第3話 少年に憧れた金糸雀

数日経って、お屋敷にいたずらっ子の少年が遊びに来たある日、金色の羽を持つ金糸雀が言いました。

「私はあの元気に走り回る少年を近くで見たい。こんな籠の中ではなく、もっと近くで、直接。」


色の無い金糸雀は言いました。

「でも、子供っていうものは何でもすぐに壊してしまうんだろ?僕らを握り殺してしまうかもしれないよ?」


それでもやはり、金の金糸雀は少年の傍に行きたくて仕方ありませんでした。


ある日、少年が主人の目を盗み、籠から金の金糸雀を連れ出してしまいました。


金の金糸雀は嬉しくて仕方ありませんでした。あれほど会いたかった少年が今、あれほど触れたかった手のひらで自分を掴み、連れ出し、輝く瞳で羽を見つめているのですから。


と、その時


金糸雀を連れ出された主人の怒鳴り声が館中に響きました。その瞬間、少年の体が一気に強ばりました。そして、少年は自分の手元を見て金糸雀がぐったりしていることに気付くのでした。


金の金糸雀は憧れていた少年によって、永遠に籠から連れ出されたのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある金糸雀の話 士田 蚕 @ningentteiina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る