シーン2-2:情報収集

 情報をかき集めんと東奔西走した結果、ゆるりが猫から得た情報に気になる者があった。

 都内の複数のFHセルが動きを見せているというものである。

「やっぱり奴らの仕業かよ」

 FH──ファルツ・ハーツ。レネゲイドの力を使って欲望のままにテロ行為を行うUGNの敵対組織の名に、焔は眉間にしわをよせる。それに対し、ゆるりは首を振った。

 さらにUGNの情報網により、次のことがわかる。


 UGN支部の一部が壊滅した事によるものと思われたが、

 どうやら、その前後にFH側も強襲によって壊滅させられたセルがあるようだ。

 ディアボロス[春日恭二]が関与していたセルも被害にあったという事で、

 春日恭二が行動を起こしているという情報もある。


「 FHも同時にやられてたのか」

 意外そうに叢太は口を開いた。

「てっきりFHの仕業かと思っていたが、襲撃されていたとなると別みてぇだな。うーん、なんでFHも襲う必要があったんだろうな」

 焔も首を傾げる。

「オーヴァードを有する組織はUGN、FH以外にもいくつか存在する、ゼノス、ギルド……あるいはそれ以外の勢力か……個人によるものか。もう少し情報が必要ね」

 門守が現状判明したことを、UGN日本支部に伝える。

 すると、最新──ではなくサポートが終了している古い型のノートパソコン(とはいえ、ハードウェアなどは最新のものに入れ替えられている)から大型ディスプレイにデザリング表示された男の姿があった。

 リヴァイアサン霧谷雄吾。彼こそが、現在のUGN日本支部支部長である。

「そうですか、UGN支部だけでなくFHも同時に襲撃していると……」

 霧谷は困ったように眉を下げるが、声の調子を緊迫させつつも落ち着かせている。

「実は此方でも懸念すべき情報を得ました。今回の件と類似した襲撃事件が、どうやら少し前から国外でも起きていたようです」

 霧谷は続ける。

「しかし、それについてはUGN本部が介入し情報規制されていた事が解りました」

「国外……?」

 行動範囲が広すぎると焔は疑問に思う。しかも、UGN──それもかなり上の上層部が、情報を日本支部に伝えていなかったのはなぜだ?

 ──いや、まだ判断ならねえよな。

「私は、これから本部に取次ぎ、事実の有無を確認します。 貴方方は引き続き、事件の調査を続行してください。どうか、よろしくお願いします」

 そうして霧谷は通信を切った。

「……きな臭くもなってきたな」

「あぁ、なんか裏がありそうだ」

 叢太と焔の言葉に、ゆるりが続ける。

「……にほんしぶ? は、なんで隠されてたの? 仲間はずれ?」

 確かに。何かまずいことでもあるんだろうか。

 焔が考えていると、門守が焔の背に手のひらを添える。

「上層部の件についてはリヴァイアサンに託しましょう。我々の目的は目前で起きている事を解決する事よ」

「ああ、わかった」

 支部長の言葉に、焔と全員が頷きます。

「さあ、都内の情報をもう一度洗いましょう。うまくいけばディアボロスやFH側からも何らかの情報を得られる可能性もある」


 ディアボロス──春日恭二。先の情報収集にも名が出たFHエージェント。UGNの天敵。

 ──ぜってぇ話してくれねえだろうから無理だけど、春日とっ捕まえて状況聞き出せたら、襲われた時間とかでちょっとは同一人物かどうかくらい分かりそうなんだけどな。

 焔の脳裏に、高笑いをしながら悪魔の右腕をかざす男の姿が過った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る