55 その6 ~使用人たちの護りたい人々~
モンスタースタンピードを抑えるべく、マウンテリバーダンジョンに第1階層から潜ったのだが気付けば屋敷に送り返されていたザック。相変わらず最深階層が第3階層で記録が止まっており、気落ちする傍ら…
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- ザックが目覚めてから1週間が経過… -
「戻った」
ぶっきらぼうな物言いと共にマロンが屋敷に戻って来る。手には報告書とドロップ品の詰まった肩掛け紐付きバッグがあり、ばさっ、どさっ…と床に放り投げられ、そのままふらっと倒れ掛けるマロン。
「ちょっ!?…マロンさま!!」
メイドたちがすんでの所でマロンを抱きかかえ受け止める。何故同じメイドなのに敬語!?…と思うなかれ。彼女の戦闘能力は屋敷中に知れ渡っており、正当な理由無しに逆らう者は誰もいやしないのだ…主人たるザックを除いては。
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・
「そう。ご苦労様。で、彼女は?」
「自室にお運びして…寝着にお召し変えしまして…今は熟睡しています」
「わかった」
メイドのイブが持って来た報告書とバッグを置いて退室する。僕はそれをぱさっと机に置くと深い溜息を吐く。いや、マロンにのされたからじゃあなくて、彼女が第4~9階層までを単独で掃除して回った事実を考えてのことだ…
「…僕も同行したかったなぁ…」
いつまで経っても第3階層から先に行けない不甲斐ない自身を思って…まぁ、今回はマロンにのされて気絶というか瀕死になってたってこともあるけど。まぁ、即死寸前に追い込まれたことは気にしていない。だって僕にはスケドが…
「あ、使ったからねーじゃん…」
ぞぞ~っ!?…と背中に悪寒が走ったが…あれは作り直せば済むことだ。素材の1つが非常に手に入り難いものだが、これだけ人が居れば1つくらいは入手可能だと思う。幸い、使用人たちは全員奴隷だ。命が掛かってるといえば嫌とはいわない…と思う。
「え~っと…創り方と材料はっと…」
骨格となる人形の素体は木の人形とボロ布の服。これはその辺に落ちている小枝でいいし、布も名の通り着れなくなった服の布の切れ端で十分。見た目、人形の服とわかる状態の大きさでいいので、裾を少し切ったとか、端っこを切った程度でいい。但し、新品の布はダメだ。あくまで人が着ていた服の布でなければいけない。何故なのか?…一説に依ると、着ていた人の生命力が宿っており、それが命を救うのだとか…その説が本当ならば善性である人が着ていた服ならそれも納得がいくが、意地の悪い人が着ていた服の場合、逆に命を奪われそうだけどそうはならないらしい。まぁ僕は研究者でもないので「ふぅ~ん…」済ましてるけどね。考えてもわからないものはわからないし?
「次は…」
頭部を小石で造る。なるべく人形の体に合わせた大きさで、丸い平たい小石がいい。川なんかで探すといいらしいけど…
「あの渓谷の川は深過ぎるよね…流れも早そうだし」
まぁ、マウンテリバーサイドの南の出口の傍の川で探した方が無難だろう。記憶が間違ってなければ、魔物にさえ気を付ければ子供でも遊べるくらいには浅いし流れも緩やかだった筈。
「…」
残るは頭部の目に相当する部分に嵌める魔石だ。これはゴブリンなどから出る魔石(小)2つで十分に事足りる。ギルドに出してないストックが嫌という程あるのでそれを使えばいいと思う。ちなみに(小)といってもピンキリがあり、今回使うのは例えていえば豆粒程の大きさの(極小)といっても過言じゃない魔石を使用する。
「じゃ、小枝と小石は暇な…人は居ないだろうけど何かのついでに拾って貰って来ようかな?」
(後は…最重要アイテムだけど。普通は母親とか娘とか姉妹に頼んで貰うみたいなんだけどね…仲のいいって前提が付くけど)
無論、同性の親や兄弟姉妹でも構わない。スケドを作成する本人か、若しくは身に着ける者を大切に…それこそ身を賭して尚、救いたいと本気で想ってくれているのならば…唯、一般的には異性の方がその効能が強いというだけだ。無論、天涯孤独な金持ちとかも居る為、自分自身を守りたいという意思が最も強い者…当人の体の一部を使用する。ということが最も多いらしい。一部といっても髪の毛で十分だけどね。頭髪が乏しいご老人の場合は髭とか腋毛、胸毛、すね毛でも構わない。爪が伸びてれば爪でも構わないし…え、性毛?…まぁ恥ずかしくないならそれでも構わないけど…
「あ、ゴーレムのパーツなんかは意味無いよ?…君ら、
…と説明すると、すごすごと去っていくシャーリーとレム。気持ちは物凄く嬉しいんだけどね!
- という訳で、スケープドールの素材集め… -
「…という訳で、仕事のついでとかでいいので集めて貰えると助かるんだけど」
「小枝と小石、ですか?」
「あぁ…小枝は余り小さいと困るけど、小さい人形を作れるくらいの適度な太さで長さはそうだね…」
以前使って壊れたスケドをストレージから出して見せる。それは見事に魔石が燃え尽きて頭部である小石が焦げ付き、胴体部分である小枝もぽっきり折れて着せている服の布地が焦げ付いている。ザックの命を救う代わりに、彼を襲ったダメージを肩代わりした結果をその身に受けた結果だ。
「これが…」
「マスターのお命を救った…」
取り敢えず拾ってくれる人たちに手渡して見て貰う。小枝と小石の大きさはこれで大丈夫だと思う。後は古着なんかの布切れを少々と…髪の毛はどうしたもんかなぁ?
「これ、小枝や服を縫っているのは…」
「あ、あぁ…人の髪の毛だよ。これで身を護る人を大切に想ってくれる人の、ね」
小枝を纏めていた物。人形の服を縫っていた物が唯の糸ではないと気付いた使用人たちが戸惑いながら訊いて来た。ザックは隠すことでもないのでその正体を包み隠さずに答える。
「身を護る人を…」
「大切に…」
それっきり、静まり返ってしまった場に耐え切れなくなったのか、苦笑いな笑顔で
「わかりました」
「何かのついででいいんですよね?」
と、改めて訊き返して来たので頷くに留めるザック。
(…この分じゃ毛の方は自分のを使うしかないかなぁ…)
暫く考え込み、「はぁ」と溜息を吐いたザックはスケドを作る準備をしようと自室へ引き籠るのだった…
・
・
こんこん
ノック音に反応したザックが反射的に
「はい、空いてるよぉ~」
と答える。
「失礼します…」
といいながら入ってきたのはメイド長のメビウスとその補佐のイブだ…いや、平メイドのニナ、ソラ、ミルムもその背後に控えている。
「え…と、どしたの?」
何やら畏まって立ち尽くすメイド軍団(失礼w)に戸惑うザック。
「え~…っと。何か用か、な?」
何やら顔が赤く、もぢもぢしているメイド軍団に…「はっ!?」…と、嫌な予感が走るザック。
「…あの。ご主人様…」
「はいっ!?」
静かに、もぢもぢしながら語りだすイブ。思わず裏声で返事するザック。
「…その、これを」
代表?…として小さい小箱を持ってミルムが頬を赤らめた状態で前に出る。ザックが恐る恐る小箱を受け取ると、
「その…中身はわたしたちが退室してからご確認下さい」
「失礼致します…」
ミルムがお願いし、メビウスがいい締めて、全員が腰を折って頭を下げ、静々と退室していった。
…ぱたん
「…いや、何となく中身が何なのかわかるけどさ…」
足音が遠ざかったことを確認し、小箱を机に置いて椅子に座るザック。
「…」
小箱を開けるとまず折り畳んだ紙切れが入っており、そっと取り出して開いてみる。そこには、こんな一文が書かれていた…
「ご主人様へ
この小箱の中には我々メイド長以下の毛が入っております。
効果の程はわかりませんが…どうぞ使って頂きたく。
追伸
どこの毛かは追及しないで頂けると有難く思います」
「…えっと」
思わず小箱の蓋を閉じてストレージに仕舞う。簡易鑑定の結果、ザックはホッとした…尤も、あそこの毛の場合は短過ぎて使えないのだ。腋毛も大抵は擦り切れてしまうことのが多く、使えないことの方が多い。中に入っていた毛は髪の毛と鑑定されており、使用用途を考えてそこそこ長い物が数本づつ提供されたようだ。
「…ま、これで僕用のは何とか作れるかな?…後はみんなの分か」
それについては男性陣にも協力して貰うべきか。相互に親愛の情があるカップル?があれば優先的に作ってやってもいいかな…などなど。余計な気を回すザックであったw
- 後日…使用人全員に根回しをするザック -
「ご主人さま…」
「お、お疲れ様。リュウにケン」
後日、雑務役の2人が僕の部屋に現れる。一応、全員で何らかの仕事をするついでに集めてくれているようだ。いちいち監視してる訳じゃないが…シャーリーがいうには、時々見かける所を見ればそういうことらしい。で、リュウケンの雑務役コンビが一定以上集まったので袋に入れて持って来てくれたという訳だ。
「こんなに一杯集めて…そんなに沢山作るんですかい?」
不思議そうな顔をしたケンがリュウの静止も無視して訊いて来る。まぁ、不思議に思うよね?
「あ~うん。
「「…え?」」
今聞いた内容が理解できない…そんなアホ面をしている2人に、こんな質問をしたらいじわるだろうか?
「2人は…守ってあげたいとか、そんな思いを寄せている人は居るかい?…勿論、異性に限らず父親だとか兄、弟でも構わないけど…」
部屋がしん…と静かになる。そして、目の前の2人から何かの圧を感じるような気がするザック。
(あれ?…こんな反応予想外なんだけど。何かNGワード踏んじゃった!?)
ずごごごごご…
地獄の底から湧き上がってくるようなオーラを感じ、
ずん…ずん…
と、1歩1歩歩み寄って来る2人。額から汗がつぅ…と垂れ、思わずガードの恰好をしてしまうザック。
「「御屋形様!…それってマジですかっ!?」」
「え?…あぁ、まぁ…」
「「うぉぉおおおっ!!!」」
いきなり男泣きに泣き出す2人に戸惑いつつ、ドアが
ばたん!
と開け放たれ、使用人の殆どが雪崩れ込んで来る。
「「「ご主人様!!!」」」
「あの…何やってんの、君ら?」
何かのドッキリかと思ってビビるザックに、泣いていて質問を求めても駄目だこりゃ的なリュウケンコンビに同様の使用人たち。
・
・
…落ち着くまで、というよりは事態を収拾する為に各部門のリーダーたちをシャーリーが呼んで来て叱りつけて落ち着かせたというべきか…。結局、うちに集まっているお互いを好き合っている者はおらず、故郷に残して来た家族や恋人などに心残りがあり、不安を抱えたまま前のF男爵に奴隷落ちさせられ売り捌かれ、そしてこの屋敷に買い取られて来た…という話しだ。残して来た者たちとは暫く連絡も取れてなく、与えられた給金の一部を用いて手紙を送った者も一部いるそうだが、送金を怠っていた為に生活は厳しい…という話しだった。
「…で、さっきのような話しをしたから、泣いてしまったと?」
「え、えぇ…若しかすると、故郷から呼び寄せてもいいかも知れない…そんな有りもしない希望を見い出してしまいまして…申し訳ありません、ご主人様…」
メイド長のメビウスが代表して説明をしている。一応御年を召している…という訳で、老齢の執事とメイド長の2人は着席して貰っている。ちなみに此処は一番広い食堂で、本来なら立って聞いている…という他の使用人にも、少しだけ離れた席で座らせている。立っているのは用心の為にと壁際で目を光らせてる従者ゴーレムのレムと執事補佐候補のダナンだ。2人はは出口のやや大きい両開きのドアの両端で立っている。獲物は所持してないがまるで門番のように見える。シャーリー?…彼女はザックの頭の上で寝っ転がっているよ…まぁ、使用人たちが暴動を起こして襲ってくる…なんてことは無いだろうけど、一番傍ででの護衛をいい出したのは彼女だ。
「あ~…その、残して来た家族とか?…って結局何人いんの?」
まさか、そんなことを聞かれるとは思わなかった使用人たちは、ひょっとしたらという思いで互いに顔を見合わせ、急いでひそひそと話しだす。そして、あくびが1つでるくらいの時間が経過し、気を利かせたメイドたちが飲み物と軽食を用意してきた。
「あの、ご主人様…これをどうぞ」
「ふわぁ~…おお、ありがとう」
ちなみにぞんざいな口調で話してるのは、外部から人が来た時にうっかりボロが出ないようにと、普段から主らしい口調を心掛けた方がいいという執事コナンとメイド長メビウスの指導の賜物である。本来なら「ありがとう」もいけないらしいが、今日は大目に見て貰っているようだ。
「…うむ、いい香りだ。このお菓子も美味しいな…」
「勿体ないお言葉です…」
メイドのミルムだ。他の平メイドも訓練はしているが、今の所お菓子を焼いたり料理補助までできるのは彼女しか居ないらしい。他の平メイドは、今の所屋敷の掃除を極めることを目標としているとのことだ…
(まぁそれはいいとして、まだ終わらないのかな?)
あれから1時間程が経過し、記憶を呼び起こして紙に書き起こしているとのことだが…
(まさか、散り散りになった前勤め先の使用人仲間のことまで書いてないよな?…そこまで世話する義務は無い筈だけど…あ~でも、恋人とか家族だった場合は…う~ん)
あーだこーだとザックも考え込んでいると、ようやく纏まったのか数枚の紙を持って各部門のリーダーたちが集まって来た。各部門といっても新興の貴族ですらない、ノースリバーサイドを管理する者が住まう屋敷…ということで、そんな大袈裟なことではない。執事、メイド、庭師、料理人、雑務役の5つの役目を何と表現したらいいかわからないので「部門」といってるだけだ。
「ご主人様」
「うむ」
手渡される紙を受け取って取り敢えず斜め読みする。書かれているのはうちの使用人の名前と、その後に知らない名前の羅列。若しかして、助けて欲しい人物の名前、だろうか?
「…これは?」
コナンが口を開く。
「我らの近しい者の名前、で御座います」
(家族か親戚か…或いは恋人とかかな?)
そう思いながら見ていると、
「できれば…でありますが」
「お救い申し上げたく…」
コナンとメビウスが頭を下げたままお願い奉る…なんて感じで重々しく懇願して来る。まぁ、それはいいんだけど名前だけじゃね…何処に居るのかもわかんないし。
「…で?名前だけじゃ何もわかんないのと一緒なんだけど…」
「え…」
「それでは!?」
…と、救って貰えると感じた面々が頭を上げて…お前ら鬱陶しいから泣くなっての…
「この屋敷にはまだまだ部屋が残ってるだろ?…足りなきゃ小屋でも建てればいいだろうし…」
(それでも足りなければ、敷地を拡張してアパートメントでも建てればいいだけの話しだ。
画して、総勢15名の使用人の内、身内が居なく高齢のコナンとメビウスを除く13名の使用人の身内たちをこのノースリバーサイドの地に招いて住まわせるという、こちらとしてはやや不足気味だった人の手を増やせるという計画が始動するのだった。但し、彼・彼女らの故郷は遠く離れた村に住んでおり、しかもてんでバラバラという…
「これ、無計画にやっても駄目だろ?…」
「左様で御座いますな」
コナンにいうと、さもあらんと柳に風だ。少し考えた結果、無条件に呼び寄せるのも問題かと思い、意思確認を先ず取ろうと粗い計画を立てる。
【ノースリバーサイド・猫の手を借りよう計画(仮)】
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◎目標:使用人たちの家族等を新たな使用人として雇い入れる為に希望者を連れて来る
◎事前調査:
・問答無用で呼び寄せるのではなく、
・働く意思があるにしてもそれ相応のスキルを持っているか、素養があるかも調査(雑務役は既に居るのでそれしかできなさそうな役立たずは基本的に不要)
・ノースリバーサイドはあくまで魔物の侵入を防ぐ前線基地だということを理解して貰い、それでも来る意思があれば受け入れる準備があると伝える(それでもタダ飯喰らいと働く意思が無い者は受け入れないこととする)
※使用人が自分が面倒を見るといっても、被保護者である使用人が自らの仕事を放り出してまで面倒を見るというのは有り得ない。但し、対象が赤ん坊~幼い子供の場合は保護者(親など)が面倒を見る…という前提で許可を出さないでもない(将来、成人した時に本人に確認を取り、ノースリバーサイドに留まるか否かは再確認することとする)
※事前調査は身分を隠してザックが直接…とはできない為、各々の身内である使用人が1人づつ馬車に乗って出向く。馬車はレムが操る(護衛兼御者として)今回はチャリオットでは2人しか乗れない為、6人乗りの幌馬車を別途創造する。以前創造した買い付け用の荷馬車と同等レベルで道中破損しない程度には補強しておく。また、レムとは別に護衛用のゴーレム(見た目人間そっくり)を創造しておく。
◎事前調査の後:
・レムと使用人の2人で判断し、「連れて来れそう」と判断した者だけを幌馬車に乗せて帰還。使用人が「どうしても連れて行きたい」と願っても屋敷やノースリバーサイドにとって不要、若しくは害悪だと判断した時は連れて来ない判断をして貰う。場合に依っては転移で戻っても構わない(幌馬車に1度だけ発動可能な帰還専用転移陣を施しておく(魔力を込め直せば再度発動可能になる))
・最悪、全員連れ帰れない場合も考慮すること。また、故郷の村人全員…という物理的に無理な要求は最初から存在しない(幌馬車は6人が定員であり、規模にも依るが村人全員とかどれだけの規模のキャラバンを必要とするのかよく考えて欲しい…)
・使用する幌馬車は6人が定員と書いたが、往復の日程に依っては食料や水などの荷物でほぼ埋められ、連れて来れる人数に制限が出る場合もある。よく考えること
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まだ抜けがあるかも知れないがこれ以上詰めても疲労だけが積もる為、取り敢えず清書を頼み…清書された内容を調査してから使用人たちに読んで貰った。一応、全員読み書きくらいはできるそうだが…雑務役のリュウケンコンビは脳筋らしく、難しい言葉はわからないというのでメイドのメビウスが面倒そうな顔をしながら言葉を噛み砕いて説明していた…どんまい。
「…で、少し厳しいかも知れないけど、どうかい?」
此の地にはお遊びで来て貰う訳にはいかない。
「ご主人様…少し、宜しいですか?」
「…なんだ?」
もう少し条件を緩くして欲しいという相談なら却下だ。此処は資金豊富な孤児院でも託児所でも、ましてや引き籠りの預かり場でもない。働かないで文句だけは一人前のタダ飯喰らいはノーセンキューなのである。仮にそんな奴が来た場合、魔物の襲撃があれば真っ先に喰われて死んでしまうことだろう…(護る価値は無いし)
「彼らの家族ですが…一部、病気で…」
「よし、その子?を最優先で運ばせよう…子供、だよな?」
「え?…えぇ…と、確か妹さんとか弟さんとか病弱の母親とか…」
…という訳で、回復次第馬車馬のように働いて貰う。という条件の元、最優先で運んで貰うことになった。
「ありがとう…御屋形様ぁ~…ぐすっ」
「一生付いて行きますぜっ!」
「いや、いいから…同郷なんだろ?準備しろよ…」
雑務役のリュウケンコンビが泣きながら準備をしている。この2人は幼馴染らしく、それぞれ弟と妹が1人づつ居るらしいんだが、体が弱かったとのこと。村で寝伏せってることも多いが薬などは高価で村で働いていても買うことはできずに某F男爵の使用人として働いて3箇月に1回くらいの頻度で薬を購入して送っていたそうだ(そこそこ給金は良かったらしい)だが、先の事件で奴隷として売り払われ、収入が無くなって薬も送れなくなって心配で心配でとても困ってたと…まぁそういう訳だ。
「すまねぇな…お前のおっ母を後回しにしちまって…」
「いいから、急いで行ってくるといいさ」
テツジンがそっぽを向きつつ、鼻の横をぽりぽり掻きながらリュウケンコンビに話している。彼の鼻ぽりぽりは照れてる証拠だと誰か知らんが横から聞かされるが…
(誰得なの?…その情報)
と、ザックは内心思ってたとか…w
「じゃ、そろそろ出ます。急いで乗って下さい…あ、忘れ物は無いですね?」
レムが御者台の上からリュウケンコンビに話し掛ける。2人は既に必要な荷物は幌馬車の中に運び入れている。レムが訊いていたのは主人であるザックから離れて行動する。それを証明する許可証と奴隷ではあるがある程度の自由行動を認められている証明書だ。この2つが無いと奴隷の身分である2人は故郷の村とノースリバーサイドを往復するという行動すら反逆行為と認定されて、最悪死罪となる可能性まであるのだ。カードみたいなポケットに入れるような形状では無くす可能性もある為、2つの許可証と証明書を1つの細目のネックリングとしてザックが錬成し、2人に嵌めて貰っている。
「あぁ…御屋形様に頂いて、既に首にしてるぜ?」
「これ、ぴったりなんだけど絞まらないよな?」
リュウが首を指差してレムに見て貰っている中、ケンは少々ガクブルしながら危険性が無いか確認している。レムは、
「そんなことにはならないので安心して下さい」
とケンに答え、早よ乗れや!?…という目をしていた。口にはせずに…まさに、目は口ほどにものをいうを実践していたのだった!w
「じゃ、気を付けて。大丈夫だと思うけど遅れないようにね?」
ネックリングは余裕を以て2週間でその証明期間が終了するように調整されている。というか、探索者ギルドで聞いた最長期間が2週間だった為だ。それより長期間は前例が無い為、仮にでっちあげてしまうことが可能でも偽物扱いされるということだ。マウンテリバーの「ジャックソン奴隷商会」で聞いてもそれ以上は無理とのこと。王都の大きい奴隷商会に行けば可能かも知れない…といっていたがマウンテリバーからはリュウケンの故郷と反対側にあるらしく、無駄に時間が掛かってしまう為に2週間とした訳だ。
「大丈夫だと思いますぜ。一応、此処から5日程の距離だし」
「余裕を以て帰って来れますよ!」
片道5日なら往復で10日。2週間は14日なので一晩泊ってからでも11日で3日もお釣りが来る…そういう計算で2人は答えた。ザックもそうだなと思い、頷いてから
「わかった。里帰りでゆっくりして来い…なんていえないが、期限には間に合うようにな?」
マウンテリバーからは山も通らず平坦な街道を行き来するだけ。村に近付けば山の麓に近くなる為に多少は坂道になるが魔物でも出ない限りは問題無い筈…そんな旅程の筈だった。リュウケンコンビとレム、新造した護衛用人型ゴーレム2体(剣士と弓士仕様)は屋敷のみんなに見守られながら彼らの故郷へと旅立った。その先でどんな事件が待っているかも知らずに…
━━━━━━━━━━━━━━━
リュウケンコンビが故郷へと旅立った後、マロンが眠りから復活してギルドに報告し、ドロップ品や討伐部位を納めた所、また大騒ぎになったとか…。ザック邸の連中は脅威の塊かっ!?…と思われたとかw
備考:
探索者ギルド預け入れ金:
金貨712枚、銀貨802枚、銅貨1667枚(尚、両替を希望しなければ貨幣単位で加算される一方となる)
ストレージ内のお金:
金貨282枚、銀貨1020枚、銅貨781枚(変化なし)
財布内のお金:
金貨2枚、銀貨78枚、銅貨80枚(変化なし)
総額(両替した場合の額):
金貨1015枚 銀貨25枚 銅貨28枚
今回の買い物(支出金):
元チームの共有資金から食料とか水とか消耗品とか
ザックの探索者ランク:
ランクB
本日の収穫:
ボロボロになりながらもマロン帰還(それって収穫?)
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