第7話 見つけたアルバイト
さて、当面の課題は明白だ。
俺のヘタレ具合と財政。
前者は頑張るしかないから保留として、後者は精神論だけじゃ解決できない。
武器の購入で金がない俺。でもダンジョン探索で必要なものがある。
“ダンジョンでスキルアップして明るい未来をゲットだぜ! 計画”は早くも暗礁に乗り上げそうだ。
ちなみにネット通販でチェックした結果を言うと、例えばヘッドライト。初日に点かなくなりましたとか最悪だ。そこそこ良い奴を買うべきだろう。三千円位のものが平均的な相場かな。
ヘルメット。善し悪しなんぞ解らん。結構ピンキリあるが、命を守る道具だと思えば五千円くらいのは買うべきか。
防弾ベスト……これよ。十万円弱。マジっすか。
こう来るとプロテクターも欲しくなる。膝と肘のヤツ。
そこそこ丈夫そうなのが二千円ちょっと。
靴も安全靴とかにした方が良いんだろうな……八千円。
他にも買うべき物はあるな……
使った発煙筒も補充すべきだろうし、あの穴から鼠がリポップすると分っているなら、トリモチとかあの穴に罠をかけておいた方がどう考えても賢い。
あ、でも罠とかどうなんだろう?
あの黒いモヤに食われたりしないだろうか?
そういうのも検証すべきだよな。
鼠で思い出したが、武器は正直槍より金属バットの方が良いと思う。
ピンポイントで刺すより大雑把にぶん殴れる方が、少なくとも鼠には効果的なんじゃないかと……五千円弱。
今はどれも買えないけども。
というわけで何をするにも、まずは金だ。
武器を買う金を何とか捻出したと思ったら、防具にそれ以上かかる事実。ざっけんな。
しつこいようだが、金がない。
ないならバイトで稼いで買うしかないわけだが、貧乏学生を舐めないで頂きたい。
今日食うものに毎日苦悩してんだから。
節約も考えるべきか? 節約できるとしたら……食料? ダメだな。
食うもの減らして金を貯めても、そのせいでやつれたりしたらダンジョンでの活動に支障がでそうだ。
やっぱりバイトだ。バイトを増やして至急所持金を増やす必要がある。
今の収入でゆっくりやってたら、スキルアップの前におじいちゃんになってしまいそうだ。
いや、まあ無事におじいちゃんになれる人生を目指しているわけだけども。
こうなると最初の計画を早くも変更しなければならない。
まずバイトで金を稼ぐ。割合的には冬休みは可能な限り、講義が始まったら休みの内の三日をバイトに当てて、稼いだ金でダンジョン攻略に必要なものを買いつつ、残りの一日で最初の鼠を殴ってレベル上げだろうか?
穴で待ち伏せて、出て来たところを刺せば危険はないだろう。よし。
よし、なんて簡単に言ったが、就職難のこの時代、アルバイトだってゴロゴロ転がっているわけじゃないんだけどね。
今やるべきはバイトを見つけることだな。
あんまり接客業とかコミュ障の俺には向いてないから選ばないようにしてたんだけど、選り好みはしてられないな。
スマホを起動し、バイトの検索アプリ“アルカナバイト”を開いて検索をかける。
検索のコツは“急募”を検索キーワードに入れること。
急募なんだから面接受けに行けば……人が集まってなければだが、よっぽど態度が悪かったりしない限り落ちることはあまりないはず。
俺みたいなコミュ障にはお薦めだ。面接とか上手くやれる気がしない。
冷静に考えるとコミュ障ってそれだけで就職不利だよな。就職面接とかあるわけで。世の中って理不尽。
地域を指定し、急募のアルバイトを検索する……条件に合うのは三件か。善は急げだ。
………………
冬休みが終わった。
結局バイトはまだ見つかっていない。
応募したところはことごとく落ちました。
若干諦め半分今日もアルカナバイトを開く。引っかかったのは一件だった。
数が少ない場合、人が集まる可能性があるんだよな……面接弱者の俺には部が悪い。
まあゼロよりマシだ。落ち込んでる場合じゃないしな。
で、職種は……陰陽師ね。
……は?
思わず二度見しましたが。
胡散臭さが半端ない。
いや、一応見てみよう。
えー、経験不問。年齢不問。勤務日毎週水曜日……いいじゃない。
勤務時間は要相談。時給千六百円。わお。
職種はともかく、勤務条件はピッタリ俺にマッチしている。
報酬もいい。勤務時間が読めないが八時間働いたら一万二千八百円。
二月頑張れば防弾ベストに手が届く。
んーで……会社からのコメント欄は「皆憧れのお仕事、陰陽師のお手伝いが出来ます。妖怪退治に同行して貰うので、元気な方をお待ちしてます」と。
……どう受け止めれば良いんだろう?
イタズラかな……
でも、アプリの掲載領払ってこんなイタズラするかな……めっちゃ金持ちならするかも。いや、そんなイタズラしてる奴が金持ちになれんよな。
んー……まあ、いいや。
取りあえず募集してみて、雇い主が頭おかしかったら辞めればいいだけだし。
今は金を手に入れる伝手の確保が優先だ。選り好みしている場合じゃない。
そう思って俺はアプリで陰陽師のアルバイトに募集した。
………………
アルバイトの面接日当日。
アプリに記載されていた住所へと愛車を走らせる。
到着した場所は当たり前だが、会社って門構えじゃない。
なんちゃら工業とか、なんちゃら精密とか、ああいう看板もない。
民家。
お金はあるのか、結構お庭の広い、豪邸と家の間位の半端なヤツ。
表札には桑野家と書いてある。
桑野……懐かしい名前だな。
教習所で四日間苦楽を共にした女性を思い出した。
あの桑野さんは元気だろうか?
怪我や病気になったとしても、俺に出来ることはないけども。
玄関チャイムを鳴らし、暫し待つと親子らしき二人の女性がお出迎えしてくれた。
「ようこそいらっしゃいました」
「お待ちし……クルイさん!?」
「はい……って桑野さん!?」
その内の一人は、さっき思い出した女性こと桑野美果多さんだった。
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