第36話 川上賢太・七日目

 誘拐されてどれくらい経ったのだろうか。

 もはや起き上がるのも面倒になっている川上は、今日も変わらずに置かれているご飯を見て、溜め息を吐いていた。

 代り映えのしないメニューは相変わらず。そして、缶コーヒーが添えられているのも相変わらずだ。

「俺をどうしたいんだよ」

 気がおかしくなりそうだ。

 川上は頭を掻き毟る。

 シャンプーは犯人から支給されているので、べたつくことはないが、それでも、すっきりした感じはない。ここに閉じ込められて風呂には入れていないから、身体は清潔な状態を保たれていても、どうにも調子が悪い。

 いや、そもそも、ここにずっといるせいで、気分がふさぎ込んでくる。起き上がる気力がないというのも、要するに抑鬱状態にあるせいだ。

「くそっ、後どれだけ続くんだよ」

 川上は頭を掻き毟っていた手で枕を殴るが、それはより虚しさを煽るだけだった。

 ここに囚われている。

 これだけが事実だ。そして犯人は何があっても姿を見せるつもりはないらしい。

「ちっ」

 イライラするだけ無駄なのだ。しかし、気持ちは憂鬱かイライラのどちらかにしか傾かない。

「早く解放してくれよ」

 ようやく缶コーヒーに手を伸ばすと、それを一気に飲み干した。空腹の胃にコーヒーは負担だったのか、少しきりっと胃が痛んだ。しかし、そのくらいの刺激がなければ、生きている実感すらなくなりそうだった。

「はあ」

 川上は大きく息を吐き出すと、再び布団に潜り込んでいた。

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