第5話 ダンジョン探索の準備
無事フォークリフトの修了証も取得し、突入した冬休み。
さて、大事なのはここからだ。
冬休みと言ってだらけてられない。この休みをどう使うかが重要だ。いや、冬休みだけじゃないな。大学の三年生なんぞ単位をそれなりに取っていれば講義がスッカラカンで実質休みの日なんて方が多いし、その後春休みもある。
因みに俺が受けている講義は週八回。
月曜日、火曜日と木曜日に二~三回ずつ入っているから週四日が休みだ。
あと三ヶ月もすれば大学三年も終わるが、四年生になって研究室に入れば、別段一~二月休んだって何の問題もない……と聞いている。少なくとも俺が通う大学の工学部は。この考え方で大学に通っていていいのかどうかは別として。
つまり、これからも時間はたっぷりある。
就職を考えるなら、この時期が勝負ではある。ではあるのだが……今の御時世じゃどうせ就職活動をしたって採用される可能性の方が低いのだ。
一方で大学卒業後、多種多様なバイトを熟した人材は採用されやすい……なんて話も聞く。実際どこぞの就職サイトでそんな統計結果を発表していた。企業としては実地で身に着けたスキルが多い人間に魅力を感じるからだそうだ。
早い話が大学卒業後、順調に就職できるのはよっぽど有能な人材か、一部の宝クジを当てられるような強運の持ち主か。だったらダメ元で就活に精を出すより、一~二年ニート生活を送る覚悟でスキルアップに勤しんだ方が割が良い……と思う。
特に俺みたいに普通じゃ身につかないようなスキル取得のあてがあるのなら。
というわけで計画はこうだ。
生活費を稼ぐ為バイトをする。ま、これは今まで通り。
後の休みをダンジョン攻略に使う。
本当はダンジョン攻略に全振りしたいところだが、生きていくためには収入がいる。親の仕送り五万だけじゃ、家賃四万円の安アパート住まいとはいえ生きていけない。
自由に動ける日はバイトをしても十分ある。
バイトの数を減らさず、むしろ増やしたってダンジョン探索は出来るはずだ。
計画がザックリ過ぎるか? まあ、綿密に計画立てるような頭は俺にはない。これでOKとしよう。
-ピンポーン-
「はーい」
勿論計画だけ立ててボーっとしていたわけじゃない。
先日ネット通販の獄天市場で武器や備品を注文した。
青い炎? 自分が火傷するスキル頼りで、ダンジョン探索とか意味不明な行動をする気はない。
まあ、何らかあのスキルにも使い道はあるかもしれないが、それはダンジョンで検証と言うことで。部屋で検証して火事になりましたとか笑えないし。
「こちらサインをお願いします」
「はい。これで」
「はい。確認しました。では、失礼します」
「お疲れ様でしたー」
届いた段ボールを開けて中を確認する。
まず一品目。サバイバルスティック。二万八千円。
短い棒の前後にネジがあり、計十個の棒を連結させると最長百五十センチの棒になる。付属品についているナイフを取り付ければ槍になるという優れもの。
秘密基地までは人目に付く道路を歩かなければならない。
分解すればバッグに入るのと、レビューでナイフの切れ味がいいというのがあったのでこれに決めた。
もう一品目。狩猟用の剣鉈。四万二千円。
サブウェポンの方が高いのは納得いってない。
とはいえ安物買って使えませんでした、ってのはゴメンなので奮発した。今月の食費がガチで心配だ。
熊狩りを想定した本格仕様。まだ鼠にしかエンカウントことないけど。
以上が武器。
本当は遠距離武器を買いたかったが、クロスボウは規制が厳しくなって売ってなかったし、弓矢は当てる技術を取得するのにまずエラい時間がかかりそうなので、結局この二つにした。
自分の命がかかってるのは重々承知だが、最悪逃げればよくね? って。
木の棒で鼠を屠っただけで気分が悪くなった俺に刃物で斬殺とかハードルが高いかも? と思ったが、そんなこというならダンジョン探索事態が無謀だ。
人は慣れる。
俺の読んでいる漫画やラノベでの主人公達は、結局慣れでそのストレスに対抗していた。
ダンジョンのキモい生命体より俺の将来の方が大事。そう思えば俺にも出来んことはないはずだ。多分。
さっき逃げればよくね? と軽く言ったが、動物相手に逃げることの困難さは重々承知だ。野生の熊から逃げ遅れて……なんてニュースが時々流れているのを知っている。
だから勿論、逃げる為の道具も用意している。
熊撃退スプレー。一万二千円。これを一個。
発煙筒。四千五百円。これも三個。
少ない? 予算の都合上しょうがない。
金がなかったというのもあるが、あんまり持ちすぎても重量に耐えきれず動けなくなる。他にも持っていかなきゃいけないものはあるし。
例えば水。結構重いんだよね。
やっぱ最初に欲しいのは空間収納だな。就職に使えるかどうかは置いておいて、ダンジョン探索には絶対有能だと考えなくても解る。
大抵のラノベの主人公達が身に着けるのも頷けるってもんだ。
さて、他にも必要なものがあるかもしれないが、冒険のプロってわけじゃない。
不安はあるが、最初は少しずつ進みながら不便や不足を感じたときに買い足せばいいと割り切った。
当然だが潜るときはソロパーティーだ。見張りも立てられないのにダンジョンに泊まり込みとか、どうせ無理だ。
テントとか寝袋とかは少なくとも要らないだろう。
そうやって買い込んだ物をショルダーバックに入れ……重っ。
如何に自分が運動不足か思い知らされるな。大丈夫か?
早くも不安事項が見つかったが、自分の将来の為だ。
覚悟を決めて愛車を秘密基地まで走らせる。
さあ、ダンジョン探索開始だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます