核心
小学校の頃から、いじめられていた。
そのためか僕は人の顔を見ればその人が何を考えているのかわかるようになっていた。
他人はそれを気味悪がって近づかなくなった。
まあ、いじめがなくなったからいいけど。
でも、嫌なこともあった。
他人の見たくない本心も見えてしまう点だ。
僕はそういうのを極力見ないようにするため前髪を伸ばした。
そして、誰にも極力関わらずに過ごしてきた。
「……よろしくね」
だけど、最近になって崩れ始めてきた。
神宮寺と同じ班になってから。
神宮寺は変な人だった。
僕の秘密を話したのに僕から離れようとしなかった。
それに、全然嫌な感情を抱いていなかった。
誰しも、多かれ少なかれ闇はある。
如月さんにも、山本さんにもあった。
でも、神宮寺はそれがあまりにも少なかった。
だから何だって感じなんだけど。
警戒心は解いていいかな。
◇◆◇◆◇◆
2日目の活動が終わって、神宮寺と部屋でトランプをしているときのことだった。
「影野くん。最近さ、由香里さんの様子が変なんだけど、何かわかるかな?」
神宮寺がそんなことを聞いてきた。
「…………いや、わからない」
嘘だけど。
たぶんわかってないのは神宮寺だけだと思う。見た感じ如月さんも気づいているようだったし。
「そっかぁ」
「……心当たりは?」
僕は逆に聞いてみることにした。
「うーん」
神宮寺の表情を見る。
「……?」
……おかしい。
確かに見えた。答えが。
神宮寺の頭の中には確かに答えがあった。
それなのに、本人はわかっていないと言う。
嘘だった?
神宮寺の表情をもう一度見る。
黒い霧……?邪魔するな……?
何を言っているのかはわからない。
でも、たぶん神宮寺は答えが見えていない。
鈍感じゃない。
意図的か無意識かは知らないけど隠している。
なんだ、これ。
「やっぱりわからないな。俺、人の感情とか読み取るのが少し苦手なんだ」
神宮寺が笑いながら言う。
「……何で隠すの?」
「え?どういうこと?」
「……わかっているんでしょ?」
少し踏み込んでみる。
自分の好奇心に負けた。
神宮寺の表情を伺う。
「え?ええ?か、影野くん何言って、あれ?何?何か、おかしいな……」
神宮寺の顔が強張る。
ぶつぶつと「おかしいおかしい」と唱えている。
「……落ち着いて」
「う、うん……ありがとう」
あからさまにおかしくなった神宮寺を落ち着かせる。
恐怖
あの一瞬、神宮寺の頭にはその感情しかなかった。
どういうこと?
じゃあ、神宮寺が鈍感なのは一種の防衛反応ってことか。
神宮寺に一体何があったんだ?
……もしかして、
「影野くん?」
「……何でもない。続きをしよう」
何がどうあれ安易に踏み込んではダメなところだな。
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