124 その9 ~魔境の守護神創造~

ザックがミラシア大陸の地図を探知すると…次なる魔界ゲート候補に元ドライールドの地…緑の魔境が示された。そこはユグドラシル…いや、ユグとルドランが融合して産まれてしまった人が存在できない魔境だ…

魔素が濃く、太陽の陽の光が届かない密林は魔界と酷似しており、仮に魔界ゲートが開いてしまえば移住してきた魔族や魔物の楽園と化してしまうだろう…恐らくは。それを危惧したザックは従者ゴーレムたちを引き連れて、封印しようと元ドライールドの地へと現れたのだった…

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- 緑の魔境と漆黒の大地 -


「…まだ無事のようだけど」


探知魔法にマロンとモンブランの反応はある。あるが…奥に行くに従ってその反応が不安定になる…時折、光点にノイズが走ったように不意に消えかかったり完全に消えたりしている。既に念話連絡はできなくなっており、無理に行おうとしてもノイズが聞こえるだけとなっている…


「あ…」


完全に2人の反応…光点がロストし、代わりにその更に奥から巨大な光点が見えた。否、その光点が覆い被さるようになっていて、2人の光点が見えなくなっているのかも知れない…


「これは…まさか…」


ユグ…いや、ユグドランか?


「ぐ…?」


その時、いきなり念話ネットワークがこじ開けられるような感覚がザックを襲う。


お兄ちゃん?


「その声…ユグか?」


うん!


「…そっか。元気だったか?」


まぁ~…だいたい元気だよ!


「そっか…」


いきなり独り言を喋り出したザックに、従者ゴーレム娘たちがひそひそと喋り出す。


「うちのマスターは…気が触れてしまったのではないか?」


…と。いやいや…つか、この会話、聞き取れてないのか?



取り敢えず、ゴーレム娘たちに事情を説明しつつ…ユグとの会話も進めていく。


そこで得られた情報とは…



◎現在の魔境の状況は安定しており、放置していても暴走することはない

◎代替の依り代を置いておけば、ユグとルドランが分離してマスターである僕の元へ戻っても問題ない

◎最近、集まった魔素の影響で森が本当の魔境といえる程に激変している

◎地下の龍脈(ユグは魔力の流れとでしか認識してない)が集中するようになり、特異点(物凄く力が集まっているとでしか(以下略))と化している

◎安定はしているが、上記の状況により…強力な依り代…制御管理体を置くことを推奨すると、ルドランにいわれているようだ

◎引き続きユグドラシルとして管理していても構わないが、そろそろユグが不満爆発するかも知れないと…(え、それって大丈夫なのか?)



「…ということらしい」


偵察からマロンとモンブランも戻って来たので護衛ゴーレム娘たちにも集まって貰い、意見を貰おうと現状を説明していたザック。一応、周辺偵察で2名程此処を離れているが…


ここでじっとしてるの飽きたし、勿論代りを用意してくれるよねっ!?


脅迫…という程ではないが、その実力から物凄い圧を念話を介して迫るユグ。陰ではルドランが無理強いするなと突っ込んでいる気はするが…。関係無いが、ユグは精神的に少しだけ成長したのだろうか?…微妙に話し方が変わった気がする。


「お話しから察すると、そのユグさんは…マスターの従者の1人だったのですよね?」


「え?…まぁ、そうなるな」


「でも、何故こんな所に魔境の核になっているのでしょうか?」


「あ~…話すと長くなるが…いや、そうでもないか?」


ガクっとずっこけるゴーレム娘たち。その辺の情報は確か共有されている筈だ。別に封印された機密情報という訳でもなく…念話を介して統括体ナルにタグ情報を教えて貰うよう伝えると…泣きそうになってる者と憤怒の顔になってる者と余り表情が変わってない者に別れた…いや、何なの?これ…



「「「ユグさんの代わりの制御管理体を!!」」」


…という意見が大多数となった今…僕たちは魔境の中へと向かって歩いている。一応、制御管理体をストレージの内部で創ることは決定したのだけど、その素材はユグの居る辺りの木々を使った方がいいだろうということになった。


なので、ユグドラシルの屹立している…いや、それは山を表現する言葉だっていいたいんだろうけど…ユグドランは聞いた所に依ると、山よりでかいそうなので問題はなさそうだし…いや、それはどうでもいいか。



- 魔境中心部へ… -


「此処から先が?」


「「はい…」」


マロンとモンブランがいうには、此処から先がユグドラン本体…の在る麓らしい。この先に踏み込むと、探知魔法でユグドランの光点に埋もれてしまって2人をロストしてしまった…という訳だ。


「本当に山みたいなんだな…」


取り敢えず、制御管理体の素材である木を集めることにした。とはいっても…


「ダメです。硬過ぎて並みの剣では切れません…」


「ダメです!…硬過ぎて並みの斧でも伐採できません!!」


「ダメです!!…硬過ぎて並みの攻撃魔法でも傷すら付きません!!!」


う~む…ダメ出し3連打は何処ぞのちゅ~ば~を彷彿…はっ、何かが脳裏を過った気がするが…木のせいか?


「並みがダメなら大盛りで…いや、よく斬れる獲物を使えばいいんじゃないか?」


取り敢えず、疑似ミスリルの剣を1振り創造して手近なゴーレム娘(折れた並みの剣を持ってた子)に渡して切って貰うと…


ばきぃ~ん!!………


「「「は?」」」


折れた。う~ん…矢張り素材を鋼鉄から疑似ミスリルに交換しただけじゃダメなんだろう…


(木を伐採するのに適した道具…)


そう思いながらストレージの錬金魔方陣にサンフィールド産の砂を投入。砂は物質変換されて疑似オリハルコンに変換され、見た事のない設計図が構築され、それに基づいて大振りの…一振りの大剣を創造する。それは、刀身の周辺を回転する小さなやいばで敵を切り裂く…まるで刃の鎖を回転させて敵を切り裂く新たな武器にも見える。


「…ラウンドチェーンソード?」


木を切ることにも、敵を切り裂くことにも使える…新たな武器伐採具の誕生の瞬間だった!



まずは1人に装備して貰い、木を1本切って貰う。結果は…


「やった!やりましたマスター!!」


大喜びで太く大きな見事な黒い木を切り倒すゴーレム娘。多少時間は掛かったものの、最後まで刃こぼれも起こさずに


ずどぉ~んっ!


…と、漆黒の大木を切り倒せたのだった。尚、木は幅3mはあろうかという大木で、たったの数箇月で成長したとは思えない程のものだった…


「大丈夫そう…だな」


という訳で、下手な斧より木を切るに適したRCソードを人数分創造して貸与する。専用の収納用アイテムボックス(鞘型)も添付して…勿論、最初の一振りにも用意した。


そのアイテムボックス(鞘型)に戻している間は失った耐久値を回復し、刀身の保護能力も付与するようになっている。使い過ぎて耐久値が半分を下回れば警告を装備者のみに伝える能力もある。そして自身の稼働用の魔力も周囲の空気中から魔素を吸収する機能もあり、余程酷使しなければ半永久的に稼働することも可能だ。


暫くの間、漆黒の大木を切り倒す音が響く中…制御管理体の仕様を考えているザック。


基本は設置型で自律思考は最低限にする。


魔境の管理と制御を司る為の仕様を煮詰め…魔界ゲートの発生を抑止し、魔境に入ろうとする自殺願望の悪用しようとする持ち主を寄せ付けぬようにし、中心部と中間部と最外部にも障壁を発生させて物理的にも霊的にも魔法的にも侵入不可とする。


「そんな複合的な障壁なんて聞いたことないですが…」


そりゃ1つの魔導具じゃ1種類の障壁しか発生させられないという常識しかないからだろう。


「まぁ普通はそうだよね?」


だが、制御管理体は1つでも、中で用意する魔術回路は1つではない。山ほど木を伐り出して貰ってるのはその為だ…


ふと、後ろを振り向くと…疲れたぁ~!…とヘバっている者が半分程。まだノルマは6割と少しだが…制御管理体本体だけなら問題無く創れるだろう。残りは魔境周辺の為の素材なので、後からでも問題は無い。


「じゃ…収納!!」


積み上げられた漆黒の大木たちは…ザックの指輪型のストレージへと全て吸い込まれる。それでも…収容許容量の1%にも満たず…重量でいえば、320トン余りが増えたに過ぎなかった…


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100Mトン=1億トン中320トンとすると、0.0000032%なので1%どころか…となりますw


備考:山のようなユグドランが居た場所に設置する制御管理体なので、それじゃ足りないんじゃ?…と思われそうですが、でかければ何でもいいって訳ではないので!(残りの4割で防衛機構を創造する予定)

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