「二人とも落ち着いて」
言い合う俺たちの間に入ってきたのはリアンだ。
心底
「馬鹿なこと言ってる時間、ないんだから」
「「はい」」
リアンの言う通りだが、
「ラフィーさんは、まがりなりにも聖女だ」
「まがりなりって何よ、まがりなりって」
「聖女の唯一にして最大の弱点。それは、『何者も攻撃できない』ってことなんだ」
ラフィーのツッコミを無視して告げられた言葉に、俺は首を傾げる。
「本来なら、ラフィーさんはヒトだろうと魔物だろうと、何かを
「でも、俺、
確かに、痛かった。
「だから、お前は特別なんだ」
本当は
よくわかんないけど、確かにそれが事実なら俺は特別ってことになる。
……何者も攻撃できないのか、ラフィーは。
腹立つことがあっても、手を上げることができない。
ああ、だから性悪になったのか?
口で言い返すことならできるから。
だからって、性根が曲がりすぎだと思うけど。
「……あんたは、私にとっての『特別』なのよ」
小さな声で、ラフィーが言った。
その頬が、真っ赤に染まっている。
青色の瞳が、上目遣いでこちらを見つめている。
俺が、特別……?
──ブワッ。
俺の顔にも、一気に熱が集まってきた。
「とにかく!」
ラフィーが真っ赤な顔のままで、俺を睨みつける。
「あんたは、
ラフィーが両手を突き出した。
いつもの、あのポーズ。
「【
ラフィーの両手から、白い光が溢れる。
溢れた光はブワッと広がってから、徐々に細長く収束していった。
現れたのは──白く輝く剣だった。
金とも銀とも違う素材でできている、不思議な剣。
「できた……!」
ラフィーがつぶやく。
その剣は、ふわりと動いて俺の手に収まった。
まさに、しっくりと、俺の手に
「闇を切り裂き、災いを
「これが……」
「あんたの、聖剣よ」
手元の剣を見つめていると、ふと頭によぎった言葉。
「ハルバッハ」
この剣の、名前だ。
「いい名前ね」
「カッコいいな」
二人が駆け寄ってきて、『
確かに、カッコいい……!
男の子だからな、俺も。
「これ、どんな剣なんだ? 『
「聞いてみなさいよ」
「誰に?」
「剣に」
「は?」
何言ってんだ、こいつ。
剣に聞く?
無機物だぞ。どうやって質問するんだよ。
<普通に話しかけたら、ええんやで!>
急に割り込んできた関西弁の男の声。
「誰だ!?」
周囲をキョロキョロと見回すが、誰もいない。
そもそも、ラフィーの【
<オレオレ!>
オレオレ
ほんとに、誰だ?
<ココやココ! 無視せんといて!>
……まさか。
手元の剣を見下ろす。
ここから聞こえているような、気がしないでもない。
『やーっと気づいたんか! ワシが、ハルバッハ様や! よろしゅうな!』
「剣が、しゃべってる!?」
んな馬鹿な!
「聖剣なんだから、
常識みたいに言うの、やめてください。
ん、待てよ?
「
「私たちには聞こえてないわよ」
「じゃあ、俺って……」
「独り言しゃべってるキモい奴に見えるから。気をつけなさいよ」
ひどい!
<お前が俺の
「は? 喧嘩売ってんのか?」
あ。
ラフィーとリアンが、笑っている。
俺、独り言しゃべってるヤバい奴じゃん。
『ええやん。魔王倒そうなんちゅう奇特な人間なんや。そもそもヤバい奴やから、気にせんでええよ!』
ええよ!
じゃないんだよ!
<ワシを使いこなせれば、魔王なんか一発KOや! いてこましたれ!>
俺がヤバい奴なんじゃない。
この『聖剣』、かなりヤバい奴だ……。
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