第27話 パーティ(3)
ピンポーン
「おっと、もうそんな時間か」
「私が出てきます!」
「うん、お願い」
博人がスープを作り始めて数十分後、今まさに完成しようとしたその時に玄関口からインターホンが鳴る音が聞こえた。ギリギリ手が離せない最後の行程に博人自身が出ることが出来ず、手の空いた日菜子ちゃんが買って出てくれたためその言葉に甘えた。
「お邪魔します!うぉー!めちゃくちゃ広いし綺麗っすね!」
「お邪魔します、こ、ここが博人先輩の家。覚えておかないと」
「お邪魔します―、素敵なおうちですねー流石博人先輩―センスがいいですねー」
先にリビングへと入ってきたのは新人同期3人組の雄大、音羽、恵子であった。各々手には食べ物やお酒らしき品物を大事そうに抱えており、パーティを楽しみにしてくれていたことが手に取るようにわかる。
特に雄大。予想できていたと言えばそれはもう簡単にできていたのだがはしゃぎようが凄い。最低限のモラルとして走り回ったり、迷惑になるような大声は上げていない為注意することもないのだがこうも子供っぽいと呆れてしまう。まぁ今日はパーティをするために集まってくれたのだ、純粋に楽しさ全開!と表に出す大人がいてもいいかと思うのだった。
「うぃー博人、洋子さん、日菜子ちゃん。お邪魔するねー。これ少し焼きたいんだけど台所借りていいか?」
「お邪魔します!紙皿に紙コップに割りばし持ってきました!並べて置いちゃいますね!っとこれはアイスなので冷凍庫入れちゃいますね」
続いて亮太、圭吾がリビングへ入り、今回パーティに参加するメンバーが全員揃った。
「ありがとう2人とも、これは僕が焼いておくから圭吾と机の準備お願いしてもいいかな?」
「あー悪いな、お願いするわ。机の方は了解―、おーい雄大、音羽、恵子、お前らも準備手伝えー」
「「「はーい」」」
亮太から大きなお肉を受け取り、フライパンに火を付ける。超分厚いわけでも、生焼けの部分があるわけでもない為ほんとに温める感じなのだろう。特に大変という訳でもないのでササっとお肉に火を通し、十分に温まったところでお皿に移して机へと向かった。
すでに準備万端だったようで、机にはお寿司や、揚げ物、サラダ、クラッカーなど美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。真ん中には亮太の持ってきてくれた大きなお肉を置くスペースが確保されており、粗相がないよう丁寧においた。
「おーし、大人も最初はジュースかお茶な!日菜子ちゃん何がいい?」
「好きなものがわからなかったから色々買ってきたの、好きなジュース選んでね」
「ありがとうございます!えと、じゃあオレンジジュースで」
亮太を筆頭に、動ける大人組が全員分のコップに飲み物を注ぎ終え、最後の準備となった。
「行き届いたな?よし、じゃあ博人挨拶頼む」
ニヤリとこちらを見て笑う亮太、ここにきて無茶ぶりをと思ったが全員の視線が僕に集まる。パーティを開いた者として仕方ないかと腹を括り、コップを手に取る。
「まず日菜子ちゃんテストお疲れ様」
「「「「「お疲れ様!」」」」」
「あ、ありがとうございます」
「みんなも集まってくれてありがとう!羽目を外しすぎないように楽しみましょう」
「雄大ね」「雄大君ね」「雄大だな」「間違いなく雄大だ」
「そ、そんな!みんなして酷いっす!」
「ははは、大丈夫だと信じてるよ」
「博人さーん!やっぱり優しいのは博人先輩だけっす!」
「それじゃあコップ掲げて、乾杯!」
「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」
隣同士の人とコップを軽く交わし、遠くの人にはコップを上げ合図とした。軽く飲み物に口を付けた後、皆が皆料理を見て固まってしまう。それもそのはず大量に並んだ美味しそうな料理のどれから手を付けていいか悩んでいるのである。
「うぉーこのサラダ美味いっすね!ゴマダレっすか?あっさりしてるのに味濃くてすげー-っすね!箸休めとかじゃなくバクバク食べれちゃうっすね!」
「ふふふ、そうでしょう、そうでしょう!うちの近くにあるおばちゃんのサラダはしっかりとした味付けなのに止まらず食べれちゃうんだから!」
「音羽が持ってきた奴っすか!?じゃあもしかして、裏の通りにある商店街のお店っすね?」
「もしかしなくてもそうよ!この商店街は安くて美味しい料理が沢山あるんだから!あっ、日菜子ちゃん取れる?お皿くれれば取るわよ」
「ありがとうございます!――ん~ほんとだ!とっても美味しいです!」
先陣を切って箸を動かしたのは我らが雄大、こういう時はほんとに頼りになるチャラ男だ。雄大をきっかけに皆気になっている食べ物へと箸を動かした。
ある人は揚げ物に、ある人はお肉に、そしてそれを見た遠くの人は美味しそうだから取って欲しいと、パーティらしくわちゃわちゃした楽しい空間が広がるのだった。
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