37 その5
ゴーレム馬鹿…ゴーレム魔術を会得している貴族と遭遇したパトリシアの使用人たちはゴーレム馬を奪取されそうになる。が、ゴーレムの動きを停める魔法が切っ掛けでゴーレム馬は崩壊…そして崩れ去り、消失してしまう。ゴーレムラブな子爵とその弟子は衛兵に引っ立てられて行くが住居は王都と聞く。きっとロクな罪も与えられずに戻ってしまうのだろう。兎に角2人の使用人は北西のお屋敷に戻り、主人たるパトリシアに全てを明かすが…叱られると思っていた2人は何故かガクブルしだすパトリシアにぽかんとしてしまう。ゴーレム馬の本来の主たるザックにも全てを明かし、お叱りを受けようと覚悟を決めた男性使用人は女性使用人の手を取り、中庭に居ると聞いていたのでそのまま茶室から外に出る。そこで見た物は…
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- お屋敷のあちこちをリフォームアップ! -
あれから3箇月が経過。ザックは生来のマメな性格が災…否、功を成したか、お屋敷はぼろっぼろな状況が新築の如き輝きを放っていた。最初に目が付いたお屋敷のボロな部分を修復し、外からまず目につく中庭を整備し、外壁の修復&改善、etc.、エトセトラ…
「最初から城塞みたいな外壁が…」
「モロに城塞みたいになったな…」
城塞みたいな…というのは大袈裟でもなんでもなく、高さ3m、幅30cm程の壁に侵入防止用の忍び返し…見た目、短めの槍をずら~っと並べてある奴である…がボロながらあったのだが、今では高さ5m、幅50cm、吸着・放電魔法を仕込んだ有刺鉄線を頂点に仕込んである防壁となっている。
「門も…」
「前は普通の
所謂、一般的な邸宅にある大きい手動で開く鉄製の門があった。錆びてはいたが、一応門としての役割を果たしていたのだが…それが、今は城塞の門扉に相応しい高さ5mに及ぶ重々しい重厚な門扉…否、ダンジョンのボスモンスターの部屋の門と勘違いしそうな程に立派な物となっていた。そしてその両側に立つ重装鎧を着込んだアイアンゴーレムが巨大な槍を構えて佇んでいる。ザックは勿論顔パス…というよりはゴーレムを創造したマスターなので主従の魔力の繋がりがある為、そのままスルーできる。他の者はザックを作ったカード型のパスを提示することにより開けて貰えるという仕組みだ。無論カードは本人しか効果が無く、借りて使用しても開けては貰えない安全対策済みだ(仮に本人が死亡していた場合、馬車に乗って同上していてもゴーレムは反応しない。使用者本人が死んだ瞬間、カードは効力を失う為だ)
他にも挙げれば色々あるが…矢張りお屋敷本体がパワーアップしたことが挙げられるだろう。新築同様に新しくなった上に、建物としての防御力アップ。就寝することで体力・魔力の回復力アップ、怪我をしていれば徐々に怪我の治癒が進み、病気をしていても難病でなければ一晩で完治。部位欠損や難病の場合は上位回復薬が常備しているし、病はエリクサー相当の万能薬が常備しており、飲んで数日も休めば完治となる。但し、これは絶対口外しないという
※聖属性の
ついでといっては何だが、お屋敷を含む敷地にもとある効果が薄くだが魔法効果が掛けられている…それは、結界だ。味方と判断された者の身体能力を僅かだが上昇させ、体力や魔力の自動回復能力を与える。逆に敵性と断じられたモノには逆の効果と、弱い個体なら近寄らないように忌避の効果も与えるという…まさに結界だろう。これは魔物に限らず、動物や人間にも平等に効果が与えられる。尤も、お屋敷の外には本当の意味での外界と内側を区切る最外壁が存在するのだが、殆ど手入れがされてないせいか何処かに穴が開いているらしく、小さい魔物や動物が入り込むのだ。時折、橋を渡ってマウンテリバーまで小型の魔物や動物が紛れ込むのはこの為だろう…
- ダンジョンアタックどころじゃないよね… -
「はぁ…今日は最外壁の見回りかぁ…」
「ったく、ダンジョンどころじゃないな」
「あぁ…あの男爵だっけか?…自分の与えられた土地くらい、きっちりと管理しとけってんだ…」
「「ほんとほんと…」」
という訳で、ツーマンセルで手分けして最外壁の巡回に出ることとなった「
・
・
「あ~…見回りだけど…」
巡回に出ようとマシュウとジュンが馬車に乗った時のことだ。ザックが2人を呼び止める。
「ん、どした?」
御者台の上からマシュウが顔を出す。ジュンは馬車の方から首を出してきた。
「こいつを連れてって欲しいんだ。できれば御者の方法や見回りのやり方なんかも教えてあげて欲しい。ダメ…かな?」
見れば、ザックの背中に誰かが隠れていた。そして肩には…
「妹さんか?…それに…その肩に乗ってるのは…」
「…ピクシー?」
マシュウが見慣れない人影を見て訊き、ザックの肩の小さな人影を指摘しようとしてジュンがその正体を遠慮がちに問う。
「あ~…妹って訳じゃないけど…ほら、前に出てご挨拶しなさい」
ザックが肩を掴んで前に引き摺り出す。人見知りそうな小柄なその娘は、ザックの首くらいの背丈にショートカットの似合う金髪碧眼でごついマシュウやジャッカルが触れれば壊れそうな華奢な体。着ているのはザックのお下がりの
「あ…え…と、レムといいます…」
そして頬を真っ赤に染めて再びザックの背後へと逃げ隠れてしまった。ザックの肩に停まっていた身の丈15cm程の羽の生えた妖精らしき姿のモノは、「はぁっ…」と溜息を吐き、
「本当…しょうがないわね。これからマスターから離れてお仕事をしなくちゃならないってのに…」
と呟きながら目立つ背中のそれを羽ばたかせて飛翔し、ザックより手前に浮いて自己紹介をする。だが、羽音も殆ど感じさせないし物理的には羽ばたく回数も羽の面積も足りない為、風魔法か何かで飛翔の補助をしているのだろう。
「一応、見た目ピクシーのシャーリーよ。あたしとレムはマスターの創造したゴーレム…の1種になるわね。マシュウさんとジュンさんでしたっけ?…今日から宜しくね?」
「あはは宜しく…ってぅおいっ!…初対面でバラす必要がっ!?」
ザックが何となく釣られて宜しく挨拶をしようとして、シャーリーが初っ端から暴露してることに気付いて突っ込んだが、
「…だってぇ~…。面倒臭いし、別に外部の人と触れることも殆どないんでしょ?」
と、マイペースな
(しまった…そういや妖精族ってそういう気質の奴ばっかだったっけ…)
orzするザックだが、後の祭りであるw
・
・
「…とまぁ、そんな訳で。宜しくお願いします」
ザックは見回りに出掛ける2人に
「あ、あぁ…わかった。こいつらが2人?で仕事ができれば、俺らがダンジョンアタックする時間もできるからな」
「あ、うん。頑張って教えるわ。お姉さんに任せて!」
…と、ややギクシャクした様子が心配だが、ザックは
(…ま、まぁ…数をこなせば何とかなるだろう…)
と思い、2人に任せるのだった。
尚、レムはパワーも手先の器用さもある、マルチタイプの人型ゴーレムで、生まれてから然程時間は経ってないが学習能力もあるし一通りの基本動作は身に付けてある…筈だ。やや?…人見知りな所もあるが、人との交流をこなせば解消される筈である。土魔法が扱える為、自身の防御力向上や土壁の構築、ストーンバレットなどの攻撃魔法も使いこなす(体内の魔力タンク魔石の容量を超えての使用は勿論不可)
シャーリーはピクシー型のゴーレムで、主に索敵や偵察の斥候をこなす為に生み出された。また、目もいい為に最外壁の壊れた穴や壊れかかった部位の探索にも役立つだろう。飛翔の為に風魔法を扱えるが、体が小さい為に他にはせいぜいそよ風を出せる程度で大したことはできない。
- 最外壁 -
「本当、ボロだよな…」
「本当ね…」
一応、橋の掛かってる辺りから順繰りに補修はしているが(主にザックが)MPも資材も無限ではないので全然進んではいない。仮に壁を補修するのにその辺の土を物質変換して素材にした場合、地面が無駄に凹んでしまうし地盤沈下で外壁が弱体化してしまう可能性が高い。矢張り土よりは石材を素材にした方がいいし、何処からか切り出して来た方がいいのだ…
(そーいえば屋敷とその周辺はどうやって修繕したんだろうなぁ…)
マシュウは想像が付かず、わからないことはスルーだ!…と考えないようにしているが、その答えはザックの貯め込んでいる例の砂が答えだ。…そう、
・
・
ガタゴトとのんびりと回る車輪の音に、遠くから聞こえてくる鳥の鳴き声。如何にも平和でのんびりとした田舎の風景然とした中…
「取り敢えずここら辺で俺たちの今日の見回り範囲終了だ」
「後は、別ルートで戻るんだけど…」
マシュウが夕方が迫っている空模様の中で説明をし、ジュンが今後の行動を簡素に伝えると…
「えと、あそこ、何か変じゃないですか?」
と、レムがおずおずと指差し質問すると、
「どれ?…あぁ、あそこの壁も腐ってるね。もうすぐ穴ぼこが空きそう?」
と、シャーリーも確認したとチェックを入れる。
「じゃ、私は固めてくるからお願い」
「おっけー!」
レムは馬車を停めて御者台から飛び降りると指差した場所…最外壁へと向かい、シャーリーは馬車から要修繕の印となるマーカーを取り出して後を追う。マシュウたちはその様子を呆然としながら見ているだけだ。
「思ったよりしっかりしてるな…」
「え、えぇ…っていうか、あんなの今まで見過ごしてたけど…大丈夫かしら?」
2人とも魔法は得意ではない。必要に応じて身に付けたスキルはあるが。そんな話しをしてる間に2人が戻ってくる。
「た、ただいま戻りました」
「これから別ルートで戻るんでしょ?」
「お、おお…」
「そうよ?」
先程話していた内容の再確認をしていると気付いて、マシュウたちはどもりながら肯定する。
「じゃあ、お屋敷に戻るまで、ご教授お願いしますよ?」
「お、お願いします…」
シャーリーとレムがそういうと、
「お、おお。任せておけ!」
「じゃ、マシュウ。道案内は頼んだわ。今日のマーカーを貼った地点の再確認をしてるから」
と、ジュンは丸投げして馬車へと引っ込んだ。そして、労いの意味も込めて御者台に座るレムに2つの魔力カプセルを渡す。これはゴーレム用のザック特製品で、消耗した魔力を補充する物だ。
「あ、ありがとうございます…」
「さんきゅ!ジュンさん!!」
レムとシャーリーは受け取った魔力カプセルをそのまま飲み込む。カプセルは体内に入ると即座に溶けてゴーレム体にある魔力タンクである魔石へと吸収される。通常、ゴーレムは内包している魔力が失われると動きを停止し、外部から充填されるか魔力を貯め込んだ魔石を交換するかしないといけないが、2人は生物のように経口捕食することによって魔力を充填するようにした。ゴーレムである為、食べ物を摂取して魔力を補充などはできないが…何故そのようにしたのか?…それは。
(だって人間と一緒に生活するんだし、その方が自然だろう?)
と、ザックはいう。なら、食べ物も一緒にすりゃいいだろう…と思われるが、
(いや…そこまで考えるの面倒だったし。人間の体を真似るのすげー面倒なんだよね)
だそうだ。生活魔法の錬金術では人体の神秘は解き明かせなかった模様…。まぁ、等価交換未満の錬金術で、人体錬成したら自身の体は全部消えて、精錬できたのが臓器の一部とかだと洒落にならないだろう…え?何の話しかだって?…うむ(誤魔化すなw)
- 見回り完了! -
「ただいま~…」
「…」
「…ただいま戻りました」
「ただいまぁ~!」
マシュウが心底疲れたと重苦しい声で。ジュンは戻り道で今日の見回り部分のチェックで疲れ切っていて無言。レムはいつも通りの口調で、シャーリーは元気いっぱいに
「あ、おかえり。マシュウさんお疲れ様です」
「おう…」
ザックに疲れた顔のマシュウが一言応じ、馬車を厩に戻す手順を教え込む為にレムを伴って去って行く。
「あはは…お疲れのようですね?」
ザックが苦笑いを浮かべてると、ジュンが複数枚の紙を手に馬車から飛び降りてきた。
「まぁねぇ…ていうか、優秀過ぎるでしょ?…あのおちびちゃんたち」
と、ジュンが思ったことをずばりと口にする。
「そう…ですか?」
「そうよ」
「そうですか…」
…言葉の応酬がふと止まり、「はぁっ…」と溜息を吐いてジュンが歩き出す。
「…明日から、もう1度洗い出し直すわ…」
「そうですか?…でも、修繕した所は見なくても構いませんけど…」
「もう1度最初から洗い出し直す」
意地になったジュンは同じことを言い直す。
「…はい、宜しくお願いします」
苦笑いでぺこりと頭を下げるザック。
「…それに、馬車を出す所から教えないといけないしね」
半ば独り言のように呟く彼女を、ザックは優しい目で見ていた…
・
・
「はぁ…結構、ありましたね。早急に穴埋めしなくちゃいけない場所…」とザック。
夕飯の後の行った緊急チーム会議。議題は勿論「最外壁」だ。明日からはもう1度見直すとのことだが作業内容を覚え、寝てる間に最大限に効率化を進められる2人なら見回る距離も増えることだろう。それより問題は…
「ここと…ここと…ここね。1日で移動しただけの巡回経路だけで3箇所。魔物と思われる反応が集結している。これってヤバクない?」
シャーリーの指摘した問題点だ。少なくとも3箇所に100を超える魔物の集結点があるという。これは…
「ダンジョンじゃないのに…これは異常だな」…ジャッカルが数点の紙に書かれた調査項目を見て唸る。
ダンジョンなら、適度に間引かないと「モンスタースタンピード」が時折発生する。ダンジョン内で魔物が湧き続け、ついに溢れ出すと普段は外に出て来ない魔物が溢れ出て来る現象を差す。だが、北西の最外壁の外はフィールドでありダンジョンではない。中にはフィールド型のダンジョンといった形態もあるいんはあるが、北西の土地がダンジョンだという報告は聞いたことが無い。
「外に出て調査するにしても…」
「あぁ、数が多過ぎる。冒険者ギルドに依頼して魔物の間引きの…」
ジャッカルとマシュウがそういうと、
「えぇ?…誰がその依頼費用を出すのよ?」
と、チームの金庫番のジュンが突っ込みを入れる。
「ま、まぁ…取り敢えず明日になったら相談しに探索者ギルドに行こう!」
マシュウがそう締めて緊急チーム会議はお開きになる。実際にはもっと細々と言葉の応酬が飛び交っていたが、主だった内容はこんな所だ。探索者ギルドに相談しに行くにしても、もっときちんとした文面にした方がいいとしてジュンが文章を書くことにし、補佐として余り眠る必要のないシャーリーが付き、マシュウは明日の為に就寝することに。
…ちなみに、戻った時にザックから全員にレムとシャーリーの紹介をしたのだが…レムは終始赤くなったままザックの背後で縮こまっており、シャーリーはその様子を溜息を吐きながらも全員に自己紹介していた…とのことだ。ゴーレム生成してた時のザックの意識が反映してたのかも知れないが、どうしてこうまで二極化したのかは、創造主であるザックでも意味不明らしい…どんまい!?
尚、探索者ギルドの方から水泥棒の捕縛の件で文書で探索者ギルドの預け口座に報酬が振り込まれてたと報告があったらしい。簡単にいえば、生きて捕らえたので犯罪奴隷として売却が終了したとのこと。ついでに全部ではないが幾つかの組織も壊滅したらしい。悪さをする組織が居なくなるのはいいことだと思うが、人死には出ない方がいいよなぁ…と思うザックであった。振り込まれた金額は全部で金貨3枚と銀貨804枚。ザックは自分だけ儲かるのもなんだしな…と思い、以前世話になった教会に赴き金貨1枚を寄付した。また、チームの共有資金に金貨1枚をとジュンに手渡す。ジュンからは「え…いいの?」と最初は拒否する素振りを示すが少し強めに収めるというと素直に受け取って貰えた。最近は黒字とはいえ、お屋敷に住み始めれば支出も増えるだろうし、お金は多い方がいいだろう。
・
・
数日が経過し、矢張り見落としの穴がぼちぼち発見される中、シャーリーの指摘した魔物の群れの集結点に変化が現れる。そう…移動を開始したのだ。
「…あ」
シャーリーから変化が現れたと連絡を受けるザック。だが、まだ全ての穴を塞いだ訳でもなく、応急処置を施しただけで集中して攻撃を受ければ再び開いてしまうだろう。完全に補修できた最外壁は僅か全体の10%もない。一応、シャーリーの報告してきた穴は全部応急処置で塞いだはいいものの、先に書いた通り薄い壁で覆っただけの物だ。現状では見回りで見た範囲は全体の40%といった所だろうか。だが、予め展開している結界だけは今でも全敷地エリアで有効だ。敵性の魔物・動物・人間、関係無しにその行動力は低下し、戦闘力も軒並み低下するという効果は折り紙付きだ。
「どうやらやっこさんたち、痺れを切らして動き出したようだな…」
ジャッカルが獰猛な笑顔で手をぱん!と叩いている。顔だけ見れば猛獣に見える。小さいお子様が視れば泣き出して失禁すること請け合いだろう!w
「…で、相談した探索者ギルドからは何か連絡があったのか?」
マシュウが(多分無いだろうなぁ…)と思いながらジュンに問うと、
「あれ?聞いてない?…昨日から冒険者ギルドに掛け合って、今すぐ出られる暇人に声掛けてるって」
「…なっ、聞いてないぞ!?」
「あれ?っかしーなぁ…って、パット!ちゃんと伝えたっていってなかった?」
「え?と、その…ごめーん!忘れてたぁっ!!!」
と、基本ぐぅ~たらな我がチームのお嬢様は…いや、首チョンパされたくないので何もいわないでおこう、うん…と、ザックは心にそっと台詞を仕舞い込んだのだった…
- 南と北を分断する深い渓谷。そして文字通り橋渡しをしている橋… -
4人から6人で1つのパーティを組む冒険者たち。凡そ10のパーティが橋を渡り切り、各々にカードを渡される。ザックの創った魔法が封じられているカードで、1度だけ死の淵から所持者を助け出し、またお屋敷に今回のクエスト中に限り出入り自由となる権限が与えられている。仮にパーティ全員が全滅した場合、お屋敷の中庭に自動転移する機能も備えられているが、全員の蘇生を行った後にカードは砕け散る。要は、雑魚は安地で大人しくしてろという皮肉を込めたメッセージとなる訳だが…
冒険者たちには「お屋敷に自由に出入りできるようにするカード」としか説明されてない。要は、「誰でも勝手に出入りされないように結界をしているお屋敷の通行許可カード」という訳だ。実際、巨人族や空を飛べる魔物でもない限りは自由に出入りできない高い塀を持つお屋敷を見た冒険者たちは、「な、成程…」と納得せざるを得なかったという…
そして探索者を含んだ防衛戦力が集結した現在、既に北西最外壁から侵入済みの魔物(未だ未調査の外壁の穴から小型の魔物が侵入)があちらこちらで見え隠れしている。防衛戦力は探索者ギルドと冒険者ギルドの各々の長の説明を受け、僅かながら支援物資を受け取って指定された場所へと散って行く。地図はマシュウたちの描いた物を受け取り、穴の開いている部分…既に調査をした場所に限るが…を書き記した物を受け取っている。具体的に何処を守ってくれとは指示できないが、マシュウたちも元々のチーム員でまとまって防衛行動を開始する。だが、マシュウ・ジャッカル・ジュンの3人でだが…
「な、何で私が出られないんですかっ!?」
「お嬢様にはお嬢様のやることがありますから…」
使用人たちは屋敷に残り、補給物資の支援や救護活動など、
「あ~…パトリシアさんには怪我人の世話もそうですが、バフがあるじゃないですか…」
戦闘補助の強化バフの他に、徐々に怪我を治癒していくリジェネと同様の効果があるバフもパトリシアの強みだ。唯、戦闘中に激しく動いていると怪我の治癒よりも悪化の方が早いというだけで使えない子扱いだったが、野戦病院と化した場合は範囲型ヒールよりお手軽なのに消費魔力はそれ程でもないという強みがある。デメリットは治癒速度が遅いというだけなので、患者を動かす必要が無い場所ではメリットしかないという訳だ。
「そ…そうね。うん、頑張ってみる!」
「頑張って下さいね。じゃ、僕らも行ってきますね?」
気軽にそういって出掛けるザックとレムとシャーリー。ザックはいつの間にかこさえていた、馬車部分が
「ねーねーマスター。やっぱ8足のスレイプニルの方が強そうじゃない?」
「いや、足が多ければ強いって訳じゃないし…つか、8足あっても脚を動かすルーティンが面倒過ぎるんだよ!…6足だって頭こんがらがりそうだったってのに…」
「えぇ~!?…全部同じように動かしてるだけでしょ?…簡単じゃーん!」
「咄嗟の挙動がそんなんじゃ役に立たないでしょ!?…全部同じ挙動してたらさぁ!」
「あ~、そっか…ずっと同じように動かしてる訳じゃないもんね。戦ってる時は…」
と、シャーリーと終始談義してたのが何か懐かしい。レムはその間、ついてけなかったのか終始寝てたような気もするが…つかこの子、名前のせいかよく寝てるよなぁ。
さて、何故か戦場となるマウンテリバー北西地区…通称ノースリバーサイド。シャーリーの報告にあった魔物たちがどの程度侵入し、駆けつけてくれた探索者と冒険者の有志たちが無事に撃退できるか…勝負はこれからだ。
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チャリオットといっても特に強力な装備がある訳ではないです。せいぜい、頑丈で現場に駆け付ける機動力が高い…程度ですかね?(2人乗りなので御者レムと同乗者ザックの2名で可搬力無しだし)
備考:
探索者ギルド預け入れ金
金貨953枚、銀貨804枚、銅貨1617枚
ストレージ内のお金
金貨282枚、銀貨1020枚、銅貨781枚(預入口座はそのままに教会寄付とチーム共有資金に収めたお金はこちらから支出)
財布内のお金:
金貨2枚、銀貨78枚、銅貨80枚
今回の買い物(支出金):
なし
ザックの探索者ランク:
ランクC(後日アップの予定はあり)
本日の収穫:
水泥棒の件の報酬は金貨3枚と銀貨804枚。金貨1枚をマウンテリバーの教会に寄付し、もう1枚をチームの共有資金に収め、残り金貨1枚と銀貨804枚を懐に仕舞う(徴税済み)
話しには上がってないが、ザックのお屋敷やら外壁やらの修繕費用はコトが収まってから改めてチームから出す…とのことで、後日何らかの形で支払われると思われ(ザック本人はできる範囲で好きでやってるだけなので拒否しているが…というか、溜まってる資産が使いきれなくなってきてどうしようか悩んでいる始末というw←放置してるとどんどん溜まって行く一方で困るっていうw)
※金貨100枚くらいでいいから欲しいな…はっ(欲望が駄々洩れw)
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