壊して壊して壊して

 ニヤッと、目蓋と唇が歪んだ。白い目と歯がヌメっと光る。自尊心で濁ったそいつを、私は力の限りぶん殴る。

 肩、二の腕、前腕、それから拳の先へ。筋肉と神経の中を、言葉にならない私の怒りが、電気みたいに走り抜け、花火みたいにあいつに弾ける。

 殴る度、頭の何処かがチカチカ光って、奮う腕を止められない。頸動脈をサイダーが流れたみたいで、私の心はスッキリ晴れた。白い霧が広がるみたいに。

 なのに、頭の奥がチクチク痛む。渇いた吐き気も湧き出した。喉の奥から手が生えそうで。


 もうダメだ。


 私の顔は醜く歪んで、汚い瞳で笑ってる。見えないけれど、間違いない。

 頭の中が煮えきる前に、私はパッチリ目を醒ます。泣きたくたって涙は出ないし、吐きたくたって嗚咽も出ない。

 妙にスッキリ爽やかな頭をかかえて、身体を起こして支度した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る