第13話 帰還勇者、リエナと1つのベッドで夜を共にする。

 学校からは特に何かあるわけでもなくそのまま帰宅した。


 あ、そういえば駅前のコンビニで制服を着崩した不良高校生が2人たむろしていて。


 リエナに色々説明している時にたまたま視線が合ったらやたらとガンをつけられたので、他人様に迷惑をかけないように軽く覇気を込めて睨み返してやったら、震えあがって逃げて行ったんだけど。


 まぁ特に大したことじゃあなかったな。


 異世界『オーフェルマウス』で魔王や魔獣と戦っていたのと比べたら、ナイフ一つ持っていない日本の不良にガンをつけられるのなんて可愛いもんだ。

 俺にとっては元気な仔猫と戯れるのとたいして変わりはしない。


 それはさておき。

 帰宅した後も、俺はリエナにこの世界の基本的なことを教えていった。


 リエナは基本的に100年に1人レベルで頭がいいので、最初は何を言っても驚いていたのが、今ではすっかり慣れてしまい。

 もうほとんど『オーフェルマウス』との違いを理解してしまったようだった。


 そして夜。

 リエナはこっそり俺の部屋へとやってきていた。


 俺と一緒に寝る気が満々だった。


 母さんからはまだ高校生だから節度を持てと言われていたはずなんだけど、それに関しては初日から守る気はないようだ。


「勇者様と一緒がいいんです……ちゃんとお母様と約束した通り、節度を持って一線は超えませんから……」


 薄手の可愛い猫さんパジャマを着て、切ない上目づかいでささやくように言われたら、そりゃあ俺も年頃の男の子なので、


「まぁ、一緒に寝るくらいはいいよな……? だって俺は異世界『オーフェルマウス』を救った勇者なんだし……(←最強の言い訳)」


 となってしまうわけで。

 

 というわけで。

 真っ暗な自室のベッドで俺はリエナと一緒に寝ることにした。



「えへへ~♡」


 横になって早々、リエナがえへえへと嬉しそうに笑いながらくっついてくる。

 柔らかい身体が俺の半身に押し付けられては、ぎゅむっと形を変えていった。


「おいリエナ、ちゃんと節度を持つんだぞ、節度を」

 一応やんわりと注意をしたものの、


「ちゃんと持ってますもーん」

 リエナはどこ吹く風で、今度はおでこをすりすりとこすりつけて甘えてくるのだ。


 正直メチャクチャ可愛くて困る。


 しかも、


「ちゅっ♡ ちゅっ♡」


 リエナは俺に抱き着きながら、首元にキスまでしてきた。

 リエナは何度も何度もチュッチュとキスを繰り返す。


 そしてついにキスは俺の首元から口へと移り――俺はリエナのキスを自然と受け入れていた。


 年頃の男女がお互いに好き合っているんだから、そりゃキスするくらいは当然だろう。


 そうでなくてもリエナとは5年間も一緒に魔王を倒す旅を続け、心と心を通わせてきた戦友なのだから。

 俺とリエナは心の深いところで真に分かり合い、強く繋がっているのだ。


「えへへ、キスしちゃいましたね♡ あの、嫌じゃなかったですか……?」


「ははっ、リエナにキスされて嫌なわけないだろ? むしろ嬉しかったよ」


「勇者様、大好きです……勇気を出してこの世界についてきて本当に良かった……」


「俺もこうやってリエナと一緒に居られて嬉しいよ。平和なこの世界なら、想いを胸にしまっておく必要もないしな」


「勇者様……ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡」


 感極まったように俺の名前(正確には名前じゃないんだけど)を呼ぶと、再び始まったリエナのキスの嵐。


 リエナは俺の色んな所に何度も何度もキスをしてきた。

 5年間の想いを全部伝えるようとしているかのように、リエナは何度も、何度も、想いのこもったキスをしてくる。


 俺もそんなリエナにキスをし返して、狭いベッドで俺たちは好き合う気持ちをこれでもかと伝え合ったのだった。


 ――だがしかし。


 そういった感情とは別に、異世界での5年の過酷な戦闘経験を経て超硬となった俺の鋼メンタルは、リエナにどれだけ可愛くえっちに甘えられても、決して崩れはしなかった。


 結局、強く抱き合いながら何度もキスをしても、「最後の一線」を越えることはなく。

 俺とリエナは幸せに包まれたまま、どちらからともなく眠りについたのだった――。

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