98 その14 ~魔族侵攻再び その7~
特攻をしようとするミクを止めるイオナとミナ。その間にザックは
結果的に…最後の武器はオーバースペックだったらしい。マグマ・ゴーレムはその体組織を殆ど吹っ飛ばし、コアに弾丸をめり込ませて機能停止に陥らせていた。通常の弾丸であったならこうはいかなかっただろうが…結果良ければ全て善し、ということだろう!
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- 復活したゴーレム娘はヒトと成る… -
「溶岩の巨人の構成素材とコアは?」
「もう領主に送りつけました」
「送りつけたって…ま、いいか」
「…はい。状況説明とマウンテリバーの現状も説明は済ませてあります。問題はありません」
レムがザックに報告をしている。シャーリーは破壊された外壁の周辺偵察で出ているので此処には居ないが、念話ネットワークを介して参加はしている。各小中隊リーダーも同様だ。また、大隊リーダーは衛兵の詰め所にて仕事をしているのでザック邸(笑)には常時居ないがネットワーク越しに参加している。
『今、領主様を貶すような意思を感じましたけど…報告しない方がいいですよ…ね?』
『マスターの立場を悪くしたいのでしたらどうぞ?』
『あ…いえ。何でもありません…』
「レム…」
「失礼しました」
同じマスターが創造したゴーレム同士なのに、何故此処まで仲が悪いのか…いや、表向きには…ビジネスライクでは事務的な接し方でアレなのだが…とザックは思う。此れが大量生産汎用ゴーレムとオンリーワンで創られたゴーレムの差なのかっ!?…多分違う、か?
※レムとシャーリーは勿論オリジナル体で他に類するゴーレムは存在しない。統括体のナルとトウカに関しては同じ個体はその2体以外には存在しないので汎用ゴーレムの範疇には入らないだろう(尤も、統括体は汎用のそれとは比べるのも烏滸がましい程に高耐久で高性能なのだ)
・
・
壁の映像を見れば、既に外壁の修復が始まっていた。主に働いているのは汎用ゴーレム娘たちだけで、マウンテリバーの人たちは監視に1人衛兵が偉そうに立っているだけでそれ以外には見受けられない。
「…なぁ」
「…わかっています」
「いや、まだ質問すらしてないんだけど?」
ザックが声を上げると、レムが「みなまでいうな!」…とばかりに話しを終らせようとする(苦笑)
「何故、人間が作業してないんだ?…ということでしょう?」
「あ、あぁ…まぁ…わからなくはないんだけどな?」
魔族たちの襲撃があるかも知れない中で作業なんぞ、怖くてできない…ということなのだろう。監視している衛兵もフル装備だし、その目も何かに怯えているようでちょっとでも異変があれば逃げ出しそうではある。
ちなみにナルは今後の予定を擦り合わせる為に領主の館に出向いているのでこの場には居ない。
「…はぁ、やっぱりか。ほい、これで全員修復終了っと」
最後の汎用ゴーレムっ子をストレージから取り出して立たせ、機能停止状態から再起動する。
「っきゃああ~~~っ!?………って、あれ?」
「…耳痛い」
間近で叫ばれて耳がキーンとなったザックが呟く。
「貴女は助かったの。マスターにお礼をいいなさい?」
レムは叫んでいた子を宥め、そして指導する。創造主に向けて礼を尽くせと…
「はえ?…ぇ…ま、マスター!?…ももも、申し訳ありません…その…助けて頂いて…あ…有難う御座います…」
ばばっ!…と腰を90度曲げて頭を下げるゴーレム娘。
「あ、あぁ…その…服を着てくれないか?」
ストレージ内で着せても良かったが、本人が着た方がいいだろうとレムには一式を渡してある。だが、最後の子はいきなり叫んでいたので予定が狂った形だ。
「はい、これ」
ぱさっと背後から外套が掛けられる。否、「
「ひゃい!?」
くるりと振り向くゴーレム娘。
「これもね?…此処でマスターに見られながら着る?…それとも…」
「あ、いえ!…見られながらとかいう趣味は持ち合わせてないので…」
「じゃ、隣の部屋で、ね?」
と、ニコっと笑みを浮かべて送るレム。
・
・
「はぁ…びっくりしたなぁ…」
隣の部屋に向かう2人を尻目に、未だにドキドキとする胸を押さえながら呟くザック。
尚、彼女はデフォルトの髪色に瞳の色で髪型は短め…ショートヘアで切り揃え、余りお洒落をしている感じではなかった。端的に言えば兵隊っぽい感じ?…だが、まだまだ新兵というか垢抜けてないというか…
「うーん…破損した子が全員で237人で…復帰できたのが112人か」
瓦礫となったままで復活しなかったのが125人分。実は消失したと思っていたのだが、ストレージ内で作業をしていたら見覚えのないアイテムが増えていた。
◎復活し損ねたゴーレムの欠片×125
解析で調べた所、
【復活し損ねたGの欠片の解析結果】
---------------
◎25個に纏めて「
---------------
「…ん~」
試しに欠片を25個毎に分けてみる。
◎復活し損ねたゴーレムの欠片×25
◎復活し損ねたゴーレムの欠片×25
◎復活し損ねたゴーレムの欠片×25
◎復活し損ねたゴーレムの欠片×25
◎復活し損ねたゴーレムの欠片×25
1番上の25個に「
>復活し損ねたゴーレムの欠片×25の再生に失敗しました…
どうやら失敗したようだ。流石に一発で成功する訳ではないようだ。後には何も残らず、25個の塊が4つ残るのみだ…
「次…」
2番目にあった欠片25個に再び再生を試みるも、同様に消失して失敗してしまった…
「むぅ…流石にクルものがあるな…」
合計で50体のゴーレム娘が永遠に失われたのだ。元々命なぞ存在してない物だが…そして、続けて2回も再生に失敗を繰り返すザック。
(50%の成功率って本当かよ…)
これで失敗すれば100%の失敗率だな…と思いつつ、ラストチャンスなのでじっくりと時間を掛けて「
「我、汝の生還を望む。破壊の前の時間を取り戻すことを望む。元気に動いていた頃の…汝を望む」
そして暫くの間を置き、コマンドワードを唱える。
「
魔法名は同じだが、込められた
>復活し損ねたゴーレムの欠片×25の再生が成功しました!
ストレージ内でアイテム名が変化する。そして…何故か勝手にストレージからそれは飛び出してくる。
「え…これ…は?」
まるで生きている者のように目の前に現出する。ストレージには生き物は取り込めないというルールがある。ストレージやアイテムボックスの中の死者を蘇生すると、このような現象が起きると聞いた覚えがある。無論、直接ではなくて酒場で飯を食べてる時に話していたのを聞いた話しなのだが…
「まさか…」
宙に浮いていた彼女が光を失い、地面に落ちる…といった所で駆け付けたレムがその体躯を支える。
「これは…?」
矢張り、レムもこの子をゴーレムではないと認識しているようだ。
「う…」
微かな声と共に呼吸を始める娘。静かな部屋の中で心臓の音が聞こえるようだ…尤も、これはザック自身の心臓の音だろうが…ちなみに、見た目はレムより僅かに小さいくらい。ザックよりは大きい…丁度1~2歳は年上に見える…ザックが16歳だが14歳くらいに見えるので16歳くらいだろう?
「ここ…は?」
目が静かに開けられ、僅かに左右に顔を、目を動かす。そして、
「ま…すたぁ?」
ザックと視線が合い、レムの支えから離れる。ちなみに服も何も着てないので正に生まれたままの姿。一糸纏わぬすっぽんぽんだ!w
「マスターッ!!」
だっ!…と床を蹴ってザックに飛び込んで行く素っ裸娘。
「ごふっ!?」
どーん!…と全身でぶつかられて壁にぶつかり、壁どん!ならず、胴体が壁どん!状態のザック。一瞬のことにレムも手を伸ばすだけで防ぐことは叶わなかったが…
「マスター!有難う御座います!!…助けて頂いて…本当に、本当に感謝しています!!!」
どうやら…彼女の魂は破壊されたゴーレム娘たちの誰かの物らしい。レムは良かった良かったと、うんうんと頷いていたが…
「私は…私たちはマスターの為にこの身を捧げようと思います!…
「「は?」」
不穏な言葉に、ザックは思わず抱き着いて泣いている娘を解析する。
【抱き着いている娘の解析結果】
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◎名前:(なし)
◎詳細:復活し損ねたゴーレムの欠片×125の再生体。外見上も中身も人間と等しい存在
◎備考:ゴーレム125人分の魂を融合した魂を持つ人造生命。無垢なその魂を善にも悪にも染めるのは、そのマスター次第であり、人間と同等の身体故に子を儲けることも可。分類上はホムンクルスに近いが人間と称しても問題はない(何処の誰からの出生か証明は不可ではあるが)
※名付けをしてください
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「えと…」
ザックは唯々、泣きついているこの子に困惑していた。
(どうしよう?)
…と。
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レム 「名付け?…してあげればいいじゃないですか?」
ザック 「いや、あげればって…怒ってる?」
レム 「知りません!」
シャーリー「にしし…面白いことになってるねぇ~?w」
ザ&レ 「面白くなんてない(ありません)!」
シャーリー「おお怖…で、名前は何て付けてあげたの?」
※ほぼ痴話喧嘩w
備考:命名は次話で?(放置の悪寒w)
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