追放ハーフエルフは南の島でスローライフ~魔術の使えぬ無能だとエルフの里を追放されましたが実は天才植物使いです。追放先のジャングルで建国したら、移住希望者が多すぎて困ってます~
第7話 村の子供たちを助けることになってしまったよ
第7話 村の子供たちを助けることになってしまったよ
縄で縛られた子供たちはなぜか小刻みに震えていた。どうしたのかな、私が1歩近づくと「きゃあっ!」と悲鳴が上がる。
……もしかして、怖がられているのかな?
「わ、私たちのことも……た、食べるんですか……?」
その子供たちの中で1番年長らしき少女が、いまにも泣きそうな震える声で訊いてくる。たぶん年齢は人間でいうところの12歳前後といったあたり。褐色の肌、黒い髪。目鼻立ちはくっきりとしている。他の子供たちも同じような姿だから、この現地の人間はみんなこんな姿なのだろう。
さて、どうやら私はこの子たちから無差別殺人鬼にでも見えているらしい。誤解は解いておかないと、今後のスローライフに支障が出そうだね。
「別にそんなつもりはないよ。ただ君たちを縛っている縄をほどいてあげようかなって思って。ほどく人も居なくなっちゃったから」
そう答えると、子供たちはまだ完全に私に気を許した感じはしなかったが、しかしそれ以上は私が近づいても悲鳴を上げるようなことはしなかった。
私はとりあえず子供たちの両手の縄をほどいてあげる。そうすれば腰の縄は自分でほどけるだろうからね。
「あ、ありがとうございました。助けていただいて」
全員を解放し終わると、年長の少女が私に深く頭を垂れてくる。
「さきほどは失礼なことを言ってしまい、すみません。気が動転していて……」
「いいよ、気にしてないし。あと別に感謝も要らないから。だって縄をほどくくらいのことは誰にだってできることでしょ?」
「え……? あ、いえ。感謝というのはあの男たちを、その……退治してくれたこともです」
「え? ああ、アレ?」
どうやら奴隷商たちをピンキーちゃんに食わせたことらしい。
……別に、助けたつもりは無かったんだけどなぁ。ただアイツらが私に危害を加えようとしてきたから返り討ちにしただけであって、私としてはなにもされなければそのまま立ち去ろうとすら思っていたところだった。
しかしそんなことをつゆ知らず、目の前の少女はひたすらに私へと頭を下げ続けてくる。
「本当に、本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません……!」
またお礼を言われてしまった。まあ言いたいというなら別に止めないけどさ。
「さて、と。私の用件は済んだからもう帰るよ。それじゃあね」
元々、森の木々がマナを乱していたからその原因を探るためにやってきたのだ。どうやらそれは人間が同族同士で虐殺を行っているという生物学的な異常性によって引き起こされたものだと分かったから、調査は完了。私は子供たちに背を向けて歩き出す、が。
「あ、あのっ!」
まだ用事でもあるのか、年長の少女が私を引き留めた。
「……なにかな?」
「助けて、くださいませんか……?」
「いや、無理」
私は即答した。だってそりゃそうだよ。
「私はいまこのジャングルで建国でもしようかなと思っているところなんだ。他のことに割いている時間なんてないもの」
「そこをどうか……お願いします! 私にできることならなんでもします!」
「なんでもと言われても。私って基本なんでも1人でできるからなぁ」
「お願いします! どうか、どうか……っ! 私の力じゃ、村の子たちを守っていけないから、お願いします……!」
少女はそう言って、私の前にひざまずいて、涙を流してこちらを見てくる。
……あー、村の子たちを守っていけないから、か。
縄から解放された子供たちを見る。そのすべてが目の前の少女よりも年下で、10歳未満の子ばかりだ。
「お願いしますっ! お願いしますっ……!」
「……はぁ。うん。分かった。分かった、分かったよ。だから泣かないで」
そんな風に私に
「あ、ありがとうございますっ! さきほど助けていただいたご恩も、これから助けていただくご恩も、必ず私の一生をかけてお返しします!」
「そんなに感謝を背負い込まれても困るんだけど……。でも助けると言っても本当にちょっとの間だけだよ?」
「はいっ! よろしくお願いします!」
年長の少女は、再び、地べたに頭がつくのではないかというほどに頭を下げた。
うーん、思いがけずに人間と関係を持ってしまったな。
人間はあさましく同じ過ちを繰り返す愚物だと、エルフの里ではそう言って人を自分たちよりも下に見るような文化があった。だからみんな人間とエルフのハーフである私を毛嫌いしていたわけで、当然私としても人間に対してそれほどいい印象は持っていない。
でもまあ、さっきの奴隷商みたいに自分の命惜しさにお願いをしてくるわけではなく、自分より年下の子供たちを守りたい一心でお願いをしてくる年長の少女の言葉には、少し心を動かされた。
「君、名前はなんていうの?」
「わ、私ですか? 私はククイ・モロキーといいます」
「私はラナテュール。よろしくね、ククイ」
「はっ、はいっ! よろしくお願いします、ラナテュールさん!」
こうして私は少しの間、この村の子供たちの面倒を見ることになったのだった。
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