第25話 パーティ(1)
「あらあら可愛らしい子が沢山、洋子早めに行かないといよいよ取られちゃうかもねー」
「お、お母さん~」
「「!?!?」」
洋子さんのお母様こと、真紀さんの一言で賑やかだった空気が一瞬凍る。店内の暖かな空気が数度下がった感覚が博人含めその場にいる全員が感じた。
「洋子さんってー博人先輩の彼女さんだったんですかー?」
「そそそ、そんなことないですよ」
「そうだよ、恵子。洋子さんが困ってるから変な質問は控えてね」
「ほ、ほんとよ!何考えてるの恵子!」
「はいー、すみませんでしたー」
「僕を揶揄いたいだけの真紀さん、どうか後輩は巻き込まないでやってください。ちょっと怖いです。」――なんて言葉に出せるはずもなく困った笑みで何とか伝えようとするも、真紀さんはニッコリと笑みを深め、暗に辞めないと意思を伝えているかのように見えた。
「あー、確かに2人共博人先輩のこと――ぐはっ!何するんすか音羽!」
「うっさい!ほんと空気読めないわね」
「はぁ、雄大君は出来る子なのにーどうしてその辺は察せないのでしょうかー態とやってるんですかー?」
「え?なんでなんで!?日菜子ちゃん助けてくださいっす!」
「雄大さん、ちょっとだけ恵子さんと音羽さんのことも考えてあげてほしいかなって思います」
「日菜子ちゃんまで!?」
味方はいないっす!と叫ぶ雄大。結局何が言いたいのかはわからなかったがきっとデリカシーに欠けることでも言ったのであろうと容易に想像がつく。
「ほらほら、ここは店なんだからあんまり騒ぐな雄大。博人たちもアップルパイ選んだのか?長居しても迷惑だし買って帰るぞ」
「俺だけっすか!?」
「そこで反省より先に声上げちゃうから名指しされるのよ」
「はー残念チャラ男ですねー」
「ちょぉぉい!残念って!」
「「「うるさい」」」
「うっす…」
頼れる大人枠亮太の一声によって場は収まった。全くこの中で若いとはいえ日菜子ちゃんより子供じみた行動は控えてほしいと教育係として思うのだが、仕事場でもないので目を瞑ろう。
「日菜子ちゃん、テストお疲れ様のご褒美だから好きなもの選んでいいよ」
「いいんですか?じゃあ前食べたシンプルなやつが良いです」
「勿論!大きいもの買おうか」
「おっ、テストだったのかお疲れ様日菜子ちゃん」
「ありがとうございますおじさん、亮太さん」
「折角だし何か買っていくから博人の家でパーティしても?」
「おぉ、それは良いね。お土産期待してるよ」
「ははは、任せろ」
実は内心、テスト終わりのご褒美にスイーツ一つだけではどうなのかと悩みつつも特にこれといったアイデア無く困っていたところだったのだ。そんなところに突然降って湧いてきたアイデアに頭が下がる、流石神様仏様亮太様だ。
「俺も何か持っていくのでいきたいっす!」「私も行きたいですー」
「わ、私も良いですか博人先輩?」「俺もお邪魔でなければ」
楽しいイベントを目の前に黙っていられる後輩でないことは教育係であった僕が一番知っている。しかも今回のイベントはパーティと来た、人数が多いほうがきっと楽しいだろうと思い了承した。
「よろしければ洋子さんと、真紀さんも参加していただけませんか?」
お世話になった方々であるし【あみりんご】の店内で話していたのだ。パーティはきっと豪勢な料理が並ぶので良ければと思いお誘いしてみる。
「いいんですか!?」
「勿論です!来てくれたら嬉しいです」
「有難いお話だけれど私は遠慮しておくわ、洋子をお願いね博人さん?」
「は、はい」
こうして僕、日菜子ちゃん、亮太、雄大、恵子、音羽、圭吾、そして洋子さんという大所帯でのパーティを決行することが決まった。楽しくなりそうな予感に胸を躍らせるが、目の前でもっと楽しそうにしている雄大を見て少し余計な不安という感情が湧いたのは内緒だ。
「さて、大人数で準備しなきゃだし買ったら行こうか」
「おーう、お前らは17時にいつもんとこな」
「「「「はーい」」」」
「真紀さんすみません、この大きなアップルパイ2つお願いします」
「いつもありがとうね、これはおまけ。洋子、もう店は良いから博人さんのところ手伝っていきな、料理位は出来るでしょ」
「え!?迷惑になっちゃうよ~、お邪魔ですよね?博人さん」
「そんなことないですよ、寧ろありがたいです」
邪魔だなんてあるものか、温かいスープやメインをこれから作らないといけないのだから、料理が出来る大人が一人入ってくれるだけで百人力だ。仮に料理ができなくとも使える手があるだけでとてもありがたい。それに洋子さんは僕の家を知らないしね
「じゃあ後で!俺も美味しい物持っていくっす!」
「俺は紙皿とか持っていきますね」
「私もおつまみ系があったはず」
「それなら私はお酒をもっていきますねー」
「んじゃ洋子さんに博人、日菜子ちゃんまたあとでね」
こうして各々パーティを行うために【あみりんご】から出て支度をしに行く。僕らは日菜子ちゃんとどんな料理を作ろうかと頭を悩ませつつ、大急ぎで支度をしている洋子さんを待つのだった。
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