正義じゃないけどさ

 藍色の空の下。

 四角い影に囲まれて、白い街灯がチカチカ光る。ジーッとうるさい自動販売機に、ほんのり明るい電話ボックス。

 僕は誰かを追って、夜の町を駆けていた。

 相手は2人。戦隊ヒーローに出てくる敵の下っぱ戦闘員みたいな黒いスーツが鈍く光ってた。

 何にも知らないまま、言われるがまま、追いかけていた。


 突然、辺りが青く染まる。ゾッとしつつも、眼をこらすと、進む先に歩行者用の小さな踏み切り。そこだけ、灯りの色が違った。


 少し視界が開けたことで、僕の走るペースが上がった。

 もう少し。あとちょっとで追いつける。


 ちょうど踏み切りに差し掛かったとき。

 ぐんっと両手に痛みが走り、地面に強く叩きつけられた。わけが分からず、顔をあげると、両手足にそれぞれ縄をかけられていた。右手足にかけられた縄は、さっきまで走っていた方角の遮断機の外で、敵の1人が引っ張っている。左手足は反対側でもう1人が……。


 何やら罠を張られたみたいだ。

 僕は慌てて振りほどこうとするけれど、辺りは暗くよく見えないし、縄はちっとも緩まない。

 そうこうするうち、遮断機が鳴り、電車の音が近づいてくる。

 うっすら青い視界の中で、停止ボタンと電車に乗った人を思った。

 身体をギュッと線路の中心へ押しつける。僕の四肢が引き裂かれていく。うるさい音が頭に響いた。

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