追放ハーフエルフは南の島でスローライフ~魔術の使えぬ無能だとエルフの里を追放されましたが実は天才植物使いです。追放先のジャングルで建国したら、移住希望者が多すぎて困ってます~
第31話 バトルド・コロッセウム1回戦だよ
第31話 バトルド・コロッセウム1回戦だよ
総合闘技祭バトルド・コロッセウム。この町で半年に1回行われる闘技イベントで、この日のためにワイハー島の各地から多くの腕自慢たちが集まる──らしい。
私が来た選手の控え室にそんな説明書きが貼ってあったんだよ。
「おいおい、ありゃハーフエルフか? しかも女だぞ?」
「ハーフエルフっていや……ほとんど魔術が使えないとかいう話じゃなかったか?」
「かといって格闘ができそうな体格には見えんぞ……?」
周りから視線が集まっているのを感じる。
まあそれも仕方ないか。他の参加者はみんな筋肉ムキムキで大きな身体なのに、それに比べると私の身体の小さいことこの上ない。
「おいっ! 貴様っ!」
2メートルくらいありそうな大柄な男に声を掛けられた。友好的ではない。
「なに?」
「ここになにをしに来たっ?」
「なにって……優勝?」
私がそう答えると、控え室が笑いに包まれる。みんな「おいおい本気かよ」みたいな反応でまるで冗談扱いだ。
「優勝だと……? ふざけるなっ! 冷やかし以外のなににも見えんわっ!」
「冷やかし? ちょっと言ってる意味がよく分からないな」
「このバトルド・コロッセウムの1回戦目は出場者を4組に分けてのバトルロワイアル、すなわち混戦だ! 貴様らエルフのように遠距離戦を得意としている種族が勝ち上がれるものじゃないっ!」
「へぇ、そうなんだ」
「フンっ! 分かったらとっとと棄権の手続きに入るんだな。この神聖な闘技祭に貴様のような不純物が混ざっていては興ざめする!」
「いや、棄権はしないけどね」
「なに……?」
「安心してよ。その4組の中の1組で勝ち抜くのはきっと私になるからさ、興ざめることはないんじゃないかな」
控え室の連中がピタリと笑いを止めた。どうやらみんな怒ってしまったらしい。このイベントに臨むにあたっての誇りとかそういうの? 傷つけてしまったかな。
「……そこまで言っちまったからにはもう引き返せねーぜ、ハーフエルフ。勝ち抜く以外に五体満足で帰れる方法はないと思え」
「どんと来い、って感じだね」
まあもちろん私には魔術を使う力なんてないし、格闘どころか取っ組み合いのケンカすらもしたことはない。それでも大丈夫。
だってこの闘技祭、武器の持ち込みもOKなんだもん。
私のポケットに入っているのはマナの込められた植物の種たち。そりゃ知らない町に来るんだから、最低限の準備はしてくるさ。
「──さあ始まりましたっ! バトルド・コロッセウム! 1組目の選手が入場します!」
というわけで、やってきましたよ本番に。
実況者にうながされるままコロシアムに入場するとお客さんたちの熱狂がお出迎えしてくれる。
「ぶっ殺せー! 全員死ねー!」
「血ィ見せろ血ィーっ!」
「臓物をぶちまけろー!」
客が物騒すぎる。なんか選手よりも血の気が多くない?
まあよかった、ククイとシエスタが観客席にいなくて。ちょっとばかり刺激が強すぎるねこの場所は。
ちなみに2人はコロシアムの外でサボくんといっしょに待ってもらっている。なのでサッサと試合を終わらせて帰らなきゃ。
「──さて、では恒例のルールの説明です! コロシアム内の石のフィールドの外に一度でも出てしまった場合は場外となり失格。最後までフィールド上に立っていた者が決勝トーナメントへと進めるという簡単なものです!」
なるほど。じゃあ全員昏倒させなくてもいいってことなんだ。それならこの種を使おうかな。私は実況者が喋ってる間、フィールドの中央に行ってマナの込められた種を植える。私を囲むように、四方に1つずつ。
「──この第1組、やはり注目は前大会で優勝したドウェウィン・ジェイソン氏でしょうね、
その実況に合わせて、私の近くにいた周りと比べても一段とムキムキのスキンヘッドがポージングを取る。会場が一段と盛り上がった。人気者なんだね。
「──さあ、それではいきますよっ? 準備はいいですかっ! ……試合開始ッ!」
その合図とともに、私は種のマナを操って一気に植物を生長させる。私の周りから、高密度の緑が外側に向かって噴き出した。
「「「おわぁぁぁぁぁあっ⁉」」」
私以外の人間たちが全員、その緑の波に飲まれて転がっていく。ゴロゴロゴロと。そしてあえなく全員が場外へ押し出される。
「これは生け垣とか作る時に使う枝葉が密生する植物なんだけど……こういう使い方をするのは初めてだよ」
一面が緑に覆われたフィールドに立っているのは私だけ。実況のコールはないけど、これで私は1回戦突破だよね?
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