54 その5 ~モンスタースタンピード3~
モンスタースタンピードの抑制依頼…緊急クエストを請けたザックに準奴隷のトレハンチームが合流し、マウンテリバーのダンジョンへと潜ることとなった。だが、第3階層までの通路を暗記しているザックに辛うじて追随するが体力的な問題で第3~4階層への階段通路で休憩を取ることとなる。ちなみに今回はマロンが参加している為、生もの的な人数は6人と1チームの上限となっている(従者ゴーレムは基本的に人数にはカウントしないようだ)そして道中の戦闘で明らかになるザックの戦闘能力のおかしさ…既にトレハンチームの目には、ザックは「何処にでもいる弱い生活魔法使い」ではなく、「とんでもなく強い、頭のおかしい
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- 人外魔境…の闘い -
どがぁぁんっ!
ずどぉぉんっ!
円形のガラス窓の外では、大型の魔獣と人型の魔獣?の凄絶な戦いが繰り広げられていた。尤も、人の動体視力から逸脱していない
「ままま、ますたぁ~…」
涙目でこちらを伺うトレハンチームの面々。流石にこんな暴風雨の中みたいな所にこの4人を出すと、その瞬間に爆ぜて死亡…が目に見えているので、
「あ~…大丈夫ですよ。こんな死地に「行け!」…なんて無茶振りはしませんから…」
と、安心させるようにいう…と、心底安心したのかへなへなと脱力してへたり込む4人。
(しかし予想外だったなぁ~…
肉体言語の使用前提とはいえ、まさかのザックの動体視力を凌駕する動きをするとは思ってなかった為、嬉しい誤算というか頭痛の種が増えたというか…
(だから押し付けたということかぁ~…はぁ)
あれから何もいわれてないということは、そういうことなのだろう…。だが、今となってはマロン頼みの事態に文句をいってる場合ではない。
「レム、シャーリー。あれに介入できるか?」
取り敢えず従者ゴーレム2人に訊いてみる。
「とんでもない!…幾ら
「…体は大丈夫だと思うけど、回避は難しいかな?…捕獲、もね」
シャーリーは動体視力は確か妖精族を模倣しているせいか人間よりいい筈だが、如何せんそのボディが脆いので無理と。レムはボディは頑丈だが動きがやや鈍い(人間並みかやや優れてる程度)なので相手の大型魔獣を止める壁役にもならないという。
「わかった。じゃあマロン次第か…」
ザックはマロンに念話を繋ぐ。
『マロン、今から大技を仕掛けるから。合図で
『?…わかった』
何をするかは理解してないが行動指針は理解したのでいいだろう…ということで、ザックは呪文を
・
・
「我願う。彼の動きを止めることを」
序詠唱…
「故に、顕現せよ。水よ。故に変化せよ。氷へと」
結へ導く役の召喚とその動きを指示…
「だが、彼は動が過ぎる。故に、固定せよ」
先ずは動きの元…足を殺す
ぴしぃっ…
『離れて』
『…御意』
只ならぬ気配と力を感じたマロンは彼女なりの最敬礼で応答し、全力で距離を取った。ザックは最後の句を口にする…
「絶対零度・降臨」
特にそのような呪文とか魔法は無い。氷属性の魔法には類似したモノはあるが…それは対象の外側から極低温度を叩き付けるだけで、耐性があれば何とかダメージ半減とか凍り付かないなど、何とか死なないで済む者もいるだろう。だが、この
びしびしびしぃっ!
縫い留められていた足元から更に氷の蔓が体に何重も絡まっていき、蔓の先端は大型魔獣の体内へと侵入していく。そして、のたくりながら体内から体外へと、再び体内へと絡むように氷の蔓が全身を駆け巡り…停止した頃には大型魔獣は1つの氷像へと姿を変え、終にその命に終焉を迎えたのだろう…砕け散ったその体は氷の破片へと変じてやがて消え去り、ドロップ品をぼとぼとと落として行くのだった…
「はぁ…久しぶりに使ったけど、凄ぇ疲れるなぁこれ…」
有視界でしか使えないので窓から見ながら行使していたザック。たっぱが足りないので椅子を持って来てその上に膝立ちで見ていたので傍から見ると割と情けないのだが…
「えと…ザック、
トレハンチームの面々は大型魔獣を魔法1つで打倒したザックにドン引きであった。勇気を出してチームの代表であるシャロンがザックに呼び掛けていたのだがビビって噛み噛みだが…
「うん、どした?」
椅子に座り直して背もたれに背を預けて伸びをしているザック。そこへ丁度?マロンがドロップ品を集め終わったのか両手に一杯何かを持って帰還した。
・
・
「
「ありがとう。後、ご苦労様」
「問題無い…それより」
ジロっとビビって後退りしている4人をジト目で射抜くマロン。
「何故主にビビっている?」
「え、いや、その…」
主従の契約を交わしたということは、何があっても主人たるザックに付き従うのが筋だと、暗にその多大な目力で語るマロン。だが、激しい戦闘から戻って来てみれば恐怖を覚え、へっぴり腰でザックから距離を置こうとしていることに不信感と裏切りすら感じているのだ。
「ザックく…あ、いえ、
「あぁ、そうだな」
「でも、さっきの…どう見ても氷属性魔法の上級魔法でしょ?」
「そうかも知れないな」
「有り得ないよ…生活魔法であんなの…」
「でも、そのお陰で助かった。違いないか?」
「ま、まぁ…そうなんだけど」
そのやり取りの間…口を挟むのも何だろうと思い、ザックは椅子に座ってトレハンチームとマロンの方は見て居なかった。彼女たちとは余り話したことは無いので、どの台詞が誰なのかはよくわからなかったけど…あぁ、マロンは男っぽい口調なのでわかるよ?
余り音がしない靴の音が近付いてくる。これはマロンのだろ…
ぐきり…むにゅ
(え?え?)
いきなり頭を掴まれて無理やり動かされたと思ったら、目の前が真っ暗になる。ザックは視界不良とこんらんのバッドステータスに陥った!(後、HPが僅かに減少ww)
「こんなのが怖いと?」
頭上からマロンの声が落ちて来る。恐らく、恐らくだが…今、マロンに頭を掴まれて胸に顔を…所謂パフパフ状態じゃあないだろうか…この
(苦しいからちょっと離れろって!)
ぱんぱんぱん!
取り敢えず、両手で触るを幸いにパンパンと軽く叩いて頭を開放するようにとタップしてその意思を伝えようとしたんだが…念話の存在を忘れてて適当にタップしたせいで…まぁ後はお察しだ…
「何しやがる!」
と、ぶん殴られて壁に激突した。どうも…くすぐったい部位を叩いちゃったようで、それで変な声を漏らしちゃって…殴り飛ばしたらしい…と、後でトレハンチームの人に聞いた。ううむ、まさかメイドさんに殴られて昇天しそうになるとは…笑い話にもならんわ(苦笑)
・
・
(…あれ?)
取り敢えず、確認をとる。
(此処は…屋敷か)
僕がいつも寝起きしてる自室で間違いない。
(…ということは、ダンジョンから撤退したってことかぁ…また第3階層でトンボ帰りか…)
ようやく最深階層は更新できると思ったけど、まだ第3階層だ…だが、それよりも、だ。
(
まぁ、再度潜った時に回収すればいいだけの話しだ。あれは僕と同じ魔力を持っているか、従属してる奴隷、従者ゴーレムとマロンのような奴隷ではないが従者契約をしてる者くらいしか出入りはできないし。
(後、問題は気絶させられてからどれくらい経過してるかだけど…ん?誰か接近してるかな?)
「「マスター!」」
従者ゴーレムのシャーリーとレムが扉を力任せに開いて(壊してはいない)飛び込んで来る。
「やっと目覚めた~!良かったよぉ~!!」
「マスター。ご無事で…」
2人とも顔が涙でぐしゅぐしゅで…ゴーレムなのに表情豊かだなと思いつつ、抱き着いたりほっぺに顔をぐりぐりしたりとやりたい放題だ。
「…心配掛けたね。ありがとう」
感謝の気持ちを素直に口に出すと、うんうんと頷く2人。
「それはそうと、あれからどれくらい時間経過したのかな?」
気になる時間経過を訊くと…
「えっと…10日くらいかな?」
シャーリーが指折り数えて答える。
「え…10日も…くっ、こんなことしてる余裕は、無いな…」
まだ痛む体を無理にでも起こそうとして止められる。
「マスター無茶ですよ!…
流石に首がへし折れるという事態には陥らなかったが、HPバーが9割程減ってヤバイくらいの事態に陥っていたらしい…。致命傷寸前の状態になり、慌ててHPポーションを飲ませて慌ててあそこから撤退してきたとのことだ…まさかのフレンドリィファイヤで即死寸前とは運が悪いにも程があった!(苦笑)
「…で、
「いえ、それが…」
説明を聞くに、マロンが第3階層の拠点として利用しているとのことだった。探索者ギルドに依頼を出し、食料や水などをその
「そ、そうか…にしても怪我の治りが遅いんだけど、何か聞いてないか?」
「えっと、それは…」
「原因不明?」
「はい…時間ができたら教会に調べて貰いに行くといいかも?…と」
「そっか…」
この世界では瀕死の重体でその命が明日には失われている者でも一晩泊れば全快するようなINNのようなチート施設の存在は無い。大怪我をすれば完治まで普通に数日から何箇月も掛かるものだ。寧ろ、10日で目覚めて普通に受け答えし、何とか体が動けそう?…なザックの体も、チートと呼んで差し支えないだろう…。普通であれば、だが(HPポーションのお陰で全治3箇月クラスの大怪我でも短期間で完治できる…という訳だ)
「で、マロンは今何処に?」
「えと…」
「それがですね…」
ザックは嫌な予感を感じざるを得ない、従者ゴーレムたちの返事に冷や汗を流さざるを得なかった…
- 探索者ギルド -
「ザックくんに任せた依頼だが…」
「報告書が上がって来ています!」
「うむ…」
ギルド長に届けられた報告書を開封して読む。此処の所、毎日のように上がってくる報告書はやたらがさつで荒々しい文字だが比較的正式な形式で記載されている為、文字ばかりが綺麗だが半分くらいがウザイ形式的な前置きと半分程が嘘で塗り固められた貴族の文書に比べれば遥かに読み易いだろう。前置きも無しにいきなり本題に入り、必要最低限の報告書程読み易いものはないということだ。
「…第4階層の階段通路までは6人で行動していたようだが、その先は何故メイド1人で?」
その辺の詳細については余り触れられてない。原因とわかるものは…
「メイドが主人を羞恥のうっかりで殴り飛ばした、ね…」
普通なら懲戒処分も止む無しの処罰を与えられそうな案件だが、ソロで第5階層以降というのも余りにも余りな厳罰の気がする…
「確か、あのマロンというメイド。唯者ではないと聞いた覚えがあるが…」
元、パトリシア嬢の使用人という事実を思い出し、それ関連の資料を探し出して調べてみる。
「…成程。
その肩書きは古くは王城のとあるメイド部隊を端に発するものだ。表向きはメイドとして働いているが、いざ命が下れば暗闇を渡って政敵を討つ
「ふっ…まぁ、表に出さなければ問題は無いだろう。口が軽いのは災いを呼び、死が近付くともいうしな…」
ギルド長は探し出した書類を厳重に封印し、本棚ではなく机の鍵付きの引き出しの奥へと突っ込むのであった…
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備考:
探索者ギルド預け入れ金:
金貨712枚、銀貨802枚、銅貨1667枚(尚、両替を希望しなければ貨幣単位で加算される一方となる)
ストレージ内のお金:
金貨282枚、銀貨1020枚、銅貨781枚(変化なし)
財布内のお金:
金貨2枚、銀貨78枚、銅貨80枚(変化なし)
総額(両替した場合の額):
金貨1015枚 銀貨25枚 銅貨28枚
今回の買い物(支出金):
マロンが第5階層以降の活動の為に色々(但し、元チーム資金から出資)
ザックの探索者ランク:
ランクB
本日の収穫:
マロンが伝説の暗殺部隊の末裔だということがわかった(但し探索者ギルド長だけw)
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