幼馴染みに想い馳せ

「ねぇ、聞いてよー」


 大学の友人に久々に会った。

「研究室の同期でさ、いつも何でも締め切りギリギリの子がいるんだよー。今回、共同で論文書くことになっちゃってさぁ。マジで困っちゃう」

 彼女は澄んだ日本酒を一口含むと、軽く目を閉じ天井を仰ぐ。

「……ちゃんと仕上げてはくれるんだけど」

 パチッと目を開け、こちらを見た。疲れた目元でマスカラがキラキラ浮いている。

 ニヤッと開いた薄い唇。かすれたピンクの透き間から白い歯がチラッと覗いた。

「もっと早くエンジンかけて欲しいよね。スタート早ければ、締め切り間に合うはずなのにさぁ」

 少し赤らんだ彼女の瞳はいたずらっぽい光が灯ってた。そこに映るのは遅刻魔な同期ではなく、気まずそうに苦笑いする私。


 聞けば、同期は私の幼馴染みで、相も変わらず元気そうだった。優しく穏やかな困り眉を思い出し、私はそっとグラスに口をつける。

 店の喧騒とタバコの香りが、グラスの滴に溶けそうな気がした。

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