29 その12 ~マウンテリバー、魔族の侵攻を受ける!…その12~

やんちゃした自称貴族(と貴族の家の者)のおっさんたちを領主の館まで護送連行し、領主の館から出て来た執事に預かりを依頼するザックたち。今までの経緯をざっとだが説明済みなので、彼らおっさんたちはそれ相応の対応と処分を下されるだろう…

その後、放置していた地竜アースドラゴンの対応をしなくちゃなとシャーリーに探知を頼むと…冒険者たちと衛兵の混成部隊がアタックを開始していた…らしい。それは兎も角、赤竜レッドドラゴンみたいに空を飛べるなら理解できるが、地べたを這いずるしかできないのにどうやってマウンテリバーのある大地に侵入できたのだろうか…現場に急行するというシャーリーの言葉に考えが纏まる前に動くしかなくなるザックたちであった。

そして、戦闘向きではないナルを領主の館に残し防衛を頼むと、念話にマロンの奇声が混線する…急ぎ疾走して地竜 vs 混成部隊の現場付近まで接近すれば…遠目に噴き上がる攻撃の影響と思える土煙が荒れ狂っていた。まだまだ現場からは遠く、かといって走っても小型馬車チャリオットに乗っても地面がグズグズで速い移動には適していない。仕方なくザックは最終手段を取った…所謂、「空中移動」だ。レムを抱きかかえると、シャーリーの嫉妬視線を浴びつつ2人は空高く「跳翔ジャンプ」するのであった…w

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- おかわり、いっぱい -


アースドラゴン…地竜と呼ばれる巨大な魔物が空けた大穴からは外から小型中型の魔物が侵入していた。恐らく、拠点を襲撃したマロンたちの討ち漏らした生き残りだろう。そして穴が開いたことに依り、空中の障壁機能が一部働かなくなり、壁の上からも空を飛ぶ魔物が易々と侵入を果たしていた!


「くっ…空からも侵入されてるぞ!?」


「障壁が機能していない?…そ、そうか…壁が破壊されてるからかっ!」


ノースリバーサイドもそうだが、最外壁には壁の上にも障壁が常時展開している。但し、障壁用魔方陣は埋め込まれているのは地面ではなく防御用の壁の中にある。今回、魔方陣を狙ったか、偶々だったかは不明だが…穴を開けられると同時に障壁が消え去った所から魔方陣も一緒に消滅してしまった。故に上空の障壁の穴から飛翔可能な魔物が侵入し放題となってしまったのだった…


「弓矢班、急げ!」


「まさか、防空障壁が破られるとは…聞いてないぞ!?」


そんな中、ザックは地竜をストレージに収納して空を見上げる。


「2人共、あれ、倒せそう?」


「届けば容易いが…」


「弓矢は持ってませんしね…」


地面に近い所を滑空してるモノなら倒せるが上空を飛んでいるモノは難しいということだろう。2人は魔法の類は身体強化フィジカルブーストの下位版しか扱えない。主に敏捷力・移動力か筋力上昇の2つだ。


「だよね…流石に小石投げて当てるのも難しいか…」


普通に見ただけでは辛うじて姿が視認できる距離から遠距離魔法を撃ち下ろしている個体が10幾つか。小物ではなくそれらの指揮個体のようにも見えるそれは…残念ながら鑑定スキルを持ってないザックには判断できない。


「恐らくハーピィの上位個体だと思う」


「マロン、知ってるの?」


「あぁ…以前やりあったことがあるが…ちょろちょろ飛び回るんで厄介な相手だった…」


確かに風系統の攻撃魔法以外にも、羽らしきつぶてが飛んでくるので両腕の翼から放ってるのかも知れない。尚、風系統は目に見え辛いが周囲の景色が僅かにブレるので、魔眼となっているザックの目には容易に見分けが可能だった(普通は鍛えてても接近してから気付く程度には見分けが困難ですが…(苦笑))


「ん~…んじゃこれ貸すから使って?」


ストレージから即席で創った武器を渡す。


「「これは…?」」


見た目は「ボウ・ガン」だ。所謂「クロスボウ」に腕に固定する輪っかを付けて狙いを付ける為の十字サイトレティクルが取り付けられている。小さいと狙いを付け難いと考えてか結構大き目だが。


「クロスボウみたいなもんだよ」


2人はジロジロと見ながら、


ボルトは何処から?」


モンブランが訊いてくる。そういえば忘れていたと弾帯を付けた腰の横に付ける少しだけ嵩張る箱を取り出して2人に渡した。


「これをクロスボウの横の…そうそこ。そこに取り付けてみて?」


クロスボウの横にあるスリットに取り付け金具があり、弾帯をそこに差し込んで固定。弾帯付きの箱はベルトなりに出っ張っている金具で固定してと説明するザック。重さは見た目相応しかないので問題は無い筈だ。固定してしまえば「外そう」と思いながら取らなければ外れないそうだ(但し、ベルトが切断されてしまえば落としてしまうが…)


「じゃ、試しにあそこの瓦礫に「発射!」なり「撃て!」なり考えてみて。口で叫んでも呟いてもいいよ?」


2人の用意が済んでから(勿論利き腕(武器を持つ腕)とは反対側に装着するように説明した)そう促した。


撃てー!」


「は…発射シューっ!!」


前者はマロン。後者はモンブランだ。2人共そう叫んだ瞬間、


ずどどどっ!


と3点バーストしたクロスボウがボルトを1秒で3本発射し、15m程離れていた瓦礫を…それぞれが狙った場所に見事に命中させていた。


「「あ…」」


否、命中だけじゃ飽き足らず、1射目で突き刺さり…2射目でヒビが入り、3射目で目標の瓦礫はバラバラになったのだった…尚、素材はその辺の土を練って焼き上げた硬度が高いだけの陶器セラミック製だが目標に当たろうが当たるまいが自然に還る環境にも優しい自然素材だ(対象が硬過ぎればバラバラになって土に還るし?)


「凄いです!…これは何回撃てるんですか!?」


モンブランの圧が凄い(苦笑)…逆にマロンは(まぁ遠くのまとに当たるなら便利かな?)程度にしか思ってない表情だ。


「取り敢えず1000本くらいは入ってるけど…」


「え゛?…この箱に、ですか?」


「うん…重い?」


「いえ、全然…」


「まぁ、アイテムボックスだし重量軽減の魔方陣も埋め込んでるからね。ボルト専用だからそれ以外には役に立たないけどもw」


加えていえば、使い切ったらザックに通達がされ、在庫があれば彼のストレージから自動補填される。在庫が切れるまでは補充を考えなくてもいいと、アフターサポートも万全なのだったw(遠距離攻撃手段は以前から考えていた為、仕様が固まってからは暇と魔力が残っていれば大容量魔石ラージマギバッテリーへのチャージとボルトの補充をやってから寝る毎日でもあったw)


「…あるじ


「ん?…何か不具合でもあった?」


「こいつは…先程の3連射しかできないのか?」


「あ~…えっとね」


通常は「3点バースト」といって3連射。1射だけだと外すことも多いだろうと矢をばら撒いて命中確率を上げる為にやっていると説明。


「他にね…」


溜めてから撃ち込む「ヘビーショット」も説明。要は発射を意識して矢を打ち出す力を溜め込み、何秒か後に「ヘビーショット」と叫ぶか思うかでいつもよりより強い力で矢を発射できると説明。


「まぁ、発射のコマンドワードはいつも通り「発射」でも「撃てー」でも構わないよ。要は「発射の力を溜める」というのを意識すればいいんで…って」


説明の途中から既にマロンが試していたのだった…。


どごぉぉぉんんんっっっ………!!!


やや離れた場所の残骸と化していた誰かの家屋が爆弾でも投げ込んだかのように吹っ飛んでいた…


「な…何してんだよ…」


「うむ!…十分だな!」


「「じゃなぁ~い!!」」


モンブランと一緒にマロンに突っ込んだ所、吹き飛んだ元家屋の残骸に駆け寄って崩れ落ちる、恐らくは家の持ち主であろう冒険者らしき人物がorzしていた…


「あーあ…あれ、まだ完全に崩れてなかったから中に家財道具とか残ってたんじゃないかぁ?」


「…ですね。お姉さま、ちゃんと弁済して下さいね?…私は知りません!」


「え…ちょっ…まっ…」


スタスタと歩き去るザックとモンブランに残されたマロン。無論、木っ端微塵に破壊された家屋の持ち主はマロンに駆け寄って…聞こえては来ないがこういわれてるのだろう…


「どうしてくれる!?…中にはまだ運び出してない家財道具やら財産が残されてたんだぞ!?」


とかなんとかと(苦笑)



- 侵攻 第2Wave収束…? -


朝に始まった侵攻第2波は夕暮れが訪れる頃には収束していたかに見えた。ザックたちがアイテムボックスを用いて死体を回収してまわったので死臭漂う戦場にならず、瓦礫も可能な限り回収して指定の地点…壁の外にだが…に取り敢えず破棄してまわった。尤も、ザック一派だけでは手が足りない為、1週間限定で使えるアイテムボックス付きのずた袋を配布して探索者・冒険者・一般人で元気な者に瓦礫の排除を手伝って貰っていた(1週間経過すると中に入っていたモノは消滅し、それ以後は見た目同様のずた袋としか機能しなくなる。依って基本は返却して貰うこととなるが使い続けたいなら注意事項を説明して納得して貰ってから譲渡となる(無視して大量の物品を入れたまま持ち歩いて、消滅しても責任は持てない。全て自己責任とする))



「町の中は更地に?」


「はい」


「じゃ、この産廃を何とかするか…」


ザックは産業廃棄物…所謂「産廃」と呼ばれる瓦礫の山をストレージに収納する。全部纏めて一括りの「産廃」で重量が加算される。



※(重量)13.078t / 100Mt → (重量)1781.639t / 100Mt

 1768.561t程瓦礫増加。この後分解して石材に再構成して復興資材置き場に加える予定。

 ※1メガtは100万トン。100Mtはその100倍で1億トンとなる…ううむ(苦笑)



「じゃ、復興資材置き場で作業してくる。みんなは周辺警戒に当たってて?」


「「「了解(しました)(しましたわ)」」」


ナルの部下数名をストレージから出した建材を空いてる場所に運ぶ為に借り受け、その他のメンバーは各々、各自の仕事場へと散って行った。尚、ナルは引き続き領主の館の防衛の為に残っている為、念話で人員を回す為に連絡したという形だ。



「はぁ…疲れた」


1768.561tの瓦礫を分解して建材に向いた石材の形に固める…という作業をストレージ内で行い、真横に石材を出現させて待ち構えていたナルの部下たちが受け取って運ぶ…という作業をかれこれ数時間続けていた。無論、途中で何度も休憩を挟んだし、そこに居たナル部下の膝を借りて(正確には太もも枕だよな…何で膝枕っていうのかは永遠の謎)軽く寝たり、寝ていたら殺気を感じて跳ね起きたり…むぅ(苦笑)


(残り2/3くらいか…残りは明日でもいいかな?)


ザックはストレージに仕舞ってある生成済みの石材を1枚だけ取り出して、


「後は明日やろう」


といい渡し、今日の作業はお仕舞い!…ってことで撤収するのだった。


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見張りとか防衛任務?…簡易ゴーレム創って代わりにやって貰ったよ。防衛任務は先に創った先行試作量産型防衛ゴーレムが居るし!強いし!睡眠要らずだし!!(マロンやモンブランより弱いけど…)


備考:ストレージ内瓦礫在庫が1768.561t程増えて半分に減少(現在、残凡そ884t)

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