第25話 歓迎会
「カンパーイ」
皆で声を揃え、グラスを掲げる。
「いただきまーす!」
レオナが手を合わせて軽くお辞儀をした。
俺は真向かいに座るレオナの日本人離れした容姿の日本的な仕草に頬を緩める。
「どうしたの? 作也……。ニヤニヤして気持ち悪い」
「いや、ゴメン。レオナって一番そういう事しなさそうだから、つい……」
「あーっ! 見た目の話? そういうこと言われるのもう聞き飽きたからっ!」
グリーンの瞳で俺を睨み付け、プイッと顔を背けたレオナ。
「ゴメン……何かギャップが可愛かったから……」
俺の隣で花蓮は言った。
「私は憧れちゃうけどな、そんなハーフ顔。しかも金髪で足も長くてスタイルも抜群だし」
俺の対角線に座る千里かレオナに聞いた。
「ご両親のどちらかが外国の方なんですか?」
千里はいつもは俺の真向かいの席、そこにレオナが座っているので違和感が凄い。
「私のお母さんはイタリア出身だよ」
花蓮が一人で笑った、それをレオナはキョトンとして眺めている。
「ごめんレオナ! ママじゃ無くてしてお母さんって……やっぱり似合わないよ!」
「もう、花蓮まで! あーあ、やっぱ無理か……。私ね、見た目外国人なの凄いコンプレックスでどうしたら日本人になれるかって色々考えてママって呼んでたのも辞めたんだだよ……」
「俺はレオナはレオナのままでいいと思うけどな」
「何それ?」
「見た目は変えられない、だけどその姿はレオナの強みだろ? ひと目観たら忘れないし、キャラは立ってるし……そういうのはきっと将来プラスになると思うよ」
千里は言った。
「そうですよ、レオナさん素敵です。私なんか和風人間過ぎて……」
それを聞いた花蓮が唐揚げを摘んだ箸をビシッと千里に向けて睨み付ける。
「アンタがそれ言う? めちゃくちゃスタイル良いくせに! その胸と身長少し分けてほしいくらいよ!」
俺は花蓮の頭にポンと手を乗せて言った。
「そっか? 花蓮は小さいから良いんだよ」
「作っ! それ、褒めてるつもり?」
眉間に皺を寄せ、俺の手を払いのけてグイッと体を寄せる花蓮。
褒めてるって! 逆に花蓮がデカかったら周りは花蓮に圧倒されるだろ、性格がうるさいから体は小さくて良いんだよ、それが絶妙なバランスなのが分からないのか?
3人とも誰もが羨むであろう容姿を持ちながら悩み事は尽きないらしい、産まれただけで、得をした事がわからないとは……何とも贅沢な奴らだ。
「これ美味しーっ!」
レオナが俺が作ったサラダに感嘆の声を上げた。
「それは作クンが作ったんですよ」
千里は自分が褒められたかの様に胸を張って答えた。
「そうなの? 素揚げしたゴボウが入ってるとか、手込んでない?」
レオナは手が止まらなくなったみたいでサラダの皿と口の間を箸で何往復もしている。
俺は料理を褒められて悪い気はしなかったが本当の事をバラした。
「そうでも無いぞ、唐揚げの油が鍋に残ってたから刻んでブッ込んだだけだよ」
「へぇー、そうなんだ……。でもそういうのって思いつかないよ」
「俺の料理は如何に簡単に作れるかに主眼を置いているからな、でもこんなもんは毎日料理作ってたら半年で身につく発想だよ」
「私も作クンの発想力にはいつも驚かされてます、何か雑だけど美味しいの作るから」
「雑は余計だろ?」
皆は笑い声を上げた。
花蓮が聞いた。
「他の料理は千里っちが作ったの?」
「はい、今日は少し豪華にしてみました。お祝いですし……」
「ねえ、千里っち。私も料理上手くなりたいから毎日ここに来ていい?」
「はぁ、別に構いませんけど私と作クンは一日置きに交代でご飯作ってますから毎日来られても……」
千里は箸を止め、俺とチラッと目を合わせて少し困った顔をした。
「じゃあ、作のも見学させて? ね、いいでしょ?」
俺に体を向けた花蓮は首を傾げて同意を求める。
「別に見るのはいいけどそんな参考になる物を毎日作ってる訳じゃ無いし、テキトーな食事もしょっちゅうだから毎日来ても意味ねーよ」
俺は素っ気なく答えてスープのニンジンを口へ運んだ。
「なっ! 迷惑なの? 作っ!」
「ああ、迷惑だね。ご馳走作ってる訳じゃ無いし、作る時間もマチマチだからな。そんなに料理上手くなりたいなら自分の母親に弟子入りするか料理教室にでも通えばいいだろ?」
「あっそ! バカ作」
花蓮は口を尖らせ、ご飯を口にかっ込んだ。
花蓮は料理を口実に家に来たいだけだろ、そんなに毎日来られたら俺と千里の気が休まらない。まあ、毎日来たところで直ぐに飽きてそこのソファーに寝っ転がっている姿が目に浮かぶしな。
その後千里と花蓮のレオナへのインタビューが続き食卓は和んだ雰囲気で満たされた。
上辺だけは盛り上がったレオナの歓迎会、並べられたおかずは綺麗に無くなり、みんな満足そうな顔をしている。
「ちょっと早いけどあれ食べない? 私、8時頃には帰らなきゃならないし」
花蓮がローテーブルの上に置かれた白い紙箱を食卓から指差した。
「やったー! 食べたい食べたいっ!」
レオナがはしゃいで立ち上がりソファーに移動して皆に手招きをする。
花蓮と千里は立ち上がりソファーに近寄って、レオナが開こうとしている箱に注目する。
「じゃーん!」と声を上げてレオナが箱を開くと、千里は歓声を上げて食卓から見ていた俺を呼びよせた。
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