第3話 座敷童な社員
求人情報誌が、昔は有料だったことを知っているだろうか?
毎週発行され一冊百円のものと、エリア限定のフリーペーパーの二種類があった。
2008年のリーマンショック以来、広告収入が落ち込み、多くの有料求人情報誌が休刊に追い込まれた。
ADSLが、主流だった時代の話である。
私は、とある広告代理店で広告制作スタッフとして働いていた。
その会社には、座敷童のような女性社員がいた。
その方をザシキさんと仮名しよう。
ザシキさんには、奇妙な噂があった。
その噂とは、彼女が退職した会社は必ず倒産するというジンクスだ。
噂を聞いた時、そんなバカな話があるものかと一蹴した。
しかし、彼女が退職して約一年くらいで会社は本当に倒産した。
ザシキさんが在職していた時は、羽振りが良かった。
それまでは、月二回は会社の経費で打ち合わせと称した飲み会や食事会が行われていたし、残業手当も出ていた。
結構な無茶振りの仕事を振られても、それなりに良いお給料を貰っていたので文句はなかったのだが、徐々に色々な手当を外されてしまい転職を考えた時だった。
倒産するかもという噂を営業から聞いて、また一から転職活動をしなければならないのかと求人広告を作る傍らで、私自身が求人検索をするという異様な生活が始めった。
結局、その噂から一月後に面談をされ、系列会社で完全歩合で営業込みで働くか、辞めるかの選択を迫られた。
愛社精神など持ち合わせていなかった私は、サクッと辞めることを決意した。
有給はあったが、消費させて貰えなかったことだけは今でも恨んでいる。
負債額は数億を超え、当時の社長は自己破産の手続きを取ったと風の噂で聞いている。
後で知ったのだが、リーマンショックの影響を受けて業績が急激に悪化しただけでなく、広告料の売掛金未払いの代金が大きく回収できなくて倒産したらしい。
あれだけ順風満帆な会社を何の躊躇いもなく退職したザシキさんは、私は座敷童が憑いているのではないかと今でも思っている。
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