神無月

何故か泥棒をしてた

 暗い夜の五叉路交差点。赤信号と、側のコンビニが明るく光る。

 よく行くスーパーの裏の家。そこは小さな植木屋さんで、僕はそこのおばちゃんとも仲良しだった。

 元は駐車場だっただろうセメント張りの庭先にいろんな鉢が並んでいた。どれも葉は落ちていたのだけど、おばちゃんとの話は楽しかった。


 それなのに。どうしてだろう。

 僕はおばちゃんちの玄関先で、衣装ケースを漁っていた。そこには刈った枝がたくさんあって、僕はそれを盗みだそうとしていた。大義のために。何か大きな目的のために。

 はっきりしない理由を抱えて、親しい人に泥棒していた。藍と黄色の、静かな夜。

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