第37話 遊園地(3)
「ひ、ひ、ひ、日菜子ちゃん!?流石にここは怖くない!?」
「あれ?洋子さんこーゆー系は苦手でしたか?」
「苦手――ではないかな!大人だし!でも時間的にね!ちょーと怖いかも!うん、時間的にね、もう夕方過ぎて外も暗くなっているもんね」
日菜子ちゃんの乗りたいものややりたいものになんでも肯定的にくっ付いて回っていた洋子さんが初めて日菜子ちゃんの決定にストップをかけた。目の前の看板には「恐怖の大迷路~死者の叫び~」と書かれてある。所謂お化け屋敷という奴だ。ジェットコースターにも劣らぬその外観はお化け屋敷を苦手な人を寄せ付けない迫力を持っている。
「洋子さんちょっとちょっと」
「なーに?」
「ここは2人用ですよね?(小声)」
「うん、わ、私じゃ頼りないかな?(小声)」
何やらこそこそと耳打ちしながら相談しているが何の話をしているのだろうか?僕も亮太も心霊系に恐怖を感じない、コンセプト的に驚かされてそこには吃驚したリアクションを取ってしまうだろうが、ビクビクして歩けない――なんて事態には陥らないはずなのだが、僕らのどっちが頼りがいがあるか決めかねているのだろうか?
もしかして亮太と僕――なんていわれないよね?
「洋子さんとおじさんで入ったらどうですか?(小声)」
「うぇ!?」
「どうしました?」
「い、いえなんでもないです」
当然の大声に思わず口を挟んでしまったが、あまりにも動揺が激しかった。もしかして僕らには聞かれたくない内容だったのだろうか、それは申し訳ないことをした。
早々に終わる話ではないのかと察した博人と亮太は、一声かけてポップコーンやドリンクを買いに2人から距離を置いた。
「どうなんですか洋子さん?」
「そ、それは嬉しいけど。いきなりじゃないかな?」
「でも、今行かないと会えるのってお店位ですよね?おじさんリモートになってから頻度下がっていて寂しいって連絡してくれたじゃないですか」
「文面だから言えたんだよー」
「それじゃあおじさんと入らないんですか?」
「う、うーん。いや、行く!行きます」
「あれ?行く行かないの話し合いだったんですか?」
「へ?ひ、博人さん!?」
てっきり行くことは確定していたのかと思って、並ぶ用のポップコーンを買ってしまった。改めて聞いたところ行くとのことだったので問題はなかったが、それなら何の話をしていたんだろうか
「亮太さんー、ドリンクですか?」
「そうだよ、ん?どうしたそんな近くにこなくも――」
「グーパーする時亮太さんはずっとグーでお願いできませんか?(小声)」
「ははーん、なるほどね了解(小声)」
こっちを見つめてニヤニヤする亮太。もしかしてわかっていないのは僕だけなのだろうか、亮太は察する力も十分にあるし若者の好きな物とか知ってそうだから僕だけ付いていけていない可能性は十分にある。せめて共有してくれないかな
博人の心の叫びは誰にも届かない、予想があっていないのだから届かなくても当然なおだが。
「これ2人ずつらしいのでグーパーしましょ!」
人数が分かれるときは自然にグーパーしていたので日菜子ちゃんの掛け声に合わせて手を出した。結果は僕と洋子さんになったのだが、変わらず亮太はニヤニヤとこちらを見てくる。本当に何が面白いのかわからないのだが
待ち時間の談笑はするが、亮太のニヤニヤの理由、日菜子ちゃんと洋子さんのこそこそ話を解明どころか、なんやかんや流されて触れることすらままならなかった。
そんなこんなで待つこと数十分、ポップコーンは既に空箱に姿を変え鞄にしまっていた。待ち時間が長くとも、入り口に近づいてくるとやはり怖かったのか震えが目に見えてわかるようになる洋子さん。苦手なら外でと提案するも頑なに「行きます!!」と、本人が行きたいなら止はしないが少し強情な姿に困惑した。
「さぁ、恐怖の大迷宮へようこそ。恨みが募り前世に留まってしまった亡霊があなた方を待っています。」
入口の館内アナウンスと共に僕らは恐怖の大迷宮に足を踏み入れた。
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