第70話 竜鱗――ドラゴニック・スケイル
ドン――ッ!
重くて鈍い手ごたえが右の拳に返ってくる。
普通の敵であれば、これで俺の勝ちは決まっていた。
しかし俺は『セイクリッド・インパクト』を打ち込んだ後、即座に回避行動をとっていた。
その直後。
丸太のように巨大なドラグレリアの尻尾が轟音とともに振り抜かれ、さっきまで俺がいた場所を地面ごとえぐり取っていった。
「あっぶねぇ……!」
一瞬でも回避の判断が遅れていたら、俺は致命傷を被っていただろう。
「くくっ、やはり勇者殿じゃ!
続いて聞こえてくるのはドラグレリアの歓喜の声だった。
「お前こそ硬すぎるんだよ。なんだよその硬い鱗は。ヒビ一ついってないじゃねーか。ふざけてんのか?」
「くくくっ、
「うげっ、マジかよ……」
オリハルコンって言えば、『オーフェルマウス』にある最硬度を誇る超希少なレアメタルじゃないか。
「よって左様なへなちょこパンチでは、
俺のメイン必殺技である『セイクリッド・インパクト』は――へなちょこパンチと言われてしまったが――たとえ聖剣がなくとも中・上位の魔獣ですら一撃で消滅させることが可能な、大破壊力を秘めた攻撃だ。
事実、ドラグレリアが開幕早々に放ったドラゴンブレスも、完全に打ち消すことができた。
しかし伝説の希少金属オリハルコン並に硬いらしいドラグレリアの竜鱗――ドラゴニック・スケイルの前では、『セイクリッド・インパクト』ですらたいしたダメージは与えられないようだった。
ちなみに聖剣『ストレルカ』は、その希少なオリハルコンをさらに極限まで精製して純度を高めた、世界でたった一つしかない神性金属『オリハルコン・オネスト』でできている。
さらにそれを女神アテナイ神殿の祭壇に安置し、100年に渡って一度も途切れることなく祈りを捧げ続けたことで、女神アテナイの持つ神の力とほぼ同一の存在へと至ったのだとかなんとか。
「はぁ、やれやれ。分かっちゃいたけど、聖剣『ストレルカ』がないとやっぱ決定力に欠けるか」
「むぅ? なんじゃその言い方は? 最初に言い訳はせぬと言っておったはずじゃが? じゃが??」
「イチイチ独り言にツッコムなっての。ただ現状確認をしただけだろ。聖剣『ストレルカ』があろうがなかろうが、『絶対不敗の最強勇者』シュウヘイ=オダが負けるかよ」
「むふふ、ならばよし!」
俺の必殺の一撃を貰ってもピンピンしているドラグレリアは、俺の返答を聞くとさらにテンションをあげた様子で、再び猛然と襲い掛かってくる。
女神の加護を受け人類最強存在となった勇者。
最強種ドラゴン族の中でもさらに最強を自負する皇竜姫。
まずは軽い手合わせを終えた2大種族の頂点同士の、激烈なる接近戦が始まった――!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます