4話 禍神
01
子供とはいえ二人を抱えながら、襲ってくる妖を切り伏せ走り続けるのは、奉行きっての武闘派である粟田でも厳しかった。
奉行所の前へ辿り着いた時には、息も絶え絶えで、後ろについてきていたはずの巴の姿がないことに気が付かなかった。
「巴ちゃんが……!!」
「動くんじゃねェ!! 死ぬぞ!!」
三人を庇い続け、それでも妖の群れを抜けられたのは、粟田の実力故だが、その傷はこれ以上動けば危険だった。
志津は無理矢理抑え込みながら、ここにいない巴の姿を探すよう指示を出す。
「テメェは状況を説明しろ! 一番隊すぐに動けるようにしとけ!」
血まみれの粟田を引きずりながら、備前の元へ連れて行きながら、話を聞く。
その頃、臣下の詰め所で夜鴉が唸っていた。
「残穢がありますね。ここにあったものは?」
「確か、小さな人形だったかと……」
「それは今どこに?」
禍神の気配を探り、いくつかの場所を探ってきたが、どこも外れ。一般の家ならば仕方ないと割り切るが、ここは臣下の詰め所。どうして気が付かないものか。
先程から目も合わせない臣下に聞いたところで、答えはでないだろうが。
「子供が自分のものだと、持っていきました」
「その子供は本当に人間でしたか?」
「に、人間です!」
信じられないという表情に、慌てて彼の子供だと口にしては、指を指された巴の父は表情を強張らせた。
これでは、自分ができない臣下であると証明することにもなる。しかし、言われてしまったものは仕方ない。
「子供は純粋ですからね。禍神に簡単に騙されるでしょうね」
「申し訳ありません! 私の不徳の致すところです!」
「そんなことより、問題はどこに持ち出したか、どれだけ集まっているか」
気配を探った結果、禍神がいくつかに分割されて結界内に持ち込まれていることが分かった。それを集める役目として、騙され子供が選ばれただけだ。
問題は、どれだけの禍神の破片が集まっているか、そしてそれがどこに集められているのかだ。
「集まってんだろ。わかんねェのかよ」
「分かれば苦労しませんよ。禍神だというのに、それだけ分からないということは、逆におかしな話ですが」
巨大な気配であるはずの禍神が見つからないということは、分割されて小さな存在となっているのは理解できるが、今は集められて気配は大きくなっている。しかし、場所は見つからない。
「これは、嫌な場所にあるかもしれませんね」
例えば、禍神の封印を自らの隠れ蓑にするとか。
仮説が正しければ、場所はそう多くはない。
「虎渡。手分けして――」
手分けして回れば、すぐ見つかると言葉にしようとしたその時、外から騒がしい声が聞こえてきた。
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