81 その38 ~ドライールドで彷徨う その17~

捕らえられていた警備ゴーレム3姉妹(ザックには姉妹という認識は無し)がユグたちの活躍?…に依って救出される。ある程度拉致監禁の大商人側に被害が出ているが早めに処置すれば死人は出ないだろう…ということで放置して脱出すると…壁で退路確保している筈のケリーが無残な状態で足蹴にされていた…

ケリー(まだ機能停止してないので助けて下さい~!)←頭部全損してるので念話も働いていません

※ザック謹製ゴーレムは頭部に各種センサーと念話の送受信回路が内包されている為

━━━━━━━━━━━━━━━


- ケリーの弔い合戦!?(ケリー「だからまだ逝ってませんて!」) -


「ユグ、全力運転!」


全機能開放フルドライブ!〉


ごおおおっ!…と、ユグとルドランの体から魔力が激しく漏れ出す!


がきぃぃぃぃんんん………!


ルドラン(ソードモード)を目に留まらない速度で振り抜き、辛うじてガードしたオリハルコンの剣が…そのままずっぱりと切り裂かれる!


「バカ…な………」


スクィードの持つその剣は剣身が折れ、ぶつかった衝撃で粉々に破砕…剣先数cmとつばより数cmを残して剣身は砕け散った…


「ぐっ…」


スクィードは手が痺れたのか、オリハルコンの剣だった物を取り落とす。


からら~~ん…


「スクィードさま!」


「スクィードさまがやられたっ!?」


「うわぁ~~!逃げろ!!殺人ゴーレムだっ!!!」


…と、スクィードの後ろに群れていた男たちは恐慌をきたして逃げ惑う…否、蜘蛛の子を散らすようにして逃げ去った…


「お、おい!待てよ!!…ちっ…役に立たねえ奴らだ…」


俺はまだ死んじゃいねぇ…と思いつつ、だが…これから死ぬかも知れんな…とユグに視線を向けるスクィード。


「ユグ…」


サリーがケリーを見て、ユグを見て、呟く。


「こいつ、ケリー?…と同じ目に遭わせた方がいい?」


サリーはケリー…だったモノを見て。


「でも…ここまでやったら人間は死んじゃうし…」


四肢切断…両腕両足を根本から断ち、頭部を首から切断し…頭部は踏み潰されたかのようにぐちゃぐちゃに潰されている。人間を同じようにすると、まず間違いなく死亡するだろう。少なくとも切断した部位をすぐさまくっつけて蘇生するにしてもこの場に高位の癒し手が居ないと助からないし、そもそもドライールドに居るかどうかわからない。


「この人、どうやらこの中では上の人間ぽいし…両手足の切断だけで良くない?」


情報を聞き出すだけなら耳と口があればいいし、死なない程度に逃亡できない程度に痛めつければいい…というのがサリーの言い分だが…人道的にはそれでもどうだろう?…という所は、矢張りゴーレムだけあって実に合理的な考え方であった…



「ぐ…くそが…」


出血が多かったせいかやや意識が朦朧としている男に尋問するサリー。一応斬り飛ばした両手足は縛って止血はしているが…人間用の薬などは所持してないので本当に応急手当以上のことはできてない。今はシャーリーが何処かに止血剤くらいあるだろうと探して貰っている。


「ハリーってのが諸悪の根源?」


「全て、ではないですがね…」


スクィードは全てを吐いてもこの絡繰り人形ゴーレム少女たちが届くとは思わないが…自分がゲロったという事実がバレてしまえば…あの子に魔の手が伸びてしまいかねない…そう思うと全てを吐く訳にはいかなかった…


「なら全部いって貰いましょうか?」


「それは自分たちで…調べる…んだ…な…」


歯に仕込んだカプセルを噛み…スクィードは絶命した。あいつらがそう命令していたからだが…素直に従うのも面白くなかったのだが…スクィードは死亡し、頭部から徐々に腐れ落ちて行く。


「なっ!?…これは…みんな急いで離れて!!」


ヒロがそう叫ぶと、ケリーの躯体と各種パーツを拾い集めていた、まだ体が無事なヒナと片腕が無事なイコがギョ!とする。


「なっ!?…これは…」


「ケリーさんのパーツがまだ!」


イコが叫び、ヒナが取り残していると叫ぶがサリーに引っ張られて現場を急いで退避する全員。残されたのは徐々に溶け崩れていくスクィードの遺体とケリーの頭部パーツ。既に修復不可能な程に潰れているので新造した方がマシな状態だが…


「「「………」」」


10m程離れて全てが溶け崩れ、地面まで溶けて大穴が空くまで茫然として眺めていることしかできなかったのであった…当然、戻って来たシャーリーがびっくりし、大声で叫ぶまでがワンセットである!


「なんじゃこりゃ~~~っ!?」


…とw



- ハリー=ドライールド -


「騒がしいと思ったら急に静かになったな?」


思考の海から現実に意識が戻ったハリーが空腹に耐えかねて意識を現実へと戻す。置かれていた紅茶は既に冷たくなっているがティーカップに口を付け、飲み干す。菓子は無意識に食べ尽くしたのか残ってはいない。


「ちっ…絶えないようにいっておいたんだが…おい!誰か居ないのかっ!?」


呼び鈴を数度鳴らすが…矢張り誰も来ないようだ。


「メイドも誰も居ないのか?」


イラつきながら廊下へと出るが…先程は異様な雰囲気だったが、今は耳が痛い程の沈黙で空気すら冷たく感じていた。


「…?」


戦場の空気を知っていれば感じていたであろう…肌がぴり付く程の空気というものを…だが、ハリーは戦場未経験だ。唯単に「やけに静かだな?」と感じていたに過ぎず…無防備に部屋から出てしまった。


ちゃきっ


「…!?」


首に添えられる無駄にでかい…剣というのも憚れる…それは鉄塊に見えるそれは…


「大声を出さない」


やけに幼い声で制された。


「…」


「はい、両手を上げろとはいわないけど動かさないこと」


今度は少女の声だ。視線を動かそうとして…


「目も動かさないこと」


と制される。


「息はしてもいいけどね?」


考えてた疑問を先んじられて許可され…はぁと安堵の息を吐く。


(何者だ…こいつら)


普通に考えれば鹵獲したゴーレムを奪還しに来た部隊の物だろう。だが…確認した制服姿の少女はその部隊の者だとわかる。だが…それ以外の者には見覚えがない…


(幼女に巨大な剣。人と比べて小型の…妖精、だと?…それに…破損してるのは鹵獲したゴーレムどもか)


救出部隊は訳のわからん構成だ。恐らくはこいつらもゴーレムのバリエーションだろう。通常、軍でなければゴーレムなんぞ量産はできない筈だ。サンフィールドにゴーレムを量産する技術も工房も無い筈だ…恐らくはサンセスタ王都か…隣のマウンテリバー…いや、あんな辺境にそんな物があるとも聞いた覚えはない…だとすると…


(マウンテリバーの王都か、その隣国の…)


と、そこまで考えた所で今までひそひそと話していたゴーレムらしき少女たちの相談事が纏まったのか…こちらに声を掛けてきた。


「あんた。この宮殿というかお屋敷?の主人なんでしょ?」


代表してサリーが質問する。ハリーはまだ成人したばかりの見た目だが、踏ん反り返って


「ああ!その通りだ。お前らは…ゴーレムを奪還しに来た部隊の者か?」


首に刃物を当てられているにも関わらず、踏ん反り返るだけの胆力があるのだろうが危険極まりない。下手をするとそのまま皮膚が切り裂かれてしまうというのに…


「私の仲間を拉致して痛めつけておいて…」


更にケリーを破壊されたせいでやや昂っているサリーは、自らの心を律するだけで精一杯のようだ。仕方なく、見た目だけで軽んじられる可能性を考慮して黙っていたシャーリーが口を開く。


「知らない?…そこのお嬢ちゃんの存在」


「何を…このガキがどうしたって?」


はん…と馬鹿にして鼻を鳴らすハリー。今現在、自身の命運を握っているのがユグなのに大した度胸である。


「マスターの最大戦力の1人・・・・・・・が、このお嬢ちゃんなのよ?」


「…」


最大戦力と聞き、黙ってシャーリーのいうことを聞いているハリー。不明な戦力がまだ他にもあると聞き、情報を聞き出そうと黙っているのだろう。


「いい?…この子が暴れると…このドライールドは1日と待たずに消滅するわよ?」


文字通り、地図上からドライールド領は消滅するだろう。残るのは荒涼としたクレーターだけだとシャーリーが説明するが…ハリーは「し…信じられないね、そんなこと」と、掠れた声で答えるのみだった…


━━━━━━━━━━━━━━━

シャーリー「まぁ…普通はこんな可愛らしいお嬢ちゃんがそんな大それた力を秘めてるなんて思わないよね…」

ユグ   「かわいい?ユグ、かわいい?」

サリー  「え~。まぁ…可愛らしいと思いますよ?」

ケリー  (何でそこで疑問形?)

ヒナ   「えと…客観的に見て可愛らしいかと…」

イコ&ヒロ「まぁ、な…」

ユグ   「うきゃ~!ユグ、かわいい!」

※姉妹が増えまくって大変だな…と、ザックが見てたらそう思ったことだろう(苦笑)


備考:うーむ…ちなみに汎用量産型は見た目には髪型と性格くらいしか変化が無いので基本目鼻立ちは同じですw(体格も)

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