第36話 遊園地(2)
「はぁはぁ、最近のジェットコースターってこんなに怖いんか」
「す、すごかったね」
TVでも取り上げられるような有名なジェットコースターを体験した亮太と博人。子供の頃にあったジェットコースターは真っ直ぐに上がって、真っ直ぐに下るだけだった、真横に伸びる線があればいい方という印象だった。それが今ではどうだろう、当たり前のように一回転、緩急をつけた速度に、頂上のお尻がヒュンとなる一番怖い場所での一時停止。
おじさんらの体力、精神力は一つ目の乗り物にして結構持っていかれていた。
「はぁー楽しかった!」
「ねー!うわっ、あのジェットコースター後ろ向きで進んでいるよ」
「今のジェットコースターとどっちが怖いんでしょうね?」
「乗って確かめようか!」
「それが良いですね!おじさん!亮太さん!今度はあれ乗りましょう!」
「はーい」「へーい」
同じく怖そうなジェットコースターを指さす日菜子ちゃんに最早返事をすることしかできなかった。しかし今日はお礼で来ているのだ、さらに言えば乗り物に乗る前亮太と共に今日は頑張って若者に付いていくと覚悟を決めたのだ、どこかで一度休みたいと抗議する脳を無視し身体を動かした。
ちなみにどちらが怖いかなんてジェットコースターソムリエを行う2人に対して、どっちがどっちなんて気にする余裕なんてあるはずもなくどっちも怖かったという感想しか出てこなかった。
「2人とも、一旦お昼にしようか」
「パーク内だとこの辺が食べ物多いみたいだよ」
「あっ、もうこんな時間なんですね」
「賛成です!ちょっとお腹すきましたもんね」
絶叫系を3つ、参加型のアトラクションを2つ、キャラクターとの写真撮影を終えたところで時刻はお昼を超えていた。まだまだ元気な女性陣は、お腹のことを気にすることなく回ろうとしていたので一度引き留めお昼を提案。案の定日菜子ちゃんは時間を忘れて楽しんでくれていたみたいでおじさんとしては嬉しい限りなのだが、若者の元気に付いていけない自分に年寄りではないがもう若くはないのだなと感じてしまっていた。
「はい、ウサチャン型ホットドッグ、4種ピザ、山々ポテト、ランタンジュース」
博人は席を取り、亮太が買い物をして机の上に料理を並ばせた。流石遊園地、日常では見ない色とりどりの配色や、見ているだけで楽しい形をしており写真映えしている。洋子さんや日菜子ちゃんは嬉々として写真を撮り、若者に人気な写真投稿アプリに色々上げるんだと意気込んでいる。
「うん、味は普通に美味しいな」
「この色で普通の味なんだね、うん、美味しい」
「日菜子ちゃんそれ何味のピザだった?」
「シーフードパイナップルらしいです!とっても美味しいですよこれ!洋子さんのは?」
「私は照り焼きチキンかな?こっちも美味しいよ!」
反応はご飯時にもはっきりと隔たりがあった。色や形に慣れていない男性陣――もといおじさんは恐る恐る口に運び味を確かめながら手を付けていった。ホットドッグなんかは独自のスパイスや、たっぷりとした肉汁にふわふわのパンがマッチしてとても美味しかったのだが、形や色に固執しすぎて普通だなという感想がいの一番に出てしまっていた。
対して女性陣は奇抜な物に慣れているのか、臆することなく口に運び、これは何味で美味しいといった情報共有をしながら楽しんでいた。
「さてと、次はどこ行こうか日菜子ちゃん!」
「うーん、っておじさんに亮太さん足は大丈夫ですか?」
食事をとって幾ばか落ち着くと、博人と亮太を連れまわしていることを思い出したのだろう、いつも通りの気遣いを発揮し体調の心配をしてくれる。
「問題ないよ!こっちは気にしないでいいからね!」
「そうそう、そのための2連休さ!筋肉痛どんとこい!ってことでどんどん回ろうか!」
既に体力の底は見えているのだが、日菜子ちゃんたちを悲しませるわけにはいかない。と精一杯の見栄を張って応えた。
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