119 その4 ~閑話「ジェリコ皇女の苦悩?」~

封印を乗り越えて転移するNRSノースリバーサイド救援部隊。そして生き残りのダークエルフ族と接触する。拠点を築き、本格的な活動は明日からとなるがその前に皇帝と謁見して色々と擦り合わせを行う必要があるようだ。

そしてカメラはザックたちに切り替わる…(比喩であり、本当にカメラで撮影してる訳ではありませぬw)…そしてカメラはジェリコ皇女に移るのだった!

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- 空気?…いいえ、影が薄いだけです(それもどうかと…) -


わたくしはジェリコ。ダークエルフ族の皇女であり、ジェンドゥ皇帝の一人娘でもあります。


住んでいた地は魔界であり、帝王や皇女と呼ばれていても皆が想像してるような広大な地ではなく…辛うじて種族を維持できる程度の集落に部族を分けて住まっていた為、唯でさえ少ない人数となっていたダークエルフ族を維持できる限界に近くまで減らしてしまっている。


「まぁ、それでも何とか生き延びていたのだけど…」


10数年に1度、別集落から男女の何れかを交換して違う血を受け入れ、子を儲けていたので辛うじて種として延命を続けていたのだけど…それも限界に近付いている。種としての総数が少ないので近親と大して変わらない今…緩やかにダークエルフという種は滅びへと近付いているのだ…流石に今すぐに障害児が生まれている訳ではないが…否、表立って知らされてないだけで、既にそういう者が生まれているのではないか?…という噂は聞いたことがある。


(親子や兄妹姉弟などで子を儲けるとその可能性が高いと聞くが…流石に父親となんて…)


ないない…とジェリコは顔を赤らめて手を振る。その様子を見ていた護衛ゴーレム娘が首を傾げてこちらを見ていたので、


「なっ!…何でも、ないのよ?」


と慌てていい繕うが、


「はぁ…」


と、無関心に反応していた。いや!…普通そこは


「何考えてんですか?」


って突っ込む所でしょう!…いえ、突っ込まれても困りますけど…


と、まぁ…そんな暇潰しの妄想をしては訝しむ顔で覗かれては自爆する毎日…これも、将来の妻を放置するザック様が悪いのです!…んもう!!



- その頃のザック -


「は…は…ぶぇくしょおっ!!」


「…また盛大に…花粉症?」


「コロ●だったりw」


「んな訳あるかっ!!」


…と、弄られていたw


※無論、普通に「風邪?」と突っ込まれただけで、花粉症とか●ロナは空耳であるw



- ジェリコ皇女のその後 -


流石に昼間は妄想たくまし過ぎた…でも、暇過ぎるのも何だかなと思う。


「旦那様はまだ危険な場所に居るのかしら?」


「そうですね…」


護衛目の前の子は確か…ナナミNo.073といったかしら。ゴーレム馬に乗って遊撃をやってる子がムツミNo.623で御者はヨナNo.047


ナナミとヨナは同じ中隊の…確か別の小隊に在籍してたって聞いたわね。よく一緒に行動するようになったから仲良くなったとか…


逆にムツミは最近創られた最新型で経験は少ないけど…ゴーレムは蓄積情報を共有できるから余り関係無いとか…っていうか、こんな機密情報っぽいの、新参者の私に漏らしてもいいのでしょうか?…信頼されてると聞けば嬉しいですけど…少しザルのような…心配ですね。


「ですが、安全になりましたら呼ばれると思いますので。今暫く不便を強いるかも知れませんが…」


「え、えぇ…その辺は旦那様に聞いておりますので…ごめんなさいね?」


「いえ…御理解されているのであれば…問題はありません」


ちなみに旦那様と呼んでいるけど…まだ皇帝お父様から押し付けられただけの、婚約もしっかりしていない間柄なのだけど…


「旦那と呼び続けていれば、それが当然となる。情が湧けば…な?」


といわれ、それに従ってるだけだ。個人的には新たな血を受け入れ、子孫繁栄の為に…とは思っているし理解してるんだけど…人間の子供にしか見えない彼を…私は本当に受け入れられるのか…自信は無い。


(167歳か…彼は確か17歳になったっていってたっけ…)


167歳というのはダークエルフの用いている暦での数え年だ。一応、人間の暦も同じくらいって聞いてるけど…単純にエルフ族と同じ身体のダークエルフ族は一定年齢までは人間と同じ成長速度で成長し、それ以降は姿は変化せず、一定年齢に達するとゆっくりと老化を始めるといわれている。


(身体の成長が遅いので精神年齢も余り成長しないし…大人といわれる年齢まで育った頃には精神こころが強張っちゃってて頑固者になってるんだよね…)


少なくともエルフ族の者はその傾向が強い。住んでいる場所が森の奥深くという閉鎖的な場所が多いせいもあるだろう…ダークエルフ族は魔界で様々な種族と接する機会があるせいか、まだ柔軟な思考をする者が殆どだが…そうでないと滅ぼされてしまう…ということもあるのだろう。


(ん~…こんなことを考えてる場合じゃないわ!…どうやったら彼に好かれるようになれるのかしら?…この際、ナナミに聞いた方が早いのかも…う~ん…)


年頃(ダークエルフ族にしては)のジェリコ皇女は、恐る恐る目の前のゴーレム娘ナナミに、頬を赤くしながら声を掛け…


「あの…あたし、百合属性レズの気は無いんで…」


と、とんだ誤解をされて…まずは誤解を解く所から始めるのだった…ナンダソリャw


ちなみに、ジェリコ皇女は未来の旦那様ザックの支えになろうと、目立たないように3歩下がって後を歩くような性格の為、気付けば空気になってることが多いそうだ…そら目立たなくて話にも挙がって来ない訳ですわw



- ザックサイド -


「マスター。ナナミから定時連絡です」


「あ~…なんて?」


「ジェリコ皇女が発情しました」


「ぶふぉっ!…ゲホゲホゲホ…」


気管に飲んでいた紅茶が侵入して盛大に咽るザック。決して戦場の血臭で咽た訳ではない(キ●コかっ!w)


「ゲホ…で、何て?」


無かったことにして再度訊くザックだが、矢張り無かったことにしたいらしい…


「いや、もういい。それ以外には?」


「えと…退屈そうだから、何か面白いことがあれば…とも。何でも「皇女に襲われそうで怖い」…と、何こいつトチ狂ってんだ?…と思われそうな伝言もありますが…」


「は?…あの皇女様ジェリコさんってレズっ気でもあったか?」


「聞いてませんが…貴族って暇だと色々斜め上の思考に陥りそうですし…」


仲間の貞操の危機みたいですし、何とかした方がいいのではないですか?…みたいな目で見られて。ザックはこんな一言を放つ。


「いや、君ら…生殖機能なんて備えてないし…大丈夫じゃない?」


と。特に従者ゴーレムの…汎用品と呼ばれてるゼロナンバーズには胸も控えめだし先端も無い。股間にも穴は無い(へそすらも窪みとなってるだけで穴は無いに等しい)…唯一…でもないが、耳と目と鼻、口くらいだろう。


目は視覚情報。耳は聴覚情報。鼻は嗅覚情報。口は味覚情報と声を発生させる器官であり、それ以上もそれ以下でもない。痛覚はあるが戦闘時には痛みで狼狽えるなどすれば戦いに不利となるので切ることも可能だ。痛覚が存在するのは日常生活で必要だからだ…普通の人間と一緒に生活する為には痛みも感じずにいれば…化け物と…異物と見られてしまい、不具合が生じる為だから必要…という訳だ。


「…あ~…でも、危機感を覚えてるのですから…何か対処した方がいいのでは?」


「あ~…そだね。交代要員でも送る?」


「一時的にはそれでもいいですけど…はぁ」


女心を理解できない、まだ子供なザックには…これ以上を求めるのは無理かも知れない…と、取り敢えずの妥協点を提示されたので、皇女の下へ交代要員を送り出す案を統括体ナルに提案し、受理されたので選出してから送り出すのだった。


…ちなみに異性より同性が好きな傾向の者たちを送り出したのだが(レズっぽい性格なんだろうと思ったので)…すぐに交代を要請されて困惑するザックだったというw


「何でこんな護衛を送ったんですかっ!?…私の貞操の危機ですわっ!!」


…と、絶叫されたとか何とか…ちなみに直接身の回りの世話をしていたナナミの交代要員だけ送られて来たのだが、すぐに舞い戻ったとか何とか…(苦笑)


「ぇえ~?…またジェリコ皇女の世話をあたしがぁ?」


と、嫌な顔をされたらしい。


「…そんなん、僕が知るかっ!?」


やれやれ…(苦笑)


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暇と誤解が生んだファンタジーw


備考:何処にファンタジー要素がっ!?

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