ライバル
文化祭が終わった。
うちのクラスは無事に、優勝できた。
そして、暗い帰り道。星奈ちゃん、由香里さん、花音、萌香と並んで歩く。
葵さんと優里さんはタクシーで帰って行った。
「はぁ〜、文化祭終わったね」
星奈ちゃんが感慨深く言う。
「そうだね」
あっという間だった気がする。
疲れたけど楽しかった。
「バカ兄の執事服姿良かったよ」
「ずっと笑ってたろ」
「先輩、また見せてくださいねっ」
「嫌だ」
たぶんもう二度と着ないだろう。
「私も見たいな」
星奈ちゃんまで?
「絶対に着ないからね?!」
一体が笑いに包まれる。
「あ、ここまでだね」
星奈ちゃんの家の前に着く。
星奈ちゃんは俺の通う高校に転入するときにここに引っ越したらしくて。今は家族と
……星奈ちゃんの両親は俺のことを知っているんだろうか?
知っているとしたら、どんなふうに思われているんだろう?
「じゃあ、みんなまたね」
星奈ちゃんが手を振る。
「待って下さい」
星奈ちゃんが家に入ろうとするのを誰かが呼び止める。
「どうしたの萌香ちゃん?」
「少し遅くなりましたけど、ようやく同じステージです。譲りませんよ。星奈先輩?」
萌香が不敵な笑みを浮かべて星奈ちゃんに宣戦布告する。
え?何を譲らないの?
「……そうだね。私も譲るつもりはないよ」
星奈ちゃんも萌香と同じように不敵な笑みを浮かべる。
「そっか、もえちゃん頑張ったんだね」
花音の嬉しそうな声が俺の耳に届いた。
あぁ、そういうことね。
「負けても泣かないでくださいよっ」
「萌香ちゃんこそね」
互いに微笑み合う2人。
でも、そこに険悪な空気はなく。少し楽しそうだった。
「どうして……?」
今度こそ星奈ちゃんが家に入っていく。
そして、再び歩き出す。
「ん?由香里さんどうかした?」
いつまで経っても歩き始めない由香里さん。
顔を下に向けていて表情がよくわからない。
「どうして嫌悪な感じにならないの?そういうものなの?じゃあ、私は諦めなくていいの?いや、でも……」
「ゆ、由香里さん?」
近寄ってみると由香里さんは小さな声で何かを呟いていた。
少し怖い。
「っ?!い、伊織?」
びっくりしたような表情で俺を見つめる由香里さん。
「少し顔色悪いけど大丈夫?」
「う、うん。もう家近いから!大丈夫!」
由香里さんはそう言って足早に歩きだす。
気丈に振る舞っているように見えるけど、大丈夫かな?
由香里さんの背中はいつもより小さく見えた。
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