第4話 コーヒー豆とランジェリー
コーヒー豆専門店に入ると知らない豆の種類がずらりだ。ここはオリジナルブレンドにしょう。
「ご主人様、こちらのブルーマウンテンブレンドが飲みたいです」
うーん?
何か聞こえたが気のせいか?
「熱い夜の後で、ブルーマウンテンブレンドが飲みたいです」
やはり聞こえた。確かに『熱い』と、そして一番高いブルーマウンテンブレンドの商品名もだ。
「美穂さん、『熱い夜』とはいかに?」
「ご主人様のHっち、わたしに言わせるなんて」
やはり百合展開なのか?正に百合による百合の為の百合展開である。大体、わたしは家出しての極貧生活から脱却する為にこの柿石家に戻ったのだ。
このコーヒー豆を買うお金もあの父親から出ている。悲しいぞ、キャベツの千切りだけの生活は……。それがメイド付の生活になったのだ。専門店のオススメの豆で何が悪い。
「ご主人様……」
わたしが不機嫌でいると。つばきが「モカブレンドでいいのでは?」と言う。
間を取った形か……。
ここでわたしが決断を迫られるのか。
「よろしい、ブルーマウンテンブレンドを買おう」
「ご主人様!」
歓喜する美穂であった。どうせ、あの父親のお金だ、対価は支払っている。贅沢して何が悪い。これがつばきの策略でも構わない。
「美穂さん、もねちゃんは皆のモノですよ。『熱い夜』はまだ妄想で我慢しなさい」
あー百合展開は変わらすか。さて、コーヒー豆も買ったし帰るか。
「もねちゃん、見たい場所があるの」
ほーほ、せっかく駅前まで来たのだ寄って行くか。
「ランジェリーショップよ」
……。
今日は長く感じるなーと思いにふけるのであった。
そして、それは恐怖の時間であった。ランジェリーショップの中を散策していた。あれもこれも恥ずかしい下着ばかりである。
「もねちゃんも買おうよ」
「ささ、ご主人様も試着して」
なされるままに真紅のブラを試着する。かー恥ずかしい。ブラに胸がすっぽり収まると、真紅のブラは攻撃的なデザインだと改めて思う。
下も揃えないとダメか。これまた、真紅のショーツを身に着ける。
これでは妖女だ、怪しい術を使う妖女だ。試着室で戸惑っていると。つばきが試着室のカーテンを開く。
「み、み、見ないで……」
わたしの始めてが失われる気分であった。
よ、よ、よ……。
わたしの精神はボロボロになりかけていた。
「刺激的ね、食べちゃいたいわ。でも、これ以上は自制するわ」
良かった、つばきがカーテンを閉めてくれた。結局、真紅の下着を買う事になった。
「ご主人様、わたしはパープル系のランジェリーですよ」
「あら、わたしはブラックで統一したわ」
なんだ、この会話は聞いているだけで胃もたれがする。ここは純粋な乙女である事を強調せねば。
「ファミレスでパフェでも食べましょう」
「ご主人様はお子様ですね」
このメイド、かなり失礼な事を言う、確かに計画的に純粋な乙女を演出したが……。
「もねちゃんは甘い物が正義ですか。わたしは辛党です。早く甘党に調教されたいわ」
つばきは、かなり、偏った性癖と言えるな。イヤ、性癖と例えた時点で毒されている。
本当に真紅のランジェリーを着て妖女にでもなるか……。
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