第111話 取引
「藍沢君、これなんだけど……」
部屋の隅に案内された俺の目の前にあるお目当ての品。
「えっ? このカラーボックス、まだ使ってるじゃないか」
極々普通なカラーボックスには本がぎっしりと詰まっていて、くれると言われても申し訳なくなって来る。
「二つともあげるから……その……これ組み立てて!」
壁際に立て掛けられた薄手の大きな段ボール箱を指差して仁科坂は俺にウインクして前屈みで手を合わせる。箱の表面には最近海外から鳴り物入りで進出して来た巨大家具企業のロゴが印刷されている。
黒船とうたわれた新品の組み立て家具に追いやられるお値段以上とうたわれる国内企業のカラーボックス。それでも俺には上等な品に思えてしまう。
「オーケー! タダで貰うのも悪いし。その話、乗った!」
プラスドライバーを手渡された俺は早速家具の組み立てに取り掛かる。
俺はスポーツも勉強も大して出来ないが、こういう作業は大の得意だったりする。大概の組み立て家具は箱絵だけで組立説明書を読まなくても作れてしまう、しかも短時間でだ。
物の数分で収納家具を組み立てた俺に、仁科坂が「凄い、天才なの藍沢君!」と背中にくっ付いて喜んだ。
うわっ! デカい……背中にムニュリと柔らかい胸の感触が二つ、これは今までに感じた事の無いボリューム。
「何かお礼しないと……」
いや、いま背中にお礼は貰ったんだけど……まだくれるのか?
「と、取り敢えず本を移そうか?」
「うん、そうだね? でもどこに家具置こうかな?」
仁科坂は広い部屋を見渡して場所を指し示した。
「ここ、いいかな?」
俺は出来上がったばかりの家具を持ち上げて所定の場所に置いた。
彼女は暫し腕組みをして一人納得したかのように首を縦に振る。
カラーボックスから本を取り出した俺は、本を整理したいと言う彼女の指示に従い床に積み重ねて行く。
本の重量が無くなった家具は容易に動くようになり、俺はカラーボックスを壁から離した。
「うわっ! 凄い埃。私、掃除機取って来る!」
廊下に出た彼女はゴソゴソと音を立てて掃除機を部屋に持って来たので俺はプラグを壁のコンセントに差し込んだ。
業務用の大きな掃除機、これくらいの大きさじゃないとこの豪邸では役に立たないか……。スイッチを入れると吸引力も凄まじい。俺は掃除機で床や壁、カラーボックスの裏側を掃除する。それを見ていた仁科坂が近づき「藍沢君、ここも」と指を差す。
俺がノズルを持ち上げた時、仁科坂の制服のスカートが掃除機に吸い込まれ、掃除機が唸り音を上げた。
「うわあああっ! ゴ、ゴメン!」
白いパンツが露わになり、正面に赤い小さなリボンが可愛く縫い付けられているのが見える。
「い、いやっ! だめぇ。と、止めてぇっ!」
スカートを必死に押さえる仁科坂のいやらしい声が部屋に響く。
俺はスカートをノズルから引き抜こうとしたが吸引力が強すぎて抜けない。
慌てた俺は手元のスイッチを触り、更に吸引力が上がる。
ゴーッっと苦しそうな音を立てる掃除機が彼女のスカートを更に吸い込む。
パンツを全開に見せる彼女の姿に動揺した俺は使い慣れない機械の主電源を探す。
「もうっ! 藍沢君、早く抜いてっ! 破れちゃう!」
コンセントからブラグを引き抜いた時、小さな火花が見えた。
ヒューンと徐々に静かになった掃除機は脱力したかの如く仁科坂のスカートを吸い込んだままノズルが垂れ下がった。
眉をヒクつかせ明らかに怒っている仁科坂は「早く抜いてくれない?」と俺を睨む。
「ゴメン……」
俺は急いでノズルを引っ張ったがスカートが奥まで吸い込まれていて容易には抜けない。
「あ、あれ?」
ゴソゴソともたつく俺に彼女は「早く!」と口を尖らせる。
「い、いや、ホントに抜けないんだ」
彼女の股間を目の前に俺は制服を強く引っ張る。
「嫌っ! 脱げちゃう!」
パンツを手のひらで隠す仁科坂、殆ど隠れていないのが逆にいやらしく見えてしまい俺の体に冷や汗が滲む。
「もう、貸して!」
彼女は自力でノズルを引き抜こうとしたが無理だと分かり「スカート脱ぐから後ろ向いてて!」と怒った口調を俺に浴びせる。
背を向けると背後でファスナーを下ろす音が聞こえ、箪笥を開閉する音も響く。
「あれ? 無い……。もう!」
生地の擦れる音が聞こえ、俺の想像を掻き立てる。振り向いたら下着姿かな? 勝手に彼女の下着姿を想像して居ても立っても居られなくなる。
振り向きたい衝動が頭をもたげた時、「いいよ」と俺に声が掛かる。
仁科坂はミニスカに白い制服のシャツを羽織り、裾は外に出ていた。
えっ? エッロっ! 何でそんな恰好するんだよ? 目のやり場に困るだろ。
大きな胸がテントの屋根のようにシャツを持ち上げ、お腹の下まで大きな空間を作りスカスカと涼し気で、肉付きのいい太ももがミニスカから大きく露出している。
ヤバっ! 俺は視線をエッチな場所に向けないように彼女の顔だけを眺めた。
「藍沢君、キレてごめんね? 恥ずかしくってつい……」
俯いた彼女は頬をピンク色に染め、チラチラと俺と視線を合わせる。
「ううん、全然だよ。俺こそゴメン」
「上も着替えるから、また後ろ向いてくれる?」
青いシャツを手に取った仁科坂は首を傾けて俺に同意を求める。
「ああ、勿論だよ」
俺は彼女に背を向けて床に座り、気を紛らわすようにノズルに詰まった制服を取り出そうと樹脂パーツを分解し始める。
埃まみれでしわしわになったスカートを回収した俺は生地が傷んでいないか裏返すと横から手が伸びてスカートを奪われた。
「何やってるの? 藍沢君?」
大きな胸の下に影を作り、青いポロシャツ姿で苦笑して俺を見降ろしている仁科坂は凹凸の豊かな体の後ろにスカートを隠す。
「藍沢君、私にして欲しい事ない? さっきのお礼に一つ願い事叶えて上げようか?」
「は……い?」
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