幼馴染みに想い馳せ
「ねぇ、聞いてよー」
大学の友人に久々に会った。
「研究室の同期でさ、いつも何でも締め切りギリギリの子がいるんだよー。今回、共同で論文書くことになっちゃってさぁ。マジで困っちゃう」
彼女は澄んだ日本酒を一口含むと、軽く目を閉じ天井を仰ぐ。
「……ちゃんと仕上げてはくれるんだけど」
パチッと目を開け、こちらを見た。疲れた目元でマスカラがキラキラ浮いている。
ニヤッと開いた薄い唇。かすれたピンクの透き間から白い歯がチラッと覗いた。
「もっと早くエンジンかけて欲しいよね。スタート早ければ、締め切り間に合うはずなのにさぁ」
少し赤らんだ彼女の瞳はいたずらっぽい光が灯ってた。そこに映るのは遅刻魔な同期ではなく、気まずそうに苦笑いする私。
聞けば、同期は私の幼馴染みで、相も変わらず元気そうだった。優しく穏やかな困り眉を思い出し、私はそっとグラスに口をつける。
店の喧騒とタバコの香りが、グラスの滴に溶けそうな気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます