報いを受けなさいな。
「お、お前は何者だっ!!」
「は? お前?」
「い、いえ、あ、あなた様は一体……」
「あら、あなた達は、《女神の化身》を召喚したんじゃなかったのかしら?」
「ま、まさかっ!!」
「なに? 自分達で召喚しといて、マジもんの女神が出て来たら驚くの? おかしくない? それとも、馬鹿なの?」
全く、ひとが《別の世界》のヘルプで留守にした、たったの数百年程度で、この世界の人間がこんな愚か極まりないことをしているとは、夢にも思わないじゃない。
オマケに、自分でも体験することになって・・・
「でっ、ではっ、あなた様は本物の女神様であらせられるとっ!?」
興奮したような声が響き、なぜか喝采が上がる。
「女神様が陛下のお子を、次期国王を産んでくださるとは、この国も安泰だ!」
「は? なに言ってるの? 馬鹿なの? わたしは最初に言ったわよね? 初対面の人間に身を任せる程、貞操観念も倫理観も低くないって」
「そ、それは、はい。そ、その、もしも陛下のことがどうしてもお気に召さないのでしたら、他の王族の方との婚姻は如何でしょうか? 無論、お互いを知り合う機会と時間を設けますし、選ぶ権利は女神様にお与えしますので」
「・・・馬鹿なの?」
あまりの愚かしさに、同じ言葉しか出て来ない。
「わたし、憤慨しているのよ? なぜ、わたしが見知らぬ人間の子を産まないといけないの? そもそも、なぜわたしがこの国に留まる前提で話を進めているの? 《女神の化身》として召喚した相手へ対し、理不尽を押し付け、その自由意志を蔑ろにし、虐げるだなんて、とんだ不遜じゃない? この国が、神に対しての敬意を持ち合わせていないことは、今までの待遇で十二分に理解したわ」
「そ、そのようなことは決してっ!!」
「ふふっ、その態度が示しているじゃない。さて、あのクズ男は
まぁ、精神の方まで無傷・・・とはいかないかもしれないけどね? でも、それってあのクズがわたしへしようとしたのと似たような仕打ちだし。
自業自得なんじゃないかしら?
傷付けるのなら、傷付けられる覚悟を。
ああ、いえ。そうじゃないわね。わたしより以前に、この国に女神の化身だとして召喚された、《他の世界の女性達》に比べれば、とても温情に溢れている処置と思う。
だって、
・・・これじゃあ、この国に虐げられた《彼女達》への償いとするのは生ぬるいかしら?
《彼女達》の付けられた傷は、とてもとても深い。身体の傷を無かったことにして、虐げられた記憶を消して、幸せになれるように! と加護を付与して元の世界へと還したとしても。《この世界の人間》が《彼女達》へとした仕打ちが無かったことにはならない。
「この世界に
この世界の存在に、異世界からの召喚魔法発動を禁じ、意志を以て発動させようとした場合は、発動者が絶命するように。そのように、《この世界の
そして、償還・・・《異世界からの者》を、《元いた世界》へと『
まぁ、《この世界の存在》に召喚魔法を禁じさせたとしても、なにかの拍子に《別の世界》から落ちて来たり、迷い込んだりする存在が稀にあるのよね。
「異世界からの迷い人は丁重に扱いなさい。相手に害意や殺意がある場合には、その限りではないけれど。とりあえず、召喚魔法を使用した年月分、この国から神の加護を取り上げるから」
「へ?」
「魔術の発動、農作物の育ち、病害虫の発生、疫病の発生、魔獣の発生。その他諸々に対する付与、抑制の加護や祝福が、これから一切無くなるから覚悟なさい。報いを受けなさいな」
それじゃあ、がんばって? と、わたしは一旦神界へ戻ることにした。
それから、数日が経って――――
あのクズ男ともう一人が《この世界》に無事戻された。
やっぱり、
なにやら、クズは男の存在にやたら怯えるようになったとか、幼児退行してまともな話ができなくなったと聞いたけど・・・これで、『異世界に召喚されて理不尽な目に遭った女性達』の気持ちを少しはわかっるようになったと思う。
そして、あのクズ男の次に国王になった人間は、クズ男の様子を見て、わたしの決めた《世界の理》に対して、青ざめた顔で快く同意してくれた。
「女神様のお心のままに。我らはその裁定に従い、我が国の罪を償わせて頂きます」
とのこと。話のわかる子でよかったわ。
――――さて、数百年放置していたことだし。
他にも愚かなことをしている国がないか、目を光らせなきゃ。
彼も、『いつでも大歓迎よ♡』と言ってくれてることだし。懲罰にもなって、お友達とも友情を深めることができる上、《世界間》の平穏にも貢献できる。これぞまさに、一石三鳥ね♥
さ、お仕事お仕事♪
――おしまい――
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