第69話 わずか3秒の刹那の攻防
目にも止まらぬ速さで、巨大な身体をぶつけるように突進してきたドラグレリアの体当たり。
「く――っ!」
即座にかわそうとするが、
「舐めるでないわ!」
ドラグレリアは猛烈な勢いでの突進中にもかかわらず、鋭角な進路変更を行うと、俺の回避した先へと突進の矛先を変えてくる――!
くっそ、慣性とか遠心力とか物理法則は完全に無視かよ!?
「こなくそ――ッ!」
距離的に回避を諦めた俺は一転、ガードを選択。
腰を落としてどっしりと構えると、両腕を顔の前に上げてボクシングのようなガードモーションを取る。
直後に、ドラグレリアの巨体がガードを固めた俺に突っ込んできた――!
ズドン――ッ!
まるで雷が落ちたかのような耳をつんざく激音と、ダンプカーに時速300キロで突っ込まれたような激烈な衝撃が俺を襲った。
あまりの衝撃にガードをしきれず、俺はコンクリートで弾んだスーパーボールのごとく跳ね飛ばされてしまう――!
リエナの授けてくれた高位の防御加護が、開幕早々たったの一撃で砕け散った。
だがその防御加護があったおかげで、俺は大したダメージを受けずに済む。
せいぜいガードした手がビリビリと痺れた程度だ。
俺は跳ね飛ばされた中空で、ひらりと身をひるがえすと体勢を立て直す。
そのまま足から軽やかに着地すると、だらりと両手を垂らし、軽く振って痺れを逃がした。
ここまで時間にしてわずか3秒ほどの一瞬の攻防だった。
「なんじゃなんじゃ? よもや『この程度』の速さも見切れぬのかの?」
俺を跳ね飛ばしたドラグレリアが、少し離れた位置で少し拍子抜けしたような声をあげながら、のそりと振り向く。
「そんなわけねーだろ。いきなりだったからちょっとミスっただけだ。『絶対不敗の最強勇者』が『この程度』でやられるかよ。舐めんなっての」
「むふふ、それを聞いて安心したのじゃ」
――とは言ったものの。
まさかここまで速いとはな。
しかも俺の回避行動を見てからの瞬時の軌道修正までお手の物とは、ほんと恐れ入るぜ。
ドラグレリアの高機動・飛行術式は、俺とリエナが事前に想定していたものを大きく上回っていた。
リエナの防御加護があったおかげでなんとか助かったが、今のでそれも失われてしまった。
さすがの俺も防御加護無しでアレが直撃すれば無事ではいられないだろう。
巨大な体躯のドラゴンが高速で体当たりすれば、それだけで超強大な質量兵器となるのだから。
「だがまぁ、だからといって対処できないってわけじゃないんでね。今度はこっちから行くぜ?」
俺は『
文化祭で腕相撲をした時にはパワー重視で割り振ったが、今度はスピードに大きく割り振ることでドラグレリアのスピードに対抗する。
「むっ、なんじゃと!?」
ドラグレリアが驚いた声をあげた時には、既に俺はその懐深くへと鋭く入り込んでいた――!
「どこを見てるんだ? 聖光解放! 『セイクリッド・インパクト』!!」
俺は瞬時の踏み込みからの流れるような動きで、がら空きになっているドラグレリアのボディに必殺の一撃を叩き込んだ――!
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