数日が経過していたようだ。

その間は起きて、食べて、寝て。

必要最低限の行動しか取っていなかった。



...そんな日々はうるさい電子音で終わりを告たのだった。

その音がする方をみるとスマホがなっている


「電話か...」

今は誰とも話したくない。

ほっといて欲しい。

余計なお世話だ。


また、電話の通知音がなっている。

「しつこいな.....」


そのまま放置していた方が面倒だからとりあえず電話に出る事にした。



「もしも...『おい!大丈夫か?無事か?』ーーーえっ。なに!?」

前相談をしていた旧友からの電話だったようだ。


「4日も音信不通だったら心配するだろ。普通。昨日もLINEしたし電話かけたぞ。」

昨日...。寝てたのだろうか全く記憶がない。


「それでどうしたんだよ。4日も音信不通なんてただごとじゃないだろ。お前はいつも一人で抱え込むんだから今ぐらいは、話してくれよ。」


腹を括って正直に話す事にした。




告白しようとしても避けられてしまっていることを。聞いてみてもなにか隠している様子であることも

そして、、、







ーー陽葵にはもう既に好きな人がいることを








『なるほどな。』



「もう俺がやろうとしてたことは無駄だった。手遅れだった。」

いつもの嘲笑気味の声で言った。



「逃げんなよ...。またお前はそうやって逃げるのか?そんなことも人に伝えられない臆病者なのか?」


「いいよ別に臆病者で。」


「おい、お前家ちょっと綺麗にしとけ」

「え、は、?」

そして通話は一方的に切られた。

俺の実家は飯田橋の近くにある。

俺の旧友は千葉県住みだ。

少し時間かかるだろう。

重い腰を持ち上げ少し掃除することにした。

俺の部屋は、片付ける事さえもしなかったためとてもじゃないが綺麗と言える状況ではなかった。




「おーい。開けてー」

旧友の声が聞こえた。とりあえず鍵を開け、中へ招いた。


「お前は相変わらず掃除下手だな。

 手伝ってやるよ。」


二人で手分けして掃除するとだんだん部屋が綺麗になっていくのがわかった。


「おい。これどうすればいい?捨てる?」


「え、どれ?。 ...これか。いらないからその辺に置いといて。」


「何入ってるの?」


「陽葵に渡す予定だったやつ」


「中見ていいか?」


「あぁいいよ。見ても。」


言った後に気づいた。陽葵にあげる予定のものはーー...。


「ごめん。やっぱダメ!!」


そう言って振り向いた時には遅かった。もう箱を開けていた。




「ふーーーん。

 こんなん渡そうと思ってたんだー。」ニヤニヤ


「そ、そうだけど。悪い?」


「いや、別に悪いとは思わないけどよ。だけどさ」


「だけどさ?」






「こんなもの買うぐらいの想いを抱えてるのに何もせずに終わるのは悪いことじゃないか?」


続けて旧友は言う


「こんなん当たり前のことじゃん。どうしてこんなに陽葵のことを思っているのにそれを自ら踏みにじろうとする?当たって砕けろ。とにかくぶつかれよ。奪い取るぐらいの気持ちで。」



「お前は、諦めるのね?まだ手が届くかもしれない場所にあるものを、『きっとこうなってしまうから』と言って諦めるのね?」



諦めたくない...。


「...。」


「手を伸ばせば届くものに背を向けるのか?」




いや、ぜったいやだ。そんなことしたくない。




「俺は...俺は、諦めたくない!!!!」



「じゃあお前が何をすべきかはわかるよな。」



それを言い残し旧友は帰って行った。


俺は決心がついた。旧友には返せないぐらいの恩かできてしまった。


決着は明日。

明日にすべてを捧げる。













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