デッドカッター・デモクラシー

葵流星

デッドカッター・デモクラシー

2021年11月27日


今日、知人が死んだ。


知人と言っても、ほとんど関わりがないが…ただ、目立っていて…それで、覚えているだけの人だ。


彼の悪評は絶えず続いていた。


そんな…アイツが、昨日死んだ。


確証はないが、この近くの不良と言えば…アイツなのだろう。


クラス内では、すでに話題になっていた。


そして、先ほどから先生達が何やら忙しそうにしていた。


俺は、そのことが気になりはしたがスマホが弄れない手前、どうすることもできずに放課後に持ち越しになった。


放課後、俺は電車の中でSNSを見た。


『都立高校で生徒がナイフで他の生徒を殺傷』


そう言った記事が出回っており、場所は近くにある高校で、俺の学校と近い距離にある高校だった。


そして、死亡した生徒は…。


『伊東 修輔』


父親が警察官で、その知り合いがこの地域には多く居た。

ドラ息子というよりは、親がもみ消しを行う典型的な親子ともどもクズだった。

教育委員会ともコネがあり、実質的に無敵だった。


あとは、ありがちな話だが…。

殺されたアイツは、いじめの首謀者であり、親が手を回している為に外部に情報を漏らさず対応もせず…。


その結果がこれだった…。


俺は、ニュース番組でいじめが原因であるとはしているが、教育委員会を批判しているわけではなく、ただ流していた。


俺は、心配する母親をよそに冷ややかにその事件を眺めていた。


翌日、やたら警察官が街に出向いていたが特に気にせず、この日も学校に行った。


ネットのまとめスレでは、アイツの悪評が名前を伏せられているものの大方は合っているが間違っていた。


当初は、殺傷事件ということで加害者が責められていたが、しだいに被害者が悪人であったことにより、風向きが変わり、それこそYouTuberとかが、伊東の家族を見に行っていた。


本心では、もっと早くアイツが死んでいればと思った。


そっちの方が、良かった。


とはいえ、俺は伊東を殺せなかった。

その上で、いじめを見て見ぬふりしたのは、やはり悪かったと思っている。


けれど、司法の方がそういった個人的な感情よりも社会的に重く見られてるから、なかなか…。


『いじめの首謀者とその関係者を殺せない』


推定無罪でもなく、証拠があっても…司法以上の行為を取ることはできない。


もっとも、その家族にたいしても同様にそれ以上の罪には問えない


数ヵ月後、アイツの母親が自殺し、その後彼の父親は事故死した。


父親は、その後の彼が嫌いだった人々や、他の人々によりバッシングを受け、仕事を失い。

一人息子だったアイツも、愛した妻も死に酒に溺れた。


そして、階段で頭を打って死んだ。


名前の知らない加害者にとっては良いことだが、アイツの取り巻きは依然として生きている。


本当に、可哀想なのはその加害者だ。


アイツのせいで、全てが変わってしまったのだから…。


そう思いながら、その事件から数ヵ月後も俺普通に過ごしている。


本当に、司法はそれでいいのか…。

どうせ、何もかわらないのか…。


なぜ、犯人を殺したら罪になるのか?


ただ、どうせだったらアイツの死体を踏んで壊してみたいと、少しムカついて、それからアイツのことを忘れた。


私刑というのは、常に正しくあるべきであり、それこそ、広場に置かれたギロチンのように、確実に悪人を処分するべきだと。


そう思いながら、俺は今日も生きている。

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デッドカッター・デモクラシー 葵流星 @AoiRyusei

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