助けて! ホワイト&ブラック!

「ブルー! 協力して倒すわよ!」

「分かってる! さっさと仕留めるぞ!」

 ……今ぼくは、東京タワーの後ろにかくれて、ブルーとグリーンが戦ってる様子をじっと見てる。二人の目の前には、絵本の中に出てくる恐竜のような、大きなおおきな怪獣がいる。怪獣が太いしっぽをぶんとふると、止まってた車が一瞬でこなごなになった。

「でりゃぁぁぁ! くらいなさい!」

 グリーンがドンっと地面をけって、ビューンとビルの間を飛びぬける。そのまま右手をグーの形にして、怪獣のでっかい首を思いっきりなぐった。

「ブルー、今よ!」

「ああ!」

 怪獣がちょっとひるんだすきに、今度はブルーが高く飛び上がって、こんしんのキックをくらわせる。怪獣は苦しそうに火をはいて、二人を一気に焼きつくそうとした。

「ブルー! グリーン! 危ないよ!」

「大丈夫よ、すみれちゃん! レッドがいなくたって、アタシたちは無敵なんだから!」

 グリーンはウインクをしてるけど、ピンクのマントに炎が移っちゃってる! ブルーが怪獣に連続パンチをしているけど、怪獣はまだまだ元気そうだよ!

「おい、グリーン! もたもたしてねぇで、さっさと攻撃しやがれ!」

「わ、分かってるわよぉ! あちちっ……」

 ……た、大変だ! 怪獣が「ぎゃぁぁぁす!」と声をあげて、真っ赤な炎をはいてきた! このままじゃ、二人とも真っ黒こげになっちゃうよ!

「だっ、だれかー!! だれか、助けてー!!」

 ぼくはお腹の底から声を出して、「だれかー! 助けてー!」と叫んだ。ぼくにできることは、これぐらいしかないけど……。ぼくが呼ぶと、必ずだれかが助けに来てくれるんだ……!


「全く。天下無敵のチチェレンジャーが、情けないわね」

 ――こ、この声は!! 困ったときに、チチェレンジャーのみんなを助けてくれる、カトレアホワイトだ!! フリフリな真っ白ドレスを着た、クールな女レンジャーなんだけど、レッドと肩を並べるほど強いんだよ!!

「くっ……、ホワイトか……! おまえの力なんか借りなくったって、俺らで十分……!」

「そういう割には、尻が炎で燃えてるわよ」

 ホワイトは呆れたように首をふって、ぐいっとブルーを押しのけた。きりっとした顔で怪獣をにらむと、「はぁっ!」とするどいキックをかます。

「ブラック! あんたは怪獣の後ろに回りなさい!」

「……くくくっ、もちろんだ。ブラックの名を持つ俺には、まさに影こそがふさわしい!」

 ――ホワイトはいつも、二人組で戦ってるんだ。その名もガーベラブラック。おかしなお兄ちゃんだけど、強いのは確かだよ!

「さぁ、沈め! 原罪を背負いし、闇の住人よ!」

 夜中みたいに真っ黒なヒーロースーツに、黒ねこみたいに真っ黒なマント。ブラックは「とうっ!」とビルから飛び降りて、両うでをクロスしてビームを放った。

「喰らえっ! エンシャントダークスペシャルオリエンタル……」

 ……ブラックが言い終わらない内に、怪獣はビームをくらって「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!」と倒れた。そのすきを狙って、ホワイトがかっこいい必殺技を放つ。

「消えなさい! ホワイトエクレールッ!」

 ホワイトが左手を天にかざすと……、真っ白なかみなりがドーッンって落ちて、怪獣をあっという間に灰にしちゃった! やったー! ぼくたちの勝ちだ!

「やーんっ! さすが、ブラックちゃん!」

 グリーンはブラックにぎゅうって抱きついて、うれしそうにぴょんとはねた。ブルーは強がってたけど、グリーンは二人に助けてもらえて、とってもとってもうれしかったみたい。

「いつ見ても、かっこいいわぁー! アタシのことを助けてくれて、ありがとね!」

「うっ……。く、ぐるじい……」

  グリーンは力が強いから、ハグをされるのもひと苦労。……ああ、ブラックの顔、真っ青になっちゃった。

「ブラック。お遊びはこれくらいにして、さっさと帰るわよ」

「げほげほっ……。あ、ああ……」

 ホワイトとブラックは、なぞの二人組レンジャー。チチェレンジャーが困ったときに現れて、戦闘が終わったらさっさといなくなっちゃう。二人はとっても強いから、チチェレンジャーの仲間になってほしいなぁ……。

「ねぇねぇ、ホワイト。ホワイトとブラックも、チチェレンジャーの仲間になろうよ」

 ぼくがそう言うと、ホワイトは困ったような顔をして、小さく首をふった。それは何だか、ちょっとだけ、悲しそうだった。

「……それは無理」

「なんで? どうして?」

「私たちは、考え方が違うから」

 ホワイトはそれだけ言うと、ブラックのマントを引っ張って、あっという間に姿を消した。……うーん、何だか残念だなぁ。二人が仲間になってくれたら、チチェレンジャーはもっともっと強くなるのに。

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