2022年

睦月

湯気立ち上る豆乳鍋

 ぐつぐつぐつ……。


 鍋で煮える白い液体。中には、椎茸、白菜、春雨。肉は豚肉。まろやかな香りが立ち上る。

 私は具の見えない白い隙間に、布巾ふきんを突っ込み始めた。長い菜箸さいばしで、側に積まれた薄い布巾を次から次に押し込んだ。

 美味しい具材も、喰えない布も、同じように煮えていく。

 布巾の山がどんどん鍋に消えていく。


「あっ……」


 布巾に紛れた手拭きタオル。

 赤い布地にアニメキャラ。

 勢い余って、鍋の中に突っ込んだ。


 白い鍋に沈む赤。


 私はずるっと眼が醒めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る