129 その14 ~遠い地からの侵略 その2~
マウンテリバー王国、サンセスタ王国、チューザー共和国を擁するミラシア大陸…その他にも幾つかの小国も存在するが、公にはその3国が支配されている大陸である。
人類守りの
そして…魔界ゲートから魔族の軍勢が侵攻を開始…僅か半月でサンセスタが陥落。マウンテリバーは既に滅んでおり、残存したダークエルフたちは封印状態で(抜け道はあるものの、道は細く大人数の移動には向かず)出られず…また数の暴力には勝てないだろうと傍観を決め込む。そして…チューザー共和国は…新生魔界ゲート誕生から僅か3箇月でその魔の手に依って墜とされたのだった。
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- 新大陸ハケーン! -
「ミラシア大陸は魔大陸って名前を変えたってさ」
「ホーン…」
現在、シャーリーは本体は戻っており、ミラシア大陸改め、魔大陸には妹たち3体が
「…それはいいんだけど、あたし以外に聞こえないとか…どんだけ特殊な細工したんだか…」
「ま、まぁ…姉妹だからできたんだよ…」
シャーリーの妹たちは共感部分があり、念話に関してはシャーリーしか受信できなくなっている。これにより仮に傍受できたとしても、
尚、派遣した妹ちゃんたちはコアを細工して暗号・複合機能を持たせ、シャーリー自身はアクセサリーに暗号・複合用の回路を埋め込んで済ませてある。シャーリーは手元に居るからアクセで済ませられたが、妹ちゃんたちは下手にアクセサリーで持たせてた場合、
・
・
『アーリー、異常無し!』
『チャーリー、こちらも異常無し!』
『プーリー、異常無し…』
今日も定期連絡が入っているらしい。シャーリーにしか聞こえない念話が伝わっているようだ。ちなみに…妹ちゃんたちの命名はシャーリー本人がやっていて妹ちゃんたちに異論が無ければそのまま受け入れているようだ。僕には派遣されている3人しか聞かされてないのだけど…
(一応見た目の性別は女性の筈だけど、何故男性名?…しかも後半が「~リー」に
まぁいいやと気を取り直して船の現在位置を確認する。海図と空に見える星座からすると、こちらからすればだけど…新大陸までそろそろ100km圏内だということだ。
(肉眼じゃ見えないけど…魔眼なら見えるかな?)
流石に100kmも離れてると見えない気はするけど…と魔眼の遠見の能力を発動して船の外に視線を這わして行く…途中、入浴してる誰かが見えた気がするが…取り合えずスルー。見えなかった、僕には何も見えなかったんだ!
- ドラゴン?…襲来!? -
「…う~ん、やっぱし何も見えない…か」
ギリギリまで視線を飛ばすけど、見えるのは暗い海原と外洋なので静か…といってもそこそこ高い波とその波間に見える向こう側の空。そして…
「鳥?…にしちゃでかいような…」
視線をその空飛ぶ存在をロックオンして精査する。
「ロック鳥…にしちゃ羽毛が無いな。鳥にしたら胴体は太いし…角なんて生えてたっけ?」
コウモリのような翼に手足が4本揃ってて長い尻尾が生えてて…体表は鱗でツルツルゴツゴツで…口には牙が生えそろっていて…まるで…
「まるで…ドラゴン…って、まさか…」
視界をこちらに向かって飛ぶ、その対象に合わせて後退させていたんだけど…みるみる内にこちらに迫ってて…
(やべぇっ!?)
「総員、迎撃準備!!!」
『ドラゴンが来た!かなりでかい!総員迎撃準備…防御優先で!!!』
取り敢えずその場にいるレムとナルとシャーリーに大声でいきなり怒鳴り、念話でも現状報告と防衛命令を出す。
『『『了解しました!!!』』』
一斉に異口同音に命令を拝命したと返答があり、警報音代わりの鐘を鳴らす音が響き、外洋船は
『
『竜骨、並びに船体に
『
『
各種防御系魔法を簡易にした術式…所謂、
魔法はその血の資格を持つ者が発動させられる現象だが…魔術は魔力を持つ者なら誰でも発動させられる技術だ。学校などで習えば誰でも発動させられる魔法が魔術といえば理解し易いだろうか?
ゴーレム娘たちが行使しているのは名前は兎も角、全て魔術だ。魔力は所持していても、改めてその身に仕込まれなければ「魔法」は発動させられない。故に、念話などの最初から使えるスキルは魔法であり、現在船体に付与している魔法的なそれは…全て魔術だ。そんな訳で、レムの行使する土属性魔法は魔法であり、シャーリーの風属性魔法も魔法ということだ(汎用ゴーレム娘たちは念話のみ魔法で、他は後付けで覚えた魔術という訳だ)
※魔法は熟練度に依り効果が上昇したり消費魔力が減少したりと成長要因があるが、魔術は効果や消費魔力は一定している。熟練度に依り消費魔力が僅かに減ることはあっても、効果そのものは一定で余り変わることはない(魔術式を改良すれば変化はあるかも知れない)…そして、何故「生活魔法」しか使えないザックがレムとシャーリーに「属性魔法」を植え付けることができたか?…それは、「生活魔法」が使えるからこそ。それが理由だ…
・
・
「
脳裏に外洋船を起点としたマップが表示されるが…周囲は海しかないので少々大きい光点が1つと、徐々に接近してくる赤い光点…敵対者のマークが表示される。
『敵のドラゴン?…は、後3分程で接敵する。総員、衝撃に備えてくれ!』
流石に魔眼で視えるのはシルエットだけであり、具体的な大きさは…尻尾の先から頭まで、この外洋船とどっこいくらいじゃないか?…という程度しかわからない。但し、この外洋船も全長が凡そ50m程あるが…ドラゴンと戦うとなると心許ないだろう。一応、各種バフで強化はしていてもひっくり返されてしまえば沈没待った無し!…である。
〈GURRRRU…AN-GYAAAA!!〉
何となくイントネーションが外国育ち?…といった様相の咆哮が聞こえてくる。小窓を開いてみれば…暗い空の中、ドラゴン?らしきシルエットが…
「って、早っ!?」
3分の猶予があると見せ掛け、一気に加速して迫ったらしい。空中に停止する為にホバリングしているが停止の余波の波に翻弄され、外洋船は上下左右に激しく
「うっ…酔いそう…」
そのまま突っ立っていると脳みそがいい感じにシェイクされて気持ち悪くなってきたので、軽いジャンプを続行しつつ気分が落ち着くのを待っていると…
〈GURRRRU…〉
何の反応もしないのがお気に召さなかったのか…ドラゴンは口を
ぱかっ…
と開き、いきなりブレス攻撃をしてきた!!
ごぉ~~~っ!!
『ドラゴンブレス攻撃が来ます!』
『右舷に命中!』
『反射術式、消し飛びました!!』
『魔法防御術式、早くも悲鳴を上げてます!』
左舷弾幕薄いよ!何やってんの!?…という台詞が脳裏に浮かんだ気がしたけど、右舷に被弾してるから関係無いよね?…と思う。まぁ…すぐ忘れることとなるのだが…
(えっと…此処か)
既に働いてる
(魔術術式じゃ流石に無理だったか…)
という訳で、習得してない魔法版の反射は使えないので(そもそも生活魔法には戦闘向けの魔法は無い…無理に使えば使えない訳ではないけど…)ドラゴンが居る場所から攻撃を受けそうな場所にだけ、
(
を掛けておく。本来は盾を使う時に行使する
※魔法版の
〈AN-GYAAAAA!!〉
と、ドラゴンがブレスじゃ効き目が薄いと判断したのか…突進して来たが…
ずがんっ!!
〈GYAAAAA!?〉
船体の右舷の壁に頭から突貫して来たドラゴンは、衝突する寸前に船体から伸びて来た不可視の杭に鼻先を嫌!?…って程に衝突し、鼻血を撒き散らしながらびっくりする程の勢いで吹っ飛ばされていった…
『えっ…!?』
『…何が起きたの?』
『ど…ドラゴンが鼻血を吹き上げながら…』
『吹っ飛んでった?』
『…ギャグ?』
くすくすと笑い声が、次第に大声で笑い転げるような音が混じり、僅かな振動と共に…恐らくは床をバンバンと叩いたりしてるんだろう…つまり、全員あのドラゴンの醜態に腹を抱えて笑い転げてる訳で…
『…おい。船を壊すなよ?』
取り敢えず、まだ戦闘は終わってないんだし、油断するなよ?…という意味も込めてゴーレム娘たちに喝を入れたつもりなのだが…
『『『わ…わかりまし…ぶふぉっ!www』』』
…と、余り効果は無かったようだ…ぁぅ。
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初のドラゴン戦がこんな緊張感の無い状況になるとは…神も予想外だっただろう…ぅん。
備考:生活魔法の神…ドゥグオ=アム=タキゥス…いえ、アムさん「ぷ…うぷぷ…ぶふぉっ…」
※偶々戦闘シーンを見てて鼻血を撒き散らしながら吹っ飛ぶ
リピート再生しては転げて笑ってるし…(苦笑)
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