17 その13 ~侵略再開!?~

ダークエルフの里の住人を無事に撤退させてノースリバーサイドのお屋敷ザック邸に民族大移動した後、歓迎会という訳じゃないけどお昼時もありご飯となった。流石に食堂にも外の中庭にも3000人も収容できないので、例の馬車の中での立食形式で食べることに)

その後、ダークエルフ居留予定地に案内して取り敢えず建ててた木小屋ログハウス集合住宅を見て貰って(自分の元の家に住みたい人は除くが)何処に住みたいか決めて貰うことに…が、案内人がレムとシャーリーだけでは幾ら何でも少ないので案内人ゴーレムを創造することに。その間、ダークエルフたちの目が神を崇め奉るキラキラした目に変貌するのはわかってたけど、先人たちが抑えてくれてたので助かった(正確には帝王が民たちをその眼力で…という訳だ)

…まぁ、最後にオリジナルが僕の横でべったりしてた様子を目撃した皇女が全部ぶち壊してくれたけども(苦笑)(威厳?…まぁ下手にかしずかれるよりゃマシかな…うん、多分、きっと)

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- 分譲…え、違う? -


取り敢えず、里から持って来た住居を空いている土地に設置して住みたい人は申し出て貰い、田畑予定地を除いて住宅予定地をどんどん埋めていく。用意した集合住宅を希望する者は一旦持って来た家を出して貰い、中の家具やら雑貨などを取り出して引っ越しの作業に入る…とはいえ、貸与してるアイテムボックスに放り込んで木小屋ログハウスで中身を取り出しているだけだけど。家そのものはずっと持ち運ぶ訳にはいかないので譲渡して貰うことになっている。通常なら産廃になるだけだけど、僕の手に掛かれば再利用はできるからね!(アイテムボックスは全ての作業が終わったら返却して貰ってる。けど、中には返却せずに黙って使い続ける人も居るかも知れない…まぁ1箇月もすれば自動的に機能喪失して中身を放り出す仕様になってる。売却もできない(全く知らない他人には譲渡できなく制限している)ので…居ないとは思うけど悪いことはできないって訳だw)



そんなこんなで、最後は王城の設置だけ残っている。ちなみに果樹園とか田畑もアイテムボックスに収納して持って来たので、開墾や植林もしてないのにそれらはダークエルフ第2の里に広がってるのは不思議というか何というか…アイテムボックスってチートだなぁ…という感想しか浮かばなかった(苦笑)


「じゃ、ここら辺にお願いします」


「わ、わかった…出でよ!ダークエルフ城!!」


そんな詠唱は必要ないし思念で取り出す旨を命令するだけで取り出せる…ジェリコ皇女の持つ、他の者に貸与したアイテムボックスより一回り大きいそれは光り輝き、目を焼かんばかりに周囲を真っ白に照らす…そして数秒の後、ぎゅっと強く瞑っていた目蓋を開けると…


「おお…」


ジェンドゥ皇帝の声がする。


「成功だわ!」


皇女の声が…いや、失敗するんか?…と突っ込みたい所だけど我慢する。


「おお…ダークエルフ城が…いつ死んでも悔いはありません…」


ワイズマンと第2~3部隊長が感慨深い声で呟いている。フラグかYO!…僕もその巨大な雄姿を目に収める。


「村…いや里か。のお城にしちゃでかいよな…」


流石に本場?のお城って見たことはないけど…ノースリバーサイドやマウンテリバーの領主の屋敷よりは大きい。尖塔を備えたお城は小柄ながらしっかりお城の風格を有していた。本来なら周囲に様々な建物を侍らせて(多分倉庫とか色々)もっと広い敷地を占有するのだろうけどこのお城は外壁の中に納まっているらしく、壁の外には何も無い。


「他の家もそうだけど、上下水道はどうなってるの?」


「…というのは?」


質問の意味がわからないと小首を傾げるリコ皇女。人族の家と違うのかも知れないと判断して説明をしたんだけど…上下水道の役割とかね。


「あぁ…飲み水は水属性魔法で出してるんですよ?…お湯は魔導コンロで沸かしますし…え、お風呂?」


お風呂を知らない?…一応、体を洗った後に浸かるお湯を貯める大きい桶だという感じで説明する。王族や貴族なら住んでいる住居に備え付けてるもんだと思ったんだけど…


「あぁ…そういう。ダークエルフ族ではサウナ熱風呂がそれに該当するのかしらね?」


サウナとは水を熱した岩などに掛けて高熱の水蒸気を発生させて体を温めて、その後水を掛けて洗い流す。体の汚れなどは清浄化クリーンで綺麗にするそうだ。風呂を所有している場合、広い場所を占有する風呂桶が必要だし、大量の水を必要とするし、熱する為にその仕掛けや燃料を必要とする。清掃するには水…お湯を抜き、清浄化クリーンを使うなり、生活魔法を使えぬ使用人なら清掃道具を用いて洗うだろうし…


「下水…つまり、汚れた水はどうしてる?」


「ん~と…詳しくは知らないのだけど」


各家庭もお城も規模が違うだけで、基本的に地下に下水管が這わされ、下水処理施設…スライムが飼われているタンクがあるそうだ。汚水を吸収して綺麗になった水を排泄し(=養分が失われた水分を排泄)、スライムが通過できない配管を通して外に流しているらしい。栄養分を含む下水管もスライムが通過できない処置を施してある。タンクはスライムが育ち過ぎないように監視・適宜処置しているそうだが詳しいことは皇女も知らないらしい…


「なら、地下の配管から川に水を通す水路を後から増設した方がいいかな?」


「多分あった方がいいと思う。逆流したら困ると思うし…」


という訳で、リコ皇女から聞き取りした情報を元に各家庭(集合住宅以外)の処理水の排水管を地下を探知して通すことにした。元の里の家屋は200棟以上あったそうだが、集合住宅に移り住んだ少人数の家庭が思ったより多く…大人数の家庭を除いて半分以下の家屋が…一軒家が建ち、残りは木小屋ログハウスの集合住宅に移り住んだようだ(多分、真新しい部屋が珍しかったんじゃないかと…)


「う…それでも100棟近くあるのかぁ…」


うんざりした顔で排水管を創る作業に従事するザックであった…勿論、夜通しする訳にもいかないので、午後遅くから開始し、20軒程作業した後は屋敷に戻り、残りは明日…と相成った。勿論、ダークエルフ城を最優先にしたせいで、一般家屋が割を食った形になったのだが、それで文句をいう者は居なかった…約1名を除いてw(勿論、他の面々によって当人の家に監禁されているので文句は事前に封じられた形となっているのだがw)



- その頃の魔物サイド… -


〈GUaU!?…GUrururu…〉『何ぃ!?…反逆者のダークエルフどもの巣が…』


〈BAU!…BUrururu…〉『はっ!…恐らくは神隠しに遭ったものかと…』


〈GYAU?〉『まことか?』


〈BU…〉『恐らくは…』


殲滅部隊・副隊長の報告にたらりと冷や汗を流す竜種人型の魔人。


〈GU!…GYAU…〉『わかった…下がって良し』


〈BAU!〉『はっ!』


下がって行く獣人の副隊長を見送り、竜種魔人は思う。


(まさか、神隠しとは…)


と。魔人が崇める魔神か…はたまた魔物全体の崇める邪神か…。


(黒づくめのエルフ共が崇めていたのは…)


確か初代ダークエルフの長だったか…と記憶の淵から思い出す。本来はエルフ共の神…初代のハイエルフが神格化した存在を崇めていたと思ったが。その存在を疑い…そして別の本物の神を見てしまうことで心を奪われてしまうことで皮膚が褐色に変化し…ダークエルフ種と変じてしまったと伝え聞いている。


(まぁいい。あの集落全員消えてしまったのは何だが…な)


実はダークエルフ種はこの里の者で全員という訳ではない。集落は別に存在するし、彼らの得意とする斥候や暗殺の出番があるならば、また別の機会にでも他の集落の者を起用すればいいだろう…そう考えていた。今回はたまたまゲートの傍にあった集落の者たちを起用した…ただそれだけなのだから。



- 侵攻…再び -


「はぁ…ようやく第5階層か…」


第10階層まで許可されたランクCの探索者たちが臨時チームを組んで第5階層を歩いていた。その後ろには高ランクの冒険者が続いており、万が一を考えて混成レイドとなっていた。探索者「息吹いぶく若草」チームは水先案内人であり、冒険者パーティは戦闘部隊といった役割分担だ。


「おいおい…しっかりしてくれよ?…俺たちはダンジョンは不案内なんだからなっ!」


「あぁ、わかってるって。その代わり、戦闘は任せたぜ?」


「おお!任せておけって…って、あれ何だ?」


任せてくれと胸ドン!した冒険者が前に指差し、探索者たちが後ろを振り返ると…


「ど…」


「ど?」


「ドラゴンだっ!?」


「何ぃぃぃいいいっ!?」


そう叫んだ途端に、


〈ANGYAAAA!!!〉


と吠えたドラゴン。その場にいた全員が第4階層への階段通路に向かって全速力で走り出す。


「てっ、手前ら!…早速の魔物のお出ましだぞ!」


「馬鹿いえ!…どっ…ドラゴンなんてかなう訳無いだろっ!!!」


「何の為の護衛だYO!」


「俺らはせいぜいオーガやレッサードレイクがいい所なんだYO!!」


それでもランクBの脅威度がある為、高ランク冒険者というのは嘘でないだろう。在野の高ランクといえばBが上限なのだから…A以上のランカーたちは更に高難易度の魔物相手にあちこち飛び回ってるのが普通なのだ。僻地であるマウンテリバーではランクBなら高ランカーという訳だ。そもそも、ノースリバーサイドの最外壁からの脅威は50年前を最後に侵略が途絶えており、そこまで古い記録も喪われいた為に正確な情報も伝わってないのもある。そして、まさか北からの脅威が生き残っていて再び侵略が行われるなぞ、想像の埒外であったことも大きい…


〈ANGYAAA!!!〉


ごぉ~っ!


…とブレスが吐かれ、後ろをチラチラ見ていた斥候の探索者の指示に従って右へ左へと回避する混成部隊。やがて階段通路が見えて来て…


ずざざーーーっ!!!


と滑り込みセーフ!…といわんばかりに階段の手前で団子になりながらも一行は命からがらブレスの餌食にならずに済んだのだった…下敷きになった先頭を走っていた探索者たちが、


「う゛…ぞれ゛ばい゛い゛がら゛…」


早よ降りろ!!…と腹の底から怒鳴ったのだったw



「不味いぞ…」


「あぁ…」


階段通路の出入り口は念入りに防護魔法が掛かっている為、障壁はブレス程度では破壊されない…ということがわかる。が、


「この気温の上がり方…周囲の壁は…やべっ!下がれ!!!」


慌てて階段を駆け出す一行…だが、最も出入り口に近い位置に居た何人かが遅れ…


「「「ぎゃああああっ!?」」」


「「「たっ…助けて…ぐぶぅ…」」」


あっという間に溶岩に飲まれて溶け崩れ落ちていく。


「…急げ。報告に戻るぞ!」


「此処で足止めは…」


「無理に決まってるだろ!!」


ブレスに炙られ、溶岩流と化した壁の成れの果てが階段の下で巻き込まれて燃えている様子を見て青い顔をした者たちは、頷くと階段を駆け上がって行く…既に助ける時期を逸している仲間は骨まで燃え溶けており、まごまごしていれば自分らも同じ目に…巻き込まれることを示していた。


「余計なことを考えるなよ?…助かりたければなっ!」


ダンジョンの様子を探る為に組まれた混成レイドはこの後、第4階層の出入り口でレッドドラゴンの群れが待ち伏せをしているとは夢にも思っていなかった。そして、その中で唯一…最も足の速い斥候の者が命からがら、探索者ギルドの受付まで逃げ帰り…第4~5階層の異変を報せたのはそれから凡そ3時間もの後になったのだった…


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侵略再開!…矢張りダンジョンからの侵略がバレ難いと思われたが…探索部隊でバレました!w



備考:案内の後、ゴーレム隊は機能を一部改修する予定

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